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REMEMBER ME

作者: ひろゆき

 REMEMBER ME

 そこで待っているのは、この想いからかもしれない。

 ホームで待っているのは、あの人。

 イヤホンから聴こえる懐かしいメロディー。あの頃、イヤホンを片方ずつ分け合っていた懐かしい時間が蘇る。

 分かっている。

 遠い日の約束。

 覚えていますか?

 遠くから列車が汽笛を鳴らす。

 ここに来て……

 くれますか?


 REMEMBER ME


 耳元で寂しげな歌声が胸を締めつけた。

 あの頃、何を話していたんだろう。

 きっと、くだらないことで笑っていたんだよね。

 懐かしいよ。

 でも……


 いつも乗っていた電車がホームに入ってくる。

 いつもの車両のいつもの扉。

 扉が開かれる。

 肩を寄せ合い、笑いながら出てくる学生のカップルがすれ違っていく。

 懐かしいね。

 自分たちの懐かしい姿が若い二人に重なって見えた。

 強がりが負けじと笑う。

 分かっている。来るわけがないことを。


 乗車ベルが鳴り、扉が閉まる。

 乗れない。

 忘れてるに決まっているじゃん。

 壁に凭れてぽっかりと空いた夜空を見上げた。

 綺麗な満月が惨めな姿を照らしていた。

 改札口へ向かう恋人の後を風が追う。置き去りになった体に風が触れると、冷たくて痛い。


 大人になったら一緒に行こう。


 幼かった遠い約束なんて覚えてないよね。

 自分が悪いのは分かっている。自分のせいで、歩いていた同じ道にヒビが入り、違う空を眺めるようになったのも。

 それでも、同じ空を眺めていたころの約束。

 覚えていますか?


 冷えた手をギュッと握った。後悔が痛みを誘う。

 会いたい。

 連絡を入れるのは簡単。

 それなのに、意地と情けなさが邪魔をして拒む。


 REMEMBER ME


 耳元で綴られる歌声に頬が強張った。

 冷たい風に頬を撫でられ、月を眺めた。

 覚えてなんてないよね。

 あなたは私のことを覚えていますか?

 連絡なんて簡単。

 忘れていてほしい。


 身勝手な約束だよね。

 だから、覚えていたらでいい。

 忘れてくれて……

 ……会いたいです。


 REMEMBER ME



                         了

 この話は、半年ほど前にこの作品と同じタイトルのある曲を聴いて、話の冒頭を考え、その後そのままになってモヤモヤしていたのですが、最近になって作ってみました。

 短い話ではありましたが、読んでいただき本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どことなく哀愁漂う雰囲気が良かったです。
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