リーテンのダンジョン
昔、勇者たちとパーティーを組んでいた賢者がいました。賢者の仲間たちは魔王との戦いに敗れ、賢者だけ運良く生き残り、魔王を倒します。賢者が魔王を倒したあと平和になり、人とモンスターが仲良く暮らせるようになったのです。
あれから200年後、田舎町で賢者の末裔である若者の男性がダンジョンを経営していました。若者の男性の名はリーテンです。リーテンは賢者の末裔と自覚はあったものの、田舎町の者たちは200年前にあったことなど忘れ、ダンジョンを経営するリーテンのことを笑っていました。
リーテンの経営するダンジョンは作りものであり、ダンジョンっぽくなく、ダンジョンに入る者がなかなかいなかったのです。モンスターや宝箱なども段ボールで出来た作りものであるため、町の者たちはダンジョン前を素通りしていくだけでした。
このままお客さんが入らないと、経営しているダンジョンが赤字でつぶれてしまうと、リーテンは焦っていました。そのとき、彼に女性が声を掛けてきます。ポニーテールの髪型をした女性は容姿端麗でした。
「ここ、入ってもいいですか?」
美人なお客さんが来てくれたとリーテンは、
「どうぞ」
と、作りもののダンジョンの中を笑顔で女性を通しました。そして、リーテンも中に入ります。女性を案内するためです。
ダンジョンのせまい入り口に入ってから、広い場所に出てきたところでリーテンは端っこにあった2つのものを並べます。それは、段ボールで出来たモンスター2体分でした。
「わあ、これ、店長さんが作ったのですか? すごいですね!」
「はい、何か作るのは僕の得意分野です」
女性に褒められ、後ろ頭をかきながら返事をしたリーテンです。
「でも、どうやってゲームを進めたらいいですか?」
女性にそう尋ねられ、どきっとなったリーテンは自分は魔法が使えないため、これ以上のことは出来ないと女性に正直に言いました。すると、女性は急に無愛想になり、
「本物のダンジョンに変えて差し上げましょうか?」
と、いきなり指で魔法を使い、作りもののダンジョンが、本物のダンジョンに変わってしまったのです。
「あたしね、あんたのご先祖に倒された魔王の子孫なの」
冷たく笑う女性にリーテンはゾクッとなり、固まってしまっていたのでした。