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「まずは、これを見なさい」
ヅプの声が響くと、目の前の白い光の部分がだんだんと暗くなり、そこに地図が浮かび上がった。どこかのRPGゲームなどで見たような地図だ。
「これが君が転生する、黄泉の世界ゲトの全図だ」
地図を見ながら達夫が尋ねた。
「ゲトというのは、黄泉の世界?黄泉の世界って何?」
声が響く。
「現世から次の世界に進むには、まっさらが条件なんだ。こだわりを持ったまま亡くなると、この黄泉の国で人生をやり直すことになる。ただ、ほとんどが、ここで赤ん坊からの再スタートさ」
すると、すかさず達夫が、
「ということは転生者は偉いってこと?」
と聞くと、
「それはない。君のような場合、多少のおまけがあるくらいか」
その時、地図の中の一部分が、光を放って浮き出て来た。
「そこで君にオススメなんだが、科学万能国家グヨ国は、どうかな。ここは、主に科学理論や研究に未練を残した、科学者、研究者が生まれ変わる国なのだが、ここなら、君が今までのように勉強を続ければ、それなりの出世が見込めると思うのだが」
どうやら光った箇所が、グヨ国らしい。
「いやだよ。僕は、ずっと勉強をして来て、大学に入ったら、ようやく遊びをエンジョイできると思ってたのに、また勉強なんて」
「・・・そうか、嫌か。じゃ、ここはどうだ?」
今度は地図の別の場所が光り始めた。
「ここはヌノハと言う階級・血統を重んじる国なのだが、一部の特権階級は別として、住民は比較的平穏な日々を送っておる」
すかさず達夫は尋ねた。
「階級・血統って何?貴族とか王様とかになれるの?」
「それは赤ん坊で生まれた場合で、転生者の場合は平民かな」
ヅプは即答した。
「平民?平民なんで嫌だよ。他はないの」
すると別の場所が光り、
「君がお金儲けの才覚があると思うなら、金の亡者の国チネ国というのもあるけど、あんましオススメはできないが・・・」
「勘弁してよ。そんな国に行ったら自殺しちゃうよ。他は?」
達夫は悲鳴のような声を上げた。
「残りは、魔法の国フビ国、ここは魔力ゼロの君には相当の修行が必要だ。最後は、信仰の国ツタゲ国。ここは信仰心がないと・・・」
2つの場所が相次いで光った。
「ちょっと待って。そのツタゲ国ってシスターとかいるの?身分とかあるの?修行とかは?」
達夫が突然、矢継ぎ早に質問を投げかけた。
「1つの国の中に様々な宗教の拠点があり、内容は宗派によって異なるようだが、中にはゆるい宗派もあるようだな。シスターもいるぞ」
少し考えて達夫は言った。
「そこにするよ。僕、前から神様、信じてもいいって思ってたし」
すると、ヅプの声がゆっくり響いた。
「よし。君の転生先はツタゲ国だ。今から転生する。最後に、もう1つ、おまけだ。テゴタワに治癒能力を持つシスターがおるそうだ。訪ねてみてもいいぞ」