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4話:鬼が笑う

最終話です

感想、評価、ブクマなど頂ければさいわいです


 不思議なので、なぜご馳走が並んでいるか仁輝さんに聞いてみた。

 応えは診断結果の盗み聞き。

 それで、大量の御馳走を急いで用意したらしい。


「霊樹、ミケを治療できるのは間違いないんだろ?」

「はい、完全に人間には出来ませんが、うとまれる妖気やドジはなくせます」


 応えた後の仁輝さんの目は、尋常ではなかった。

 俺が母ちゃん以外の人間に恐怖する日がくるとは…… 


「霊樹殿! ミケが提灯だけで「親方ありがとう」って笑ってくれた、ずっと笑顔になる事がなかったんだ!、それに霊樹殿といるミケはとても楽しそうでな…… どうかミケの事を最優先でお願いします!」


 仁輝さんは予想以上にミケの幸せを願ていた。


〔若、ミケさんには霊力もありました、妖ではなく半妖ですから嫁に誘ってみては?〕

〔しっ! 聞こえたら誤解されるだろ!〕


 しかし、仁輝さんの耳は小声を聞き逃さなかった。

 既に気迫で負けており、結局事情を全て白状させられた。


 それからミケは好みかどうかとか、嫁の条件に問題ないかとか。


 仁輝さんの眼力は強力で、可愛いと思うし霊体は綺麗だとまで自白。

 恥ずか死ぬって! この圧迫尋問つれぇ! 雷電は半殺し決定だ。


「霊樹殿の目的は婚活の旅、ミケは好みで嫁の資格もある、仕事は安全な神職、危険な発掘屋よりよっぽどいい、ミケも脈ありで間違いない…… 嫁に決定しましょう」


 いくら思い遣りでも、人の人生を勝手に決めるとは何事か!

 眼力を信念で押し返し、反撃にでる!


「あのですね、仮に口説けたとしても相手の悩みに付け込んだ形にしかなりません、魂の綺麗なミケさんにそんな卑怯こと、私には無理です!」


「見事な信念! ミケの夫は霊樹殿をおいて他にない、気にせず口説いてくだされ、卑怯など霊樹殿にはありません、全てこの仁輝が責を負います」


 いよいよ仁輝さんがおかしくなり出した!

 お前の娘じゃねぇ、ミケさんの気持ちを尊重しろ!


「だから、俺には無理だって、いってますよね! だれのせいだろうが関係ない、悩みに付け込む可能性がある時点で却下、大切と思うならミケさんの気持ちを尊重しなさい!」


「なんて頑固な…… 仕方ないので折れましょう、代わりにミケの気持ちを尊重すると霊樹殿にも約束してもらいます」


 元よりその積りじゃい!


「約束しますとも! 私も仏に帰依した鬼の末裔、二言は有りません!」

「ご立派! これでミケから嫁にと頼んだ場合は、娶ってもらえますな?」


 げぇ! うっかり仁輝さんの罠に嵌まってしまった。

 ……冷や汗が止まらない。


 今までや今後を考えると、ミケさんに好意を向けられない方が難しい。


 そこに、仁輝さんがあれこれ吹き込めば確実に詰む。


 ヤバイ、こんな方法で嫁にしたら、父ちゃんに顔向けできない!


「で、できるだけ優先しますが、護符作りがあるので……」


「儂と雷電が命を懸け不足はだしません、心配ご無用」


 雷電を見ると、すでに仁輝さんの眼力に負けて腹を見せていた。


 六華はミケさんの味方だが、なぜか仁輝さん陣営についた。


 その後、仁輝さんと奥さんに、味のしないご馳走をつめこまれた。


◇◆◇◆


 翌日から親方の仁輝さんは指導を放棄して護符作り。

 俺も楓班の用心棒とミケさん関係以外は護符作り。


 護符は増えているので、貯蓄分で後々指導をするらしい。


「雷電、お前妖の癖にちょっと弱すぎないか?」


「演技ですよ、若はミケさんに気があるのに動かないからです」


「しっていたのか雷電……」

「長年仕えてきやしたからね、それでも若が付け込まないって事も」

「ミケにも幸せ、ちゃんは頭わるい」


 俺は言葉で袋叩きにされた、幼女にまで……

 そこにミケさんが部屋にやってきた。


「ミケさん、毎日の治療は負担が……」

「違うよ、親方からお礼ならお弁当とお手伝いがいいって聞いて」


 仁輝さんが仕掛けてきた、疾きこと風のごとく。


「それは申し訳な……」

「嫌がられずに誰かの側いられるのが嬉しくて、つい、きちゃいました」


 仁輝! 今まで何やってたんだよ!


 いや、護符で身動きができず、養子は断られてたな……

 何も言えねぇ……


「単調な仕事にミケさんが話し相手に来てくれるとは、俺も嬉しいです!」


 ミケさんに辛い思いはさせたくない。


 でも、神仏に仕える者がこんな方法に乗っていいのか?

 とわいえ、ミケさんに頼られる事が嬉しすぎる。


 結局俺は、訳の分からない葛藤のまま、流れに身を任せた。


◇◆◇◆


 あれから半月、すっかりミケさんと仲良くなった。


「霊樹! ここは私のお気に入りの場所なんだ、一緒にお弁当食べよ」

「この山は町も海も見えて絶景だな、木陰で風も涼しいし、野花も一杯だ」


「ドジも減ったし班の友達も沢山できた、全部霊樹のお蔭、今までは私だけの場所だったけど、これからは霊樹と二人だけの場所にするからね!」


「ミケを独占できるなんて幸せすぎる、俺は今まで娘さん達からは怖からってたから、デートがこんなに楽しかったなんて初めて知ったよ」


 こんな感じで毎日デートか治療か用心棒。

 これ完全にお付き合いしてますよね?


 治療とか無くても、ミケさんは俺とお付き合いしてくれたかな……


 そんな日々が一ヶ月になる頃。

 発掘が終わったら、あの場所で話したい事があるの。

 と、ミケから頼まれた。


「若、今日が決める時です、腹を据えてくだせぇ!」

「ちゃんに二言は無い!」

「お、おう、と、当然だ!」


 実際は緊張でガチガチで、葛藤がありまくりで、期待もありすぎる。 


 なので、発掘はうわの空だった。

 その所為で脆くなった床に気付かなかった。

 俺は遺跡の床を踏み抜き、落下して気絶した。


◇◆◇◆


 うるさい物音で目が覚める……


 辺りを見るとミケと雷電が俺と六華を守って、妖や亡霊と必死に戦っていた。


 二人は傷だらけでミケは亡霊にもまとわりつかれている。

 六華は頭に怪我をしてまだ気絶。


 はっ! ボケっとしてる場合じゃねぇ!

 早く皆を助けねば!


「雷電! ミケを連れて六華の所へ下がれ! 鬼を降ろすから気をつけろよ!」

「若! がってんです!」

「霊樹!」


 左手に槍を構えて無数の根を飛ばし、亡霊を片っ端からつらぬき存在ごと食っていく、実体のある妖は右手の大鉈で纏めてなぎ倒す。


 【鬼神招来】父ちゃんから引き継いだ、鬼神の引きだす術を使っている。

 余りに残忍な戦い方で、見た人は恐れ怯え忌諱(きい)するようになる。


 でも早く治療する必要がある!

、瞬時に敵を駆逐し、班長に断って3人を屋敷に連れ帰った。


 雷電は妖なので精気を使って簡単に治せた。

 六華は頭なので診断に時間がかかったが、こっちも問題無く治療。


 問題はミケ、外傷は何とかなる。

 だけど、霊体の傷の治療やこびり付いた怨毒の除去は後遺症がでる。

 今後の生活に支障が出ないように、できるだけ工夫して治療する他ない。


「ミケは、ミケは助かるのか? 治せるのか?」


 仁輝親方が心配そうに聞いてくる、治すのは可能だ。


「私の不注意で申し訳ありません、外傷は完治、後は霊体の治療だけです、ただ、最近の記憶が曖昧になります、早い方が良いので始めます」


 六華も目が覚め、雷電から親方と一緒に経緯とミケの後遺症の説明を聞いている。


 霊体の傷は断面を削ぎ、整えてつなぐ、怨毒も表層だけだ、薄く剥ぎとり凹みをならす、この治療なら数日で完治し、後遺症も最近のわずかな記憶が曖昧になるだけ。


「霊樹、その治療はまってくれ、それではお前の記憶がほとんど無くなる!」


 親方が止めるが無視して治療を続ける。

 急がねば怨毒が染み込むし、記憶が消えるのは俺の自業自得。


 それにミケの記憶が残っても【鬼神招来】を見たから、親方の望む未来はない。


 雷電は妖、六華は気を失っていたが、ミケは半妖で確り見ていた。

 記憶が消えれば忌諱もうすまる、俺にとっても救いなんだ。


 ついでだ、悩みの治療も完了させ、父親と仁輝さんの古傷も減らす。


 そして真夜中に治療が終り、最後に親方に頼まれ賭けをし、朝になった。


「あれ? ここは? 親方の家ですか?」


 親方が目に入って分かったようだ。

 俺は念のため隣部屋ので待機。


「痛いとか辛いとかは無いか? ミケは遺跡で妖と戦い、怪我をして霊樹に運び込まれたんだ、治療も霊樹がやってくれたぞ」


 ミケは少しして、思い出したようだ。


「ああ、親方がうちの班に付けてくれた用心棒さんですよね! すこし怖い感じですけど、腕が立って治療もできる…… タハハ、恩人なのにどんな人か曖昧だよ、困ったなぁ……」


 怖がられて無いみたいだ、ちょっと嬉しい。


「別の部屋で休んでるからちょっとまってろ、顔をみれば思い出すかもしれん」


 隣だが、遠回りして正面から入ってミケさんに挨拶してみる。


「ミケさん気分はいかがですか? 治療は上手くいったので数日で元通りですよ」


 ほんのわずかだが、ミケに怯えが見えた。


「ちょっと疲れがあるだけ、用心棒さんは強面だけど優しいね、治療ありがとう!」


 これ以上、記憶を刺激すれば霊体の傷が開く危険がある。

 簡単にお見舞いを言って去ることにした。


 親方との賭けは、ミケが怯えず好意をまだ持っていたらもうしばらくここに残る、違ったら危険なので俺は町を出ていくという内容。


 呼び方が霊樹から用心棒さん、怯えもあった、親方の負けだ。


 町を出ていく時、親方は約束を大きく超える報酬をくれた。


「霊樹、しばらく月日がたったら、この町に戻ってこないか?」


「月日では危険です、最低でも1年、その時に近くにいれば、よってみます」


 仁輝さんは拳を握りしめ、悔しそうにしている。


「それより、治療を理由にもう一度養子に誘ってみてください、治療で古傷も見たのですが、ほとんど残ってませんでしたよ?」


「嘘つけ…… お前が治したんだろ? ありがとよ、誘てみる」


 仁輝さんと別れた後、町の見納めに3人であの場所に向かった。


「若、あっしはまだミケさんとよりを……」


「あんな口説き方は嫌だから、俺には無理だって言ってただろ? ミケさんはいい娘だ、普通に恋愛して、相手を見つけるのがいい」


 六華も納得できない感じ。


「ちゃん、鬼の霊力、食べていい?」


 本物の鬼の霊力が悪いと思ってるのか……


「おう、しっかり食え、また婚活の旅だ、体力つけろよ」


 元から長くなると覚悟していた婚活の旅。

 無理せずのんびり続ければいい。


- 了 -

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