3話:親方とミケ
私掠船団柊私掠船柊@小説家になろう
様より雪ん子「六華」のカスタムキャストの画像を頂きました<(_ _)>
yu@(秋方ゆう)小説を書いてます♪
様よりミケのイラストを頂きました<(_ _)>
宿場町に着いた後、助けた娘達の親がお礼をくれた。
芋や漬物、雪ん子用に腰まである三角の藁帽子とワラジ靴底の革サンダル。
宿場町を出る時は見送りもしてくれるそうだ。
早めの仕事と賊の銭で余裕ができたな。
しばらく飯つき風呂つきの旅籠でいいや。
ここには温泉もあるらしいからな。
それと、雪ん子の名前も「六華」に決定した。
雪の結晶から、雷電が思いついた名前だ。
雷電は「若だと適当な名前になりやす!」だってさ、失礼な!
因みに俺が考えた名は「ゆっきー」
わかりやすく可愛いと思うんが、雪ん子が選んだので仕方ない。
旅籠が決まったので先ずは風呂、露天温泉らしく疲れがとれそう。
獣も入りにくるので、雷電は小さくなってテンのフリ。
六華は半妖なので、風呂でもとけたりはしない。
「風呂に入るまえに垢を落とすぞ」
六華は手ぬぐいで体を軽く、髪のほうは丁寧に優しく洗う。
薄めた酢で残った石鹸を落とし、最後に普通のお湯ですすいで完了。
痣は消えたけど、まだガシガシ洗うのは不安なんだよ。
「髪に艶がでやしたね! 若は子煩悩で優しいのに怖がられるなんて……」
六華の髪の毛は鳥の濡れ羽色って奴だ。
でも雷電、後半の同情はよけいだ!
温泉でいい気分なんだから、婚活の事は忘れさせろ!
「次は雷電な、見た目が獣だし、タライで洗うぞ?」
「湯はいいでやんすねぇ、あっ! そこ痒いのでもっと!」
雷電は風呂好きで頻繁に入れている。
お返しは按摩のような絶妙な電気風呂。
飯も海の側で海鮮料理が美味しかった。
最後は柳の枝と塩で歯磨き、六華の枝先は俺が噛んで房にした。
「ちゃん、寝る前に、霊力」
「はいよ、しっかり食べな」
数回目だが結構な効果で鬼と言われなくなった。
今は目を反らされるか、道で避けられる程度。
お礼に、小さくした雷電を抱き枕に貸し出す。
たまに「冷気はやめて! 凍死しやす!」とか聞こえる。
雷獣の凍死なんか聞いた事がない、よわねは無視。
翌朝出発になると、例の娘達が六華の見送りにきてくれた。
六華が出てくるまでは遠巻きだったのに……
まてよ、婚活には六華が有効ってことか? 要検討だ。
こんな感じの旅を続け、やっと遺跡鉱山のある尾張に着いた。
「鉱山についたら若も発掘屋に?」
「いや用心棒、妖や亡者に発掘屋崩れが出るからな、稼げるぞ!」
「若…… 本命は嫁さがしにしてくだせぇ!」
「ちゃん、六華、嫁さがし、お手伝い」
「な、なるべく頑張ります!」
すっかり忘れてたら妙な圧力をかけられ、発掘屋の町に急いで向かった。
◇◆◇◆
「住家ばっかりでせま苦しい町でやんすね」
「危険な遺跡鉱山だから、最初は罪人に発掘させてたんだよ」
今は政府が金属を買い取り、それ以外は発掘屋の取り分。
実入りがいい仕事になり、現在は危険を承知で大金を求める山師の町。
金やお宝があれば、商店が自然に増える。
発掘品を買いにくる者も出入するように成った。
それで人口も自然にふえた。
「それより先ずは旅籠だ、六華、町では歩いて体力作りだ」
「ちゃん、六華、歩くの嫌」
えぇ! 6歳でおんぶ癖って不味くないか?
そんで説得しようとした時、話しかけられた。
「よお、そこの兄ちゃん、用心棒ってのは遺跡でもやるのか?」
見た目は50代だが、筋骨隆々でたぶん発掘屋。
「ええ、それ目当てにこの町にきて、今は宿をさがしてます」
「報酬は山分け、宿は家の空き部屋に住み込み、どうだ?」
「ひきうけます!」
「よし、付いてきな」
報酬も山分けで宿代がうく住み込みの美味しい仕事。
雇い主は仁輝という名前で幾つかある発掘組の親方。
元は山伏だったが妖対策に政府から親方にと頼まれたそうだ。
俺の方は最初から鬼の半妖とバレていたが、宮司の息子と知って喜ばれた。
組の発掘屋は班を作って遺跡に向かうのだが、仁輝さんは妖対策に護符を作って売るのも役目、自分は中々発掘に行けず、見習いの保護や班長の指導もできずにいた。
だけど俺も神職、仁輝さんと俺で休暇に護符を一緒につくれば時間ができ、俺は見習いの用心棒、仁輝さんは別の班で班長の指導をする計画、なお、護符が余っても貯蓄用に買い取ってくれるので美味しい。
家は政府が用意した立派な屋敷で快適。
奥さんの手料理も美味しい。
まずは仁輝さんと二日がかりで護符作りとなった。
「流石は宮司の息子、沢山できたなぁ、これで余裕ができるよ」
「お代がいいですからね、でも雷電の護符は……」
雷電の足型を小鬼の血で押した符、これでも半額で買ってくれる。
妖力の乗った雷撃符ではあるが、護符ほど万能ではない。
それでも、武器の効かない霊体の妖でも追い払える、と頼まれた。
「生き残る手段になれば十分、一人前の発掘屋なら半額で喜ぶぞ?」
「若…… 妖力が…… 精気を…… くだせぇ……」
代わりに雷電が瀕死になってた。
俺は森から精気を得られるので分ける。
程々にしないと森が枯れてしまうので、限度はあるけどね。
それとかなり頑張ったので、槍や矢も防ぐ古代の透明な盾を貰った。
おんぶで子連れの用心棒だ、背負えば六華の盾になる。
「明日から俺もしばらく指導だ、霊樹にはミケって娘のいる班の用心棒を頼む」
「本業ですからね、ですが指名ってことは訳ありで?」
親方の話によると、ミケという娘は猫又の半妖。
瞳も縦長で牙と鋭い爪もあって気味悪がられ、少し頭が弱くドジも多い。
なので、班員達からよく思われていない。
俺には猫耳と尻尾で十分可愛いと思うのだが。
それと、ミケの父は親方の弟子だった、だが、親方が人を見誤って質の悪い発掘屋達と組ませてしまい、その結果、お宝に目がくらんだそいつ等に殺されてしまったそうだ。
悔やんでも悔やみきれない親方は遺跡で待ち伏せ仇討をした。
次にミケを養子にと誘ったが、恨んでしまうかもと断られてしまう。
ミケも分かってはいたらしいが、感情は分らないからと。
そして時がたってミケも発掘屋になった。
でも、聞こえる噂は辛いものばかり。
えこひいきは良くないと思いつつ、親方は何か手助けをしたいと望んでいた。
でも護符作りで忙しく、何もできないでいた時、半妖の俺が目にとまった。
半妖の俺なら、ミケを気味悪がらないだろうと。
「しっかり守ります! 霊体治療もできますからドジも治せるか試します!」
「親方! この雷電もお力になりやす!」
「六華はミケを虐める者、氷漬け!」
俺達はミケや親方を想って泣きながら承知した。
一部のダメな発言は後で注意しておこう。
「霊樹達に死なれても辛い、無茶のない範囲でだのむぞ」
翌日、ミケの班の用心棒になった、皆の気合も十分だ。
「よっ! あんたが噂の子連れ用心棒か? あてぇは楓班の班長で楓だ」
「用心棒の手鬼霊樹だ、横の黒いのは式神の雷電、背中は六華、よろしく」
美人だが発掘屋らしい勝ち気そうな女だ、霊力があるので班長なのだろう。
「強い霊力に式神、体もでかく厳つい、期待できそうだね、ついてきな」
用心棒でも新入りなので最後尾、ミケって娘も最後だから合わせた。
ミケはうとまれている自覚があるのか、少し集団から距離がある。
「手鬼さん、私は半妖だし気味が悪いでしょ? 前に行ってもいいよ?」
「全く気にならない、式も妖、背中の子も半妖、俺も半妖だ」
ミケは驚いた顔をした。
先ずはミケのドジを治し、卑屈さを無くさないとな。
しかし、発掘屋が半妖のミケを気味が悪いとは情けねぇ話だ。
「私はドジが多くて、迷惑が……」
「そりゃ大変だ、俺は霊体治療もできるから今度診察しようか?」
ミケは目を輝かせ、明日親方の家に行くと約束した。
遺跡の発掘では俺達のトリオは大活躍。
雷電は電撃を纏って、六華は冷気で、俺は大鉈で賊も小鬼も亡霊も一気に始末。
資源の機械を解体する時も俺の怪力が役立った。
「霊樹はすごいねぇ、お蔭で儲かったよ、次も楓班で予約だね」
班長の楓さんにも気に入られたので、自然に用心棒ができそう。
翌日は護符作りをしている時にミケが訪ねてきた。
、親方はできるだけ自然に対応して部屋に案内する。
だけど嬉しい気持ちが隠せてないぜ?
俺は二人のわだかまりが取れればいいな、と思いつつ診察開始。
「ミケさん、診察と治療が終わったよ、ドジは猫又の好奇心が原因で注意散漫にしている、少し時間がかかるけどそれを警戒心に変えれば、集中もできドジも減る」
「治るんですね! 手鬼さんありがとう!」
「まだある、うとまれる原因は漏れだす妖気、これを爪に集中させ、漏れをとめる、副次効果で爪が頑丈になり、長さも自在に操れるようになる、爪に妖気が乗るから亡霊も引き裂ける、治療は12から14回ぐらいだね」
「私…… 私は疎まれなくなって…… みんなの役に立てるんだ…… 手鬼さん凄い! 毎日通うし、お礼に手鬼さんのお弁当を作ったり、町の美味しいお店でご馳走するよ!」
余程つらかったんだろうな……
可能な限り完璧に治療すると決意する。
「霊体の形が変わるから毎日は負担が大きすぎる、焦らずゆっくりでいい、それから、治療で遅くなったから親方に提灯を借りてきな、雷電は念のためミケさんの家までお供を頼む」
ミケが帰った後はまた護符作りを再開。
しばらくして、雷電が帰ってくると仁輝さんから居間に呼ばれた。
居間に来てみるとそこには酒や鯛など、何故か大量のご馳走が並べられていた。