謎の女性の脅し
「彩乃、準備はいいか?」
「うん、大丈夫だよお兄ちゃん」
クローゼットの扉の先にある世界にもう一度行くと決めた俺たちは、一度玄関に行き靴を持ってきた。
今回は何があろうともあの世界に足を踏み入れようと考えているからだ。
俺たちは今、自分の靴を持って扉の前に立っている。
彩乃の準備ができているか確認したところ大丈夫そうだったので、俺は扉のドアノブに手を掛けた。
そっと開けられた扉の先には、ついさっき見た光景と一箇所だけ変わらない世界が広がっていた。
逆に言うと、さっきとは明らかに違うものがあった。
その違うものとは...
「本当に皆さんが言っていた通りでしたね...っとっと!そうじゃなくて...お待ちしておりました、お二方。早速ですが、色々と聞きたいことがあるのでギルドまで来ていただけますか?」
その違っていたものとは、扉を開けた時から目の前に人が立っており、俺たち兄妹のことを待っていたというものだった。
(ってか、ギルドってどう言うことだよ。ここはゲームの中なのか?いや、今はそんな事よりもここをいち早く脱出しなければ。急がないと、目の前にいる謎の女性に捕まってしまうぞ)
頭の中で今の出来事を瞬時に整理した結果、今すぐここから離れるのが最善だという結果に至った。
俺はその結果を、一言も言葉を発さずに目だけで彩乃に伝える。
俺が彩乃の方を向き目を見つめると、すぐに俺の意図を察したのか、部屋の中の方に一歩引く。
俺もそれに合わせて一歩引き扉を閉めようとしたその時、目の前にいた女性にドアノブを握っていた右手の手首を掴まれる。
「どこへ行くおつもりですか?私たちも大事にはしたくないので静かに従っていただけると助かるのですが」
彼女の手の力は俺の腕が動かせなくなるほどで、この状況で逃げ出すことが不可能だということを思い知らされた。
「彩乃っ!お前は先に戻ってろ。俺はどうにかして逃げ出すから」
今行動が制限されているのは俺のみ。
だったら、せめて彩乃だけでも逃がしてあげようとする。
だが、目の前の彼女はそんなことすらも許してくれるわけなく軽い脅しの言葉を掛けてくる。
「優しいですね。でも、私がそうやすやすと逃がしてあげると思いますか?もし、彼女が逃げるというなら一生返しませんけど?」
その言葉からはふざけた感じは一切なく、本気で俺のことを捕らえようとしているのが伝わってくる。
「分かりました。私もいきます」
「彩乃っ!ダメだ、これは罠だぞ」
「分かってるよ、お兄ちゃん。でも...でもお兄ちゃんを置いてくことなんてできないよ!」
俺は彩乃の言葉を聞き、説得を諦めることにした。
こうして俺たちは、クローゼットの先の世界に捕らわれたのであった。
どうもMontyです。
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