頭の心配
「なんだ、ここは?」
妹の部屋のクローゼットに突然現れた扉。
そんな摩訶不思議な扉の先には、これまた摩訶不思議な世界が広がっていた。
そこはぱっと見た感じでは街のようだったが、明らかに日本でないのが分かる。
その理由としては、見える範囲にある建物すべてがレンガ造りであること。
それに、ヨーロッパのマーケットを連想させるような市場のような場所が広がっていたこと。
そして最後に、明らかに人間じゃない生き物までが居ることだった。
「ここは、どこだ?」
俺はあまりにも急すぎる出来事の困惑し、状況整理ができないでいた。
そんな俺に気が付いた街の人々は、「なんだ、あれは?」、「変な格好のがいるぞ」言い出し始めた。
「し、失礼しましたっ!」
俺はその状況に耐え切れず、すぐさま扉を閉めた。
「ど、どうしたんですか、お兄ちゃん!」
急に扉を閉めた俺を見て、妹の彩乃は心配そうに声を掛けてくる。
まあ、彩乃から見れば、今のは俺が1人でいきなり「し、失礼しましたっ!」と言い出したわけだからな。
そりゃあ心配するわな。
ともかく、この部屋の住人である彩乃にはこのことをしっかり伝えなければいけない。
俺はベットに座ってこちらを見ている彩乃のほうを振り向き、真剣に今あったことを話した。
「彩乃、いいか?今から俺が言うことは、決して誰にも話したりするんじゃないぞ」
「はい、お兄ちゃんがそういうなら誰にも言いません」
「ならいい。今俺が扉の先で見たものを完結にありのまま話そう」
今見たものは、日本どころかこの地球でもない世界だった。
そうなると、この世界を説明する言葉は一つしかない。
それは.....
「俺が見たものは...ずばり『異世界』だ!」
そう!、俺が見たものは異世界に違いない!
これを聞いたら、彩乃も驚かずには居られないはずだ。
だが、彩乃の反応は予想とは全く別方向のものだった。
「お兄ちゃん、頭大丈夫ですか?病院、行きます?」
なぜか、彩乃に可愛そうな人を見る目で心配されたんだが。
「ちょ、待て、どういうことだ?」
「いや、どういうことだといってもそのままの意味ですよ。ただでさえ部屋に引きこもっている兄がついに頭までおかしくなったので病院に連れて行くしかない思いまして」
「部屋に引きこもっているのに関してはすいませんでした。だが、頭はおかしくなってなどいない。なんだったら、自分で見てみればいいだろ。ほらっ」
俺はそう言って彩乃の背中を押して、クローゼットの扉のほうに押しやる。
彩乃は仕方なく扉を開けて、その先を確認した。
がちゃ
扉を開けてから5秒ほど経つと扉を閉めて俺のほうを振り向いた。
「ごめんなさい、私が悪かったです」
さっきの発言の訂正をするべく、俺に頭を下げて謝ってきた。
今回もお読みいただきありがとうございます。
取り合えず土日はこんな感じで出していきます。
明日からは一日一本投稿に戻ります。
こちらは来週の土曜の12時までお待ちください。