妹と俺
「お兄ちゃん、ただいまー」
少し冷えてきた秋の夕方。
家の中に、高校から帰ってきた妹の声が響いた。
両親が共働きなため、今家にいるのは俺と妹だけだ。
俺の妹である村上彩乃は、県内でも有名な進学校に通う1年生だ。
成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗、そして圧倒的な人の良さから慕われており、現在は生徒会副会長の席にいる。
そんな完璧な妹を持つ俺、村上倫也は、妹と正反対なダメさで、地元の高校になんとか入った2年生だ。
地元の高校に入ったと言っても、今は高校に行かなくなり、家に引きこもっている。
妹にとってこんなダメな兄がいるのが困るというのはわかっているのだが、自分の部屋の居心地の良さに負けてしまっている俺は家から出ることすらもほとんど無くなってしまっている。
ただ、妹は俺に失望することなく、こうして帰ってきては俺に声を掛けてくれるし、毎朝部屋の前にご飯を置いていってくれる。
「はあー。このまま一生妹に養ってもらおうかな。って、無理な話だよな」
俺は現実から逃げるために、ヘッドホンを付けネトゲのイベント周回を再開した。
それから2時間ほど経ったとき、俺はふと思った。
そういえば、まだ2人が帰ってきて無いな。
現在時刻は午後の7時。
両親のどちらかは、必ず7時前には帰ってくるため違和感を感じたのだ。
すると、妹が俺の部屋の扉の前に来た。
「お兄ちゃん、お父さんとお母さんがどっちも帰るの遅くなるって。あと、夕食は私が作っておいたから。下の机にあるから食べておいてね。栄養不足とかになったら大変だし」
そう言って、俺の部屋の隣にある自分の部屋に戻っていた。
父さんと母さんは仕事で遅れるのか。
じゃあ、早めに下に降りて飯でも食べるか。
いつもなら父さんと母さんが居ない時間帯に食べに行くのだが、今日は遅いのでさっと一階に降りる。
リビングの机の上には、妹が作ってくれた肉じゃがが置いてあった。
俺はさっさと食べる用意をし、肉じゃがに手をつけた。
じゃがいもがちょうどいい柔らかさ味もしみていて、肉も口に入れると肉の旨味と肉じゃがの味が同時に口の中に広がっていった。
俺はあっという間に食べ終わってしまいもう少し食べたかったが、父さんと母さんが食べる用で残しておき部屋に戻った。
部屋に戻った俺は、パソコンのスリープモードを解除し再びネトゲを始めようとした。
そのとき…
コンコン
部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
その直後に、妹の声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん、ちょっといいですか。相談したいことがあって」
相談か。
妹から相談されるようなこともないと思うが、断るのも癪なので扉を開けた。
「どうした?お前が相談があるって言うことはなにかあった…うわっ!」
俺が部屋を出ると、妹が俺に抱きついてきてこう言った。
「お願い!私の部屋に来て!」
お読み頂きありがとうございます、Montyです。
今回は、メインで書いている天才と平凡の魔道学園生活の方が100000文字を突破したので、投稿していなかった新作を投稿します。
こちらは余裕があるときに投稿していきます。
あくまでメインはマジックアカデミーライフの方なので、そちらもしっかり投稿していきます。
良ければ感想等よろしくお願いします!