85 ドーム
こちらを見下ろす大男―ドムズのことを見上げながら、言い訳を探す。
素性を偽ったといっても、別に意図したことではない。
レッドが勘違いして、そのなり行きでただ聖職者と名乗っていただけだ。
だがそれを言ったとしても、目の前の大男が納得するとは到底思えない。
何か適当なそれらしいことでも言っておくか。
「聖職者なら告解をすることができるからだ。告解が出来れば、情報取集も速やかに行えるだろ」
ドムズは少し訝し気な顔でこちらを見つめる。いい線には行っているようだが、信じこませるまでは行っていないようだ。
そう簡単にいくわけもないか。話を逸らすことにしよう。
「おまえらこそ、なんでリザードマンたちに協力しているんだ? そっちも素性不明みたいなもんだろ」
俺がそういうと、ドムズは眉間にしわを寄せる。
「俺たちは故郷を亡ぼした魔王を追うために、リザードマンたちに協力している」
奴は目をぎらつかせながら、宣言するようにそういった。
「魔王に順繰りに当たって行けば、何時かは必ず模倣の魔王ブレントに辿りつくはずだ」
ドムズの口から聞こえた言葉に衝撃を受けた。
俺の記憶に違いがなければブレントは、フリッジの初級迷宮を管理している羊のはずだ。
アイツが魔王?
どうやってもそんなことは考えられない。
奴は俺が見ている限り、親切な奴だった気がする。
俺が蹴った時も文句を言うだけで殴り返すこともしなかった。
そいつが国を亡ぼした魔王?
『あれは魔王ですよ。今は羊の姿をしているんですね……。一周目であなたを殺したときは老人の姿をしていましたが』
スリートの口から逃れようのないような事実が提示された。
『あれは化け物ですから、マナを使いこなすまでは絶対に近づかないようにしてください。でないと一方的になぶられて殺されますから』
その声を聞いて、フリッジの出来事はすべて虚構だったんじゃないかと思えてきた。
シェーンもあの時見せたのは演技で、国を蹂躙している今の姿が本当だというのだろうか。
「うん? 何だあれは!?」
疑念に囚われていると、ドムズの驚いた声で現実に戻される。
奴が見つめる方向を見ると、ドーム型の建造物が触手を伸ばして、リザードマンたちや餓鬼族たちを取り込んでいた。
「グっ!」
ドムズも触手につかまれたかと思うと、ドームの中に吸い込まれていった。
俺はその生きる建造物をすぐに深淵だと理解した。
しまった……。
深淵のことを失念していた。
魔王が持っていないわけはないというのに……。




