77 懐かしい光
真っ黒な人間はこちら――正確にはホットの方に飛び掛かって来る。ホットはそれをさらりと避ける。
それから、ホットと奴は睨み合うように距離を取った。
奴は殿を務めていたため、俺たちの退路を塞ぐような形で真っ黒な人間と対峙するような形になってしう。
「俺のことはいいから、お前らは進め。俺はこいつを伸してからお前らに追いつく」
ホットが死亡フラグビンビンの言葉を吐く。あいつおそらく英雄だから大丈夫だよな……。
少し心配になったが、歩を速めて先に進むことにする。
ホットが先に進めと促したということはあの影人間は魔王ではない。あいつに注力して時間を注いでもしょうがないだろう。
それに奴の声はどうしても、シェーン本人にしか思えなかった。恩があるあの人を潰しにかかるというのは精神的にキツイ。
戦いに巻きこまれぬように急いでいくと、懐かしい光とぬくもりを背後から感じた。
そのぬくもりは、シェーンが出した光球によく似ていた。
俺の中で確実にあの影人間は彼女だということが決定された。
振り返ってホットとの闘いを止めたくなったが、踏みとどまった。シェーンはここで、魔王に加担している。
ここで闘いの仲裁に入ったところで、衝突は避けられない。
それよりかは早く魔王を打倒して、奴が撤退するように促すほうがいいだろう。
出来るだけ急がなければならない。
マナを足に送り込んで、疑似的な練気を発生させて、強化を施す。
練気を帯びた足は一歩に進む距離が増え、より早く侵攻することを可能にする。
これはスリートがショットの練気を解除した時の応用だ。
今はまだマナの操作に慣れていないから、三級魔法との併用しかできないが、慣れれば二級から上の魔法も使えるようになるだろう。
『まだ練気をオンオフできるだけで個人単位ですか……。私が生まれたときは世界単位のマナが動かせたものですけどね』
……もともとそういう風にできているお前と俺を比べるなよ。
そう心の中で一人ごちると前方にカラフルな壁が出来ているのが見えた。
急いでブレーキを掛ける。
なんでこの薄暗い通路にこんな前衛芸術みたいな壁がある?
前方を見ているとそれは壁ではなくて、松明を持った住民だろう集団だとわかった。
「逆賊どもがここから先は進ませんぞ」
その代表だろう男がこちらにそう言葉を叩きつけてきた。




