75 尖兵選び
ホットが仲間になってから、二日ほどの移動でドラス共和国の一歩手前に来ていた。
あと半日も馬を走らせれば、到着するだろう距離だ。
木々がまばらに見えるサバンナで、俺たちは晩餐とともに作戦会議を開いていた。
「尖兵は誰が行く?」
肉を咀嚼しながら、ドムズ―おれと接触の多い餓鬼族の男が車座に座っている一堂に話しかける。
俺はてっきり、みんなで国に飛び込んでいくものとばかり思っていたので、その言葉を聞いて面食らった。
尖兵てことは、危険な敵の領域に単身で突っ込むということだ。
おれには自殺行為にしか思えない。
「俺が出よう」
「いえ、ここは自分が出ます」
誰も進み出ないだろうと思っていると、ホットとバルザックが名乗りを上げた。
「あんたはよしておけ。行っても対応できずに死ぬだけだ。魔王の支配する領域に足を延ばすてのはいくら命があっても足りるもんじゃない」
ホットはバルザックにそう忠告すると、腰にぶら下げている箱に指を這わせた。
箱は指に触れた瞬間、光を放った。
その光は青色でひどく怪しい。
「ですが……」
光に目を奪われそうになるとバルザックの声が、耳を打ち、意識はそちらに向けられた。
バルザックは何か言い返そうとしようとしているが、口が開けないといった感じでホットをじっと見つめている。
「異論はないな」
とどめにホットがそう告げると、バルザックは諦めたようにそっぽを向いた。
「じゃあ、俺は早速行ってくる。おそらく朝には帰って来れると思うからその時報告させてもらうよ」
ホットはそういうと、地面を蹴って飛んでいた。
飛んだ後に土煙がたち、その後の奴の様子がわからない。
この脚力なら魔王に襲われても、一瞬で離脱できそうだ。
おそらくこの中で奴より尖兵に向いてる人間は、この中にはいないと俺は確信した。




