67 重なる存在
半分になった赤い世界で、砂が踊って吹き飛んでいく。
足、口、手、首。左目以外のすべてのものが動かせなかった。
おそらくここまで飛ばされてきたときに、色んなものにぶつかったからそれで壊れてしまったのだろう。
俺はなんで、こんなになってもまだ生きているのだろうか。
いっそのこと、死んでしまえばまだトリシュを失った喪失感に襲われることも無かったというのに。
体は役立たずになっているというのに、頭は健在のようでトリシュが消えるさまを延々にリピートし続けている。
それを見せることで、俺にまだ立ちあがれと言っているのだろうか。
立ち上がる足はないし、身体を支える背骨は粉々に砕けている。
そんなことは出来るはずがない。
俺にできることはこのままここで、死を待つことだけだ……。
だから、それを再生し続けるのはやめてくれ。もう諦めたいんだ。
そう懇願したところで、リピートは止まらない。叫び声を上げたくなるが声帯が俺の呼びかけに応じない。
「トカゲ、どうやら無事のようですね」
リピートに苦しめられていると、そんな声が聞えた。
左目を声の方向に向けると、右半身だけのスリートが這いずってこちらに近づいていた。
右腕を動かしてこちらに近づくその姿は、ひどく痛々しい。
俺がまだ生きている理由がわかった。ラルフに殴られた時にスリートがかばったのだろう。
そうでないとスリートの体が半分なくなっていることの説明がつかない。
どうしてそこまでして、俺を助けてくれるんだこいつは……。
「あなたの表面はもうボロボロで使いものになりませんが、まだ存在を立ち上げることで再起できる可能性があります」
こちらに近づきながら、スリートはよくわからない可能性について提示していく。なんでそんな状態でまだ俺のためにまだ動いてくれるのだ。
理解ができない。俺は助けられた覚えはあるが、俺がスリートを助けれるようなことがあったことなどないのに。
「普通は人間が精霊の存在を受け入れれば存在が押しつぶされて、消滅していますが、存在のないあなたならおそらく受けれられるでしょう。存在を重ねて立ち上げるなんてこと、したことがないからハッキリしたことはわかりませんが」
存在を重ねる?存在を重ねた側はどうなるんだ?
スリート、お前はそんなことをして無事ですむのか?
そう尋ねようとしたが、声が出ない……。ひたすらにもどかしい。
不安にかられていると、スリートが俺の元にたどりついた。
「では始めましょうか」
スリートはそう言って、身体を光の粒子に変え始めた。
その様子を見て、スリートがただでは済まないことを、俺は直感した。
やめろ……。
そう喉を振るわせようとするが声が出せない。
「あきらめるなていったのは、あなたでしょ。そんな顔しないでくださいよ」
スリートは困った顔をしたかと思うと、光の粒子になって俺に降り注いだ。




