62 いきなりすることがなくなると落ち着かない
青空と夜空が急速に入れ替わり始め、映像の早送りのように世界が目まぐるしく回る。しばらくすると、前飛んだ時と同じように流れが緩やかになっていく。
景色が止まり、元の時代に戻って来たと思うと体から大量に血が噴き出した。
そういえば、時を越えた反動でダメージが入ることを忘れていた。
急いで祈りを捧げて、神聖術をかける。今回は早くやったおかげか、頭がくらくらすることはなかった。
周りを見ると飛んだときと同じように山の中だった。過去に飛んだときは場所がずれて、正門の前だったのに。
あの時とは異なっているのには何か理由があるのだろうか?
少し気になったが、今は学園がどうなっているかの確認の方が大事だ。スリートに聞くのは後にすることにしよう。
山から学園を見下ろすと生徒たちがだべりながら、歩いている。あの時のような悲惨な光景は広がっていなかった。
それを見ると、心の底から安堵できた。そのまま力を抜いて、仰向けに倒れる。
1か月ぶりに緊張が解けた。
過去にいる間はショットの侵攻に対応しなければならないし、ちゃんと未来が変わっているのかが分からなかったから、どうしても緊張の糸を解くことができなかった。
やっと終わったのだと確信できた。
しばらく仰向けに倒れて、ボーと空を見ていると、空の色がすぐに変わらないことに気づいた。
過去にいたときは毎日やること、覚えることづくめで、朝だと思ったら気づいたらもう夜という具合だったというのに。
この1か月は本当にせわしなかったんだろう。
そんなことを思いながら、空を眺めていると何だか落ち着かなくなってきた。
久しぶりに何もしないから体が落ち着かないんだろう。
せっかくだし、みんなに会いに行ってくるか。
―|―|―
学園に降りると学園の生徒の他にも一般人らしき人間たちの姿があった。
奴らはこぞって、俺が建てた深淵もどきの中に入っていていく。
近くには看板が立てられており、「深淵戦争資料館」と書かれていた。
戦争が終わってからは資料館として改装して、学園の経営の一助てところか。
魔王の防衛の砦が資料館になっているところを見ると時がたったことを実感する。
戦いに使うものは今の学園には無用の長物なのだろう。
寂しいような嬉しいような複雑な気持ちになる。
資料館を見ていると、視界の隅に見覚えのあるシルエットが映った。
異様に身長の低い女の子。
エラーだ。
いつもつけているハリボテは着用していない。あれはデュラハンを利用して作ったものだから、深淵が消えたここでは作れなかったのだろう。
最後に会ったときはデュラハンに姿を変えていたので、元の元気そうな姿を見れて本当に良かったと思う。
「エ……」
近づいて、奴の名前を呼ぼうすると、エラーは俺の脇を通り過ぎていた。




