60 夢の迷宮建築
「ふー、やっと完成だ」
目の前にそびえたつ深淵そっくりなそれを見て、つぶやく。
我ながらなかなかの出来栄えだと思う。
深淵に似た構築迷宮。
それがシェイムと契約を結んでから、最初に要求されたものだ。
おそらく、ショットに対する要塞がないので、火急で作る必要があったのだろう。
まあ確かに防備がないというのは心配ではある。
ショットが侵攻してきて、正面対決で止めろというのは身の毛のよだつような話だ。
一度ショットに圧倒されているシェイムは、何としてでもそれを避けたいという事は想像に難くない。
それに正面対決に持っていかれるのは俺としても困る。
正面対決のとき、最先鋒として出されるのは俺だからだ。
ショットを説得できる目があり、時間稼ぎも可能、そして俺がいなくなったとしてもシェイムはまったく痛手を被らない。
この状況から考えて、ださない方がおかしい。
そういう打算もあってか、疲労が積み重なっていたが徹夜でこいつを完成させることができた。
「これで、ショットの人柱にされることはないな……」
こいつがあれば、ショットは撃退可能だ。あいつは深淵のトラップで伸びていたからな。
あれをこの深淵に設置すれば、正面対決の必要などなくなる。
後はこの中に例のトラップを設置するだけだ。
だがことここに至って疲労がピークを迎えっている。このまま立ったまま眠れそうだ。
このままじゃ、肝心な部分ができないまま……。
「リーデンブルク! まだ、魔道具の搬入とダンジョンコアの台座を作る作業が残っているぞ! 早く終わらせるんだ!」
眠りに落ちそうになったが、溌剌とした声に叱咤されて起こされる。
見ると魔道具を持ったガリがいた。
こいつは、俺の横でトラップとなる魔道具を作成したはずだが、迷宮を完成させた時に終えていたようだ。
迷宮作成と眠気に抗うことに意識が向いていて、途中から奴が隣で作業していることを忘れていた。
ガリは溌剌とした感じで箱のような魔道具を持って、迷宮の中に走っていく。
奴の姿には、燃え滾るやる気のようなものを感じる。
33年後の奴とは正反対だ。一体この先の奴の人生に何があるというんだろうか。
俺も魔道具を持って迷宮に向かう。
そういえば自分の迷宮を作りたいていう俺の夢、これで実現したな。
まあ自分の家に作りたいと思っていたから正確には違うけど。
将来事務所から出られるビジョンが見えないし、暫定で実現とうことでいいか。
もし将来家ができたら、今回のはなしにして、その時作った奴で正式に実現することにしよう。
出来るとしたら、何十年後だろうか。




