49 魔王の行動は制御できない
職員室の会議は俺としては最悪のものだった。
議題は魔王の進行を止めるにはどうするかというところから始まり、紆余曲折を経てやはり誰かが撃退するしか他ないという事になり、それから誰がでるとなった時に俺が出ると申し出たが魔王が出るといって譲らず、しまいには師匠まで行くと言う始末だ。
結果として、俺の進言空しく、メンバーはシェイム、師匠、俺という面子となってしまった。
シェイムは侵攻してきた魔王とは接触させたくないというのに……。
そして今現在俺たちは馬車に乗って、荒野を進んでいる。
西部劇の舞台として、使われそうなくら綺麗な荒野だ。この荒野を作るために定期的に誰かが整備に来ているんじゃないかと思うほどの。
時たま警戒のために外の様子を見ているのだが、荒野には全く変化がない。同じような景色をリピートしているだけだ。
馭者をやっているシェイムがサボっているんじゃないかと疑いたくなる。だが、馬車は揺れているのでそんなはずはない。
「リードさん、なんであなたは魔王の撃退なんて無謀なことを率先してしようと思ったんですか?」
外の様子は見ていると、師匠が尋ねてきた。また疑われているらしい。相変わらずリードもそのままだし。
確かに魔王の撃退なんて、聞くだけで危険そうなことに飛び込んでいくのはおかしなことだし、疑ってもしょうがない。
理由を聞きたくもなるだろう。
だが、正直に「未来の学園が崩壊させない」ためなど言えるわけもないし。適当な言い訳を脳みそからひねりださなければならない。
「ああ、天の啓示があったんだ。この先にいる魔王を説得することで、幸運が訪れるていう」
「冗談ですよね。啓示なんて……。昔の英雄が言っているところしか聞いたことがありませんよ」
師匠は俺の言葉に眉根を寄せて、またうさん臭いものを見るような眼で見つめてくる。
教会の人間としてそれぽいことを言ったというのに、墓穴を掘ったようだ。
教会の知識なんてゼロなのに適当な事を言うもんではない。
このまま詰問されても、ボロが出て面白くない。話をそらさなければ。
「お前こそ、なんで魔王の撃退なんかに参加しようと思ったんだ?」
「それは、あなたが行くといったからですよ。ラウンド教の教えには仲間を決して見捨てずという戒律がありますからね」
「なるほどな……」
師匠は俺のせいでついていくことになったようだ。俺が教会の人間と名乗ったのは藪蛇以外の何物でもない。
教会の人間と名乗ってよかったことといえば、一回だけ師匠の追求から逃れられたくらいだ。
「ですから、あなたが魔王撃退に行くといった理由を教えてください。最悪死ぬかもしれないんですから、聞かないとやってられません」
追い詰められた。
言ったらダメだろうが、言わざるを得ない状況に追い込まれている。
師匠はさらに追い打ちをかけて来ているし、これはもう逃れようがないだろう。
「実は――」
「魔王が見えました。皆さん気を引き締めてください」
訳を言おうと言葉を紡ごうとすると、シェイムの妙に冷えた声が耳を打った。
幌から身を乗り出し、前方を見ると、血まみれの浮浪者のような男がこちらに向かって歩いてきていた。
体中から陰気なオーラをあふれんばかりに感じる。
雰囲気はまるで違うが、その猫耳と顔には確かに覚えがある。
「ショット……」
俺が認識すると共に、アイツは、抜刀した。
「何なんだてめえら……!」
それから、憎悪に満ちた叫びをあげると奴は前方から消えた。




