48 マナを司る精霊②
「存在がないてどういう事だよ⁉」
こちらは存在がないと聞かされたことで焦燥に駆られているというのに、それとは対照的に興味なさそうに寝転がって、腹をぼりぼり掻いているスリート。
鎧の上からなので意味がなさそうだが、あれも本体の一部なのだろうか。
「ああ、それはですね。まず、存在というのは、種族特性とか、魔法の才能、武術の才能とかのことで、個々人決まっているはずなんです。それだというのに、あなたは何も決められていないんです。形だけリザートマンてだけで、その正体は何者でもありません。いうなれば、突貫工事で見た目だけ見繕ったハリボテといたところでしょうか」
人のことをハリボテだのなんだの言いたい放題だなこいつ。
まあ確かにリザードマンは魔法が使えないはずなのに使えたり、魔力が無限に湧いてきたりしておかしいとは思ったのだが、まさかそれが設定されていなかった故とは。
確かに転生の時に会った神様、適当そうな感じだったからな。よもや、俺の存在を手抜きで作るとは。
まあそれで生じている恩恵もあるし、一概に悪いとは言えないのだが。
「そうか、残念な事実と儀式の必要がないことは分かった。一つ質問だけど、儀式の必要がないてことは、俺はお前を無制限に使えるってことでいいのか?」
「何言ってるんですか……。契約が維持できているだけで、ポンポン精霊の力が使えるわけないでしょ。魔力が必要です。魔力が」
寝転がった姿勢から、上半身だけを起こして、スリートが呆れた顔をして俺を見つめる。
まるで、ゴミ収集の日に出し忘れたゴミを見るような目つきだ。
早くも精霊との信頼関係にほころびが生まれているような気がする。
「魔力なんて俺は無限に湧いてくるんだからそれを使えばいいだろ」
「あなた、魔力が無限に湧いてくるんですか……」
「ああ湧いてくる」
そういうとスリートの俺への視線が少しばかり柔らかくなったような気がするが、表情は変わらなかった。
「確かにそれはメリットになりますけど、それでもダメですよ。あなたがたとえ膨大な魔力を持っていたとしても、縁からくみ取れる魔力はそこまで多くないんですから。
いいところで、魔力の安全供給がされて、効率がいいてところですね」
「じゃあ、ダメなのか……。今の調子だと満タンになるまでどれくらいかかる?」
「ざっといえば、1か月くらいかかりますかね」
スリートはまた上半身を倒し、だらけ始める。
俺がそうしたいところだ。
1か月か……。想像以上に長いな。
俺の当初の予定では1日で終わると思っていたのだが、それの約30倍だ。
これではこいつの巻き戻しは魔王を説得の時は使えそうにもない。
「まあ、どちら道……。私は時間を巻き戻すときに微調整ができないので、年単位でしか戻せません。ですから、1か月後に時を戻せるようになったとしてもさして意味はありません。
戻したとしたとしても、ここの1年前ですし、あなたはここから1年前――34年前の記憶も記憶媒体も持ってませんから実際できませんし」
「なるほど」
ということは、2度とここではやり直しは出来ないてことだ。ここでしくじれば、悪くて死亡、よくてバッドエンド周回か。
マナを司る精霊――スリートを知ることで、ここの難易度が見直すことができた。いざとなれば、巻き戻せばいいなんて甘い考えが通用するわけもないか。
「さて、私は疲れたので寝ます。トカゲまた明日」
そう聞えたと思うと、スリートはもう消えていた。
ここでは一人で何とかするしかなさそうだ。
―|―|―
「リーデンブルクさん、こんな朝ばらから申し訳ないです」
その声で俺は眠りから目覚めた。
扉の方を見ると魔王シェイムが立っていた。
まだ夜も明けていないというのに、なんだというのだろうか。
「魔王に戦線を壊されたという知らせが来ました。今から学園にいるもので会議を開きます。用意ができましたら職員室の方においでになってください」
その言葉を聞いて俺の目は一気に冷めた。ぼやぼやしている場合ではない。
学園に魔王が侵攻してくるということだ。
「ああ分かった。すぐ行くよ」
別段俺に用意するものなどないのでベッドから身を起こすと、魔王の方へと体を運んだ。




