47 マナを司る精霊①
この部屋に充満する緊張した空気からか、俺のいつもは役に立たない頭が珍しいことによく働いた。
奴が『儀式』について要求していたことに気づいた。
儀式は体がやけどだらけになったり切り傷だらけになったりするのを師匠が身を挺して、レクチャーしてきたことからその危険性については承知している。
なので、儀式などやりたくはないのだが……。
この状況では無理だろう。もうすでに爆発寸前だ。
上級神聖術『リジェネーション』をかけて、奴の近くに近づいていく。
スリートはしかめ面ながらも、やっとわかったかという感じでうんうんと頷いている。
ベッドに腰を下ろすと奴は俺の腹に手をまわしてきた。
手が触れた部分から何かがじりじりと削られるような感覚に襲われる。
見ると、少しずつ腹の皮が解けて、肉がはみ出して来るのが見えた。
肉が露出しているというのに痛みがない。その矛盾が提示されることによって自分が得体のしれないものと接していることを実感した。
こちらの戦慄とは裏腹にスリートはさらに体をこちらに密着させてくる。背中にひんやりとした鎧の感触が伝わって、削られるような感覚に襲われると
「あなた、やっぱり空っぽですね。『儀式』をしても意味がありません」
そう言ってスリートは俺から離れた。
安堵ともに、まずいんじゃないのかという所感が湧いてくる。
「『儀式』をする意味がないてどういうことだ? なんかまずいんじゃないのか」
「いえ、まずくないですよ。お互い楽になりますよ。あなたは体を分解される必要もないし、こちらはわざわざ定期的に存在を取り込む必要もなくなるのですから」
奴は「儀式」の内容にかかわることを言っているのだろうが、何を言っているのかはよく理解できない。
「お前はなんで、存在を取り込む必要があるんだ?」
「契約者の存在を取り込まないと、契約者との縁が薄れて、結んだ契約が外れますからね」
ということは、俺は取り込む必要がないんだし、よほど俺の存在は強かったてことか。
定期的に取り込むところを一回て……。おれの存在には一体何が詰まっているんだ?
「ですから、存在がないあなたは取り込まなくとも、契約が薄れないということです。ないものが薄れることはありませんからね」
ないってお前……。逆じゃん。




