43 33年前
景色の入れ変わりに俺の目が追いつけなくなって、いくらかすると
「33年前の魔法学園に到着です」
とスリートが言った。
周りを見ると学園の門が静止して目の前に鎮座していた。
動画の早送りのような移り変わりの激しい景色から一変して、景色が固定されていた。
「過去に到着か……。ッ!」
そうつぶやくと、唐突に体中に激痛が走った。視線を景色から体に映すと、かまいたちに襲われたのではないかと思うような切り傷が至るところについていた。
傷口からはだらだらと尋常じゃない量の血があふれ始めた。
「ああ、そういえば、時を越えると反動で、身体がダメージを受けるんでした」
スリートが俺の姿を見てそうつぶやく。それ結構大事な事だろうに。
時を超える前に思い出してほしかった。不意に、身体がボロボロにされるというのはなかなかショッキングなことなのだから。
本人曰く十年ぶりなので、忘れていてもしょうがないと言えばしょうがないのだが。
そんなことを考えていると頭がくらくらしてきた。考えている間にも失血は確実に俺の体力を減らしていたようだ。
ささっと神聖術を掛けないと、気を失ったあげく、そのままぽっくり逝きそうだ。
祈りをささげて、中級神聖術『オールリペア』を詠唱する。動かすと体が痛むので、祈りをささげる途中で姿勢を崩しそうになったが何とか完了できた。
傷は跡形もなく塞がったのだが、どうも失った血までは元に戻せなかったようで頭がくらくらする。
「そこのあなた、大丈夫ですか?」
声が聞えたので振り向くと、道の向こうから修道服の少女がこちらに駆け寄って来た。
「血だらけじゃないですか! 傷を見せてください」
そういえば、俺は血だらけだ。再度体を見下ろすと服は朱一色で、肌には生々しく血が滴っている。
この子は俺が大けがをして、神聖術を掛けないと死んでしまうと思っているのかもしれない。
「ああ、大丈夫だ。さっき神聖術を掛けたばかりだから、心配しなくていい」
「あ、そうなんですか。すみません……。ですぎた真似を。でもなんで血だらけになっていたんですか?」
少女は、周りを怪しいものがないか確認するように見まわしながらそう尋ねてきた。
ここには、怪我をするような危険なものなどない。なのに血だらけの奴が突っ立てるなんて疑問に思ってもしょうがないだろう。
その疑問に答えられるのだが、それにこたえていいものなのわからない。
確認を取ろうと思って、スリートを見ると奴はニヤニヤしていた。
どうやら困っているこちらを見て、楽しんでいるようだ。
その態度にイラっとしたので、意趣返しでもしてやることにした。
「ここにいる悪い精霊と契約したら、身体をズタズタに切り刻まれてしまったんだ」
スリートは「何言ってんだ、この野郎!」みたいな顔をして顔をしかめた。
意趣返しは成功したようだ。いい気味だ。
俺がほくそ笑んでいると
「何言ってんです、トカゲ!プラムに人聞きの悪いことを吹き込まないでください」
スリートが浮遊しながら、俺の胸倉をつかんで突っかかて来た。どういう原理だよと一瞬疑問に思ったが、口から吐かれた言葉の衝撃に打ち消された。
目の前の中学生くらいの少女が師匠?
スリートに胸倉をつかまれながら少女を見つめる。
「なんで私の名前を知ってるんですか?」
少女は訝し気な顔して、自分が師匠であるという証拠を提示した。
俺は、33年前の師匠と出会った。




