39 真意探索
昼、俺はトリシュとアルテマイヤを捕まえて、食堂で2回目になる会合を開いた。
「リード、私たちを呼んだということはなにか情報があったんですね? まさかこれで何もないなんてことはありませんよね……」
テーブルに着くとアルテマイヤがプレシャーをかけてきた。
こいつはなぜここまで俺をなじることに情熱を傾けているのだろう。
不平不満を言いたい気持ちがこみあげてくるが、一度脇に置いておく。
「そんなわけないだろ。新しい情報があったからだよ」
あらぬ誤解を生まないために、否定を入れておく。そうするとトリシュが眉をひそめた。
疑わし気な顔をしている。何者からなのかわからない手紙を信用した前科があるからな……。
「今回はよくわからないものから得た情報じゃないから安心してくれ。直接エラー本人に奇妙な行動について聞いてきたからな。極めて確度の高い情報だ」
「……でもリーさん、それて嘘つかれている可能性もあるんじゃない?」
トリシュがとても言いづらそうに、俺の言葉に疑義を挟む。
「大丈夫だ。奴が嘘をつけないだろう状況で聞き出したから、おそらく嘘をついていないだろう」
トリシュは俺がそういうと、若干納得してなさそうだが、頷いて納得の意を伝えてくれた。
話が脇に逸れるのが嫌だったので抽象的に話したが、溜飲を下ろしてくれたのはトリシュの懐が深いおかげだろう。
「嘘をついていないなんて、あなただけで判断できるものではないでしょう。その内容を話してください。内容を聞いてから判断は下します」
アルテマイヤは冷たいようであるが、俺の答えに現実的な返事をする。
俺たちのパーティ―は柔のトリシュ、剛のアルテマイヤといった感じで意外にバランスのいいのかもしれない。
「そうだな。情報のに内容は、エラーが深淵と契約していること、魔王が現時点で契約者に被害を加えていないこと、魔王が交換条件などで生徒に契約を持ちかけていることだな」
「なるほど」
アルテマイヤは少し考えるように顎に手をやる。しばし、黙ると口を開いた。
「それを完全に信じるわけではありませんが、確かにこれまでの情報と矛盾は在りませんし、確度が高い情報と見た方がいいしょうね」
アルテマイヤは一応のところ、信じてはくれるようだ。
いつもつけんどんな態度なので説得するのに時間をかけると思っていたので、意外だ。
「……ですが、そうなると、調伏のことも視野に入れないといけませんね」
「「……調伏?」」
図ずもトリシュと疑問の声がハモる。調伏……どこかで聞いたことがあるような気がするのだが、思い出せない。
ただ、なんとなく嫌な事だったというイメージだけが頭の中に呼び起こされる。
「調伏を知らないとは。あなたたち、それでも改築師の端くれですか……。調伏は問題のあるダンジョンマスターを打倒して、元の迷宮内の業務を行うようにすることです。頻度は少ないですが、修繕、増設と並ぶ大きな仕事のうちの一つなのですから覚えておいてください」
アルテマイヤは心底呆れたような声でそう言った。
トリシュが俺の顔をジト目で見てくる。そういえば、トリシュに迷宮の仕事について教えるのが俺の役割だというのを忘れていた。
悪いことをしたので両手を合わせて、謝るポーズをとる。
俺の姿を見るとトリシュはしょうがないといった感じで溜息を吐いた。許してくれたようだ。
バッドエンドフラグは折れたので、アルテマイヤに方針の確認をする。
「じゃあ、俺たちの方針は調伏で行くてことか?」
「まだ決まったわけではありませんが、そうなることも考えていた方がいいでしょうね」
「いやでも、俺たちの戦力で魔王を打倒なんて無理だろ。中級のダンジョンマスターであっぷあっぷなんだから」
「調伏は別に打ちのめすことだけではありませんよ。交渉に、ご機嫌取りなどいろいろな手段があります。要は問題を解消するのが目的ですからね。ただうちは、ラルフ様とシェーンが担っているので打ちのめす方に行きがちですが」
解決するのが目的なのになんで、打倒ていっているのかと思ったらそういう事か。
あの親子なんでも拳で解決しそうだからな。
「とりあえずのところは、魔王の真意を知らなければ方針が決められません。情報収集を継続しましょう。私たちはそれとなしに、他にも深淵に出入りする生徒たちに事情を聴きますから。リード、あなたはエラーと学園長に事情を聴きなさい。あなたなら自然に学園長にコンタクトを取ることができるでしょう」
アルテマイヤが役割を割り振り、情報収集は契約者の存在の確認から魔王の真意探索にシフトした。




