38 よくわからないのが一番恐ろしい
午前。
一級風魔法『テンペスト』の実習中。
俺はエラーに尋ねることにした。
この時間ならば、おそらくエラーが嘘をついても簡単に見抜くことができるからだ。
奴は一級魔法を展開しながら話す癖があり、話で動揺すると魔法を崩壊させたり、揺らがせたりする。
昨日、奴の魔法展開中に「お前、その張りぼて。絶対たっぱを伸ばすのも使ってるだろ」といったところ魔法を崩壊させたことは記憶に新しい。
つまり、それを利用させてもらい、本当の事実を知ろうというものが俺の魂胆だ。
俺は早速、魔法を展開途中のエラーに近づき、尋問に入る。
「なあ、エラー、お前深淵と契約しているのか?」
ここが最初の分水嶺だ。ここでエラーが魔法を中断するようならそれ以降は嘘をついていると疑った方がいいだろう。
疚しいことがなければ、平常通り、片手間で応えればいいだけなのだから。
「ええ、してるわよ」
エラーは魔法を展開させながら、いつもと同じ調子で答えた。
最初の峠は越えた。エラーは嘘をついていないし、まだ嘘を吐く気もないだろう。
この時間が終わらないうちに次の質問をぶつけよう。
俺がそう考えると、エラーは口を動かした。
「あんた、どうして、そんなこと聞いたの?」
エラーは逆に俺に質問をぶつけてきた。
自分が質問をぶつけることばかり考えて、俺がエラーに疑問をぶつけられるだろうことを考えてなかった。
馬鹿正直に答えるのもどうだかと思うのだが、つける嘘も用意していないので正直に答えるしかない。
「いや、お前が頻繁に深淵に出入りして、契約してるぽいのに、なんで俺には契約するなていったのか。気になったからな。契約するとなんかヤバいことでもあるのか?」
黙々と『テンペスト』の実習を続けるエラーに問いかける。
目の前に立つ、大男のハリボテからはエラーがどんな顔をしているのか読み取れない。
言葉を投げかけているときに相手の表情が分からないというのはそこそこ不安をあおられる。
たとえ、怒っていようが、悲しんでいようがわからないのだからフォローの入れようがないのだ。
不安に駆られながら、大男を見つめる
「やばいことねえ。今のところはないけど。この先はどうなるかわからないわね。深淵との契約て言うのはわからないことが多いからね。そんなよくわからないもの、あんたに勧められるわけないでしょ」
ということは何かで苦しんでいるから俺に契約しない方がいいといったわけじゃなく、未知数でどういうリスクがあるか、わからないから言ったのか。
魔王が何かしら悪巧みをしていないことが分かって、一安心だがどうしてエラーはそういうリスクまでわかっていたのに深淵なんかと契約したのか。
「じゃあ、どうしてお前はそんなよくわからない契約を結んだんだ?」
「魔力増幅器を作るのに、練気の構造について詳しく知る必要があったのよ。だから、デュラハンをゲットするために、シェイムさんと交渉したら、深淵との契約を条件にくれるて言ったから結んだのよ」
エラーの話を聞くと、なんだかまた魔王の怪しさが増してきた。
師匠が言った通り、危害を加えていないようだが、絶対に何かこれには裏があるような気がする。




