34 精霊魔法との再会
そこにいたのはボブカットの黒髪に、赤い目をした若い女。該当する人物は一人しかいない。
俺に最初に魔法を教えた師匠だ。
彼女の赤いまなざしは訝し気な目で俺を見つめてくる。
「一応確認しますけど、師匠ですよね。師匠こそ、なんでこんなところにいるんですか?魔法を愛して3,000里を決行していたんじゃないんですか?」
師弟の感動の再開だというのに、師匠が訳の分からない手紙を残して消えたことを根に持っていたので皮肉を言ってしまった。
それを聞いた師匠はムッツリとした顔で、俺をねめつけてくる。
「しょうがないだろ。追っ手から逃れるためだったんだから。それと昔の口調のことについては話すな! あの時は極度のコミュニケーション不足と神父の口調がうつっていたからおぞましいことになっていただけなんだ」
師匠が一言以上しゃべるところを初めて見た。どうやら離れている何年かの間に師匠のコミュ力は格段に上がったようだ。
一体俺と離れた後に何があったというのだろうか。
「リード、あんたの師匠。学校に入ったらやばくない? 契約していないなら、シェイムさんがすっ飛んでくるわよ」
エラーが少し上ずった声で、俺が失念していた重要なことを言う。
……そういえば、契約していないものは死ぬとか言ってたな。
ここで師匠と魔王が殺し合うことになるということか? 最悪すぎる。
師匠を早くここの敷地から出さねばならない。
「師匠――」
ザッ。
俺の言葉を遮るように、後ろから土を踏みしめる乾いた音が聞えた。
背中が冷えるような感覚に襲われる。
振り向くと透き通るような金髪と、青い瞳があった。
そこにいたのは想像していた魔王――ではなく、学園長だった。
「最近神隠しが起こっていると聞いていましたが……。プラム、やはり、あなたですか。一体ここになんの用があって来たのです?」
学園長はまるで、昔から知っているような口調で師匠に話しかける。
どうやら学園長と師匠は初対面ではないようだ。
しかも学園長の口振りからすると、関係は浅くないように思える。
「いや精霊を探して放浪していたら、弟子の魔力が見えてね。せっかくだし、精霊魔法を皆伝させてあげようと思っただけさ」
師匠は気のなさそうな声で返事をする。
「ということは学園にしばらくの間、逗留するということですね」
学園長はけだるそうな声で師匠に問いかける。
表情もけだるそうで、定時近くに仕事を振られたOLのような顔をしていた。
「そうだね。ここには精霊魔法を教える間いるよ」
学園長は師匠の答えを聞くと溜息を吐いて、やれやれと言った感じで手のひらを天に向ける。
俗ぽいことはしないとイメージ的に思っていたがそうでもないらしい。
「プラム、儀式を行う場所と宿舎に案内します。ついてきなさい。……あとエラーさん。これで何度目かわからないですが、大きな爆発を起こすのは控えてください。学園内の生徒に迷惑が掛かります」
そういい置くと学園長と師匠は去っていた。
最後の言葉で、タイミングよく学園長が現れた理由が分かった。爆発について注意しに来たのだ。
というよりも、師匠が来たおかげで精霊魔法を授業とは別に覚えることが決定した。そのせいで神聖術を習得する時間が減ってしまう。
やるとたら、放課後だろう。
そうすると授業の隙間時間しか、習得する暇がない。
神聖術はこの学園にいる間にマスターできる気がしなくなってきた。




