27 企業秘密は大概外部に漏らされる
レッドハウンドと名乗った姉妹と同様に、魔王は綺麗な金髪と、透き通った青い目をしていた。
身長はこの世界では平均くらい――眼ばかりでおよそ170後半――で、体格はゴリゴリという訳ではないがそれなりにがっしりしている。
これまでの2人の魔王とは違い、どこか粗暴さを感じさせるようなものは外見からは感じられない。
どちらかといえば、落ち着きや物静かさを感じる。
「俺の名前はリードといいます。家名は在りません。こちらこそよろしくお願いします」
「あたしの名はトリシュ・プレダー。こちらこそよろしく」
「私の名前はアルテマイヤと申します。リード同様、家名はございません。どうぞお見知りおきを」
魔王からの挨拶を三者三様で返す。
俺は形式的に、トリシュは気軽に、アルテマイヤは慇懃に。
こちらのその様子を見ると魔王は微笑を浮かべた。
俺のずた袋に関してはスルーしている。
どうやら別段気に止めるようなものとは思われていないらしい。半信半疑だったが、効果は上々のようだ。
「自己紹介ありがとうございます。リードさん、トリシュさん、アルテマイヤさん」
「魔王様、私の名前は長いので、略式のアルテで結構でございます」
「そうですか。ではアルテさんと呼ばせてもらいます」
魔王はアルテマイヤの物言いにも穏やかに対応する。アルテマイヤの慇懃無礼な態度に穏やかに対応できる人間ということは見た目通り、好戦的な性格ではなさそうだ。
だが逆に、好戦的でないからといって穏やかな性格だとすると、契約しないものを亡き者にするという情報と矛盾する。
今の情報だけ見れば、穏やかな好青年といった感じだが、前情報と合わせるといまいち捉えどころのない奴になる。
外見だけにとらわれず、気を抜かずに接することにしよう。
「兄さん。こちらの方々はハーレーの紹介でやって来た方々です」
「なるほど。スー、じゃあ、ハーレーと同じ迷宮改築師の人たちか」
ヒースがそう進言すると、魔王―シェイムは考えるように、顎に手をやり、口を開いた。
「お三方は、迷宮のこと自体についてはよく知っていますか?」
迷宮の魔道具や、作り方はし言っているが、自体について知っているかと言われれば怪しい。
シェーンに研修で講座を受けた時などわかっていると思っていながらボロボロだったしな。
「自体について知っているかは微妙ですね」
俺は虚勢を張ってもしょうがないので、素直に答えておく。
「同じく」
「私は存じておりますが、この二人の付き人ですので、お気になさらず」
アルテマイヤは知っていたのは意外だった。
メイドだというのにいろいろと知りすぎだろう。技能だけではなく知識まで兼ね備えていいるのだろうか。
少し気になる。これが終わったら聞いてみようか。
「そうですか。ではお言葉に甘えて迷宮のことについて、お話したいと思います。時系列で言えば、迷宮の起源はこの深淵にあります。世にある迷宮の大半はここから原型をとり派生したものが多いです。まれに一部の自然迷宮のように自然につくられたものもありますが」
ほとんどの迷宮は、深淵から始まったというのは意外だな。
それほどに魔王がいたということか。
「あなたがた、迷宮改築師の仕事場でもある構築迷宮も言わずもがなで、深淵から原型を取っています。あれは深淵をまねて、さらに構成を変えて、敷居を低くしたものなのでお手軽版の深淵ということができるかもしれませんね」
「そんなに簡単に深淵をまねできるものですか? 例えば、無限にモンスターを沸かせることができるとかなかなか想像できないような気がしますが」
ふっと疑問に思っていたことを口に出す。いつも迷宮で冒険者を待ち受けるモンスターたちが復活することが不思議でならなかったのだ。
昔、俺が構築師の真似事をやって、土魔法で迷宮もどきを作って、魔物を入れて倒してみても復活しなかったのだ。
形だけはすべてそろっていたはずだから形だけをそのまま真似ても迷宮は完成しなかったことということになる。真似るだけではダメということだ。
シェイムの言葉とは矛盾するし、真似れば迷宮ができるというのは鵜呑みには出来ない。
「ええ、真似れば簡単に作れます。ダンジョンマスターが控えている部屋。その向こうの隠し部屋――最奥にあるダンジョンコアさえ用意できれば」
「ダンジョンコア?」
初めて聞く単語だ。
なんだそれは?
「僕が話して説明するより、実際に見た方が分かりやすいでしょう。ついてきてください」
そういうとシェイムは玉座から立ち上がって、後方に向かって歩を進め、姿を消した。




