24 テストは恐ろしい
学園に入りトリシュが限界なので、食堂で腹ごしらえを済ますと
「では、皆さん。早速ですが、これからどれほど魔法に精通しているかテストさせてもらいます。その実力によって、クラス分けをしますが悪しからず」
クラス分けか……。そういえば、迷宮講習を受ける前にもやったな。
どちらが古いかは知らないが、学園というくらいだから古そうだし、迷宮講習が学園のものをパクったのかもしれない。
「テストでは、学園の生徒と腕試しをしてもらうのでグランドに出ます。皆さんついてきてください」
―|―|―
野球場くらいのスペースはありそうなグランドに到着した。
グランドには同じようなローブを着た人間が等間隔に一人づつ、こちらと同じ計三人が並んで立っていた。
これからテストだが、病院で注射を受けるときくらいの嫌さがある。あの痛くないとわかっていても、めちゃくちゃ痛いんじゃないかとあらぬ心配をしてドキマギする嫌さだ。
つまり奴らを見て、俺はビビている。
しかも、俺の直線状にいるやつは他の2人に比べて図体が大きい。
魔法(物理)を普通に使ってきそうだ。
トリシュのところは一番小柄だ。奴に場所を交換してもらおう。
「トリシュ、悪い。場所交換しようぜ」
「やだ」
すげなく断られた。
だが、ここで引き下がったらだめだ。たまにはガッツを見せないと。
「なんでだよ。断る理由なんかないだろ……」
「理由はあるよ。一度対峙した戦士を前に、手合わせもせず、相手を変えるなんて失礼の極み。それが理由」
これはだめだ。トリシュの意思は固い。
それを理解すると名前だけのガッツは消え失せた。
期待はしてないが、アルテマイヤの方を見る。
「対戦前から無様をさらして、哀れなトカゲですね、リード」
こちらを見て、冷笑を浮かべている。やはりだめだ。
仕方ないので、ガタイのいい対戦相手の正面に立つ。
まあ、契約で生徒に害を加えるのは禁止とあったし、よほどのことはないか。
そうやって心を落ち着けていると、
「では、腕試しを始めます。両者構えてください。……はじめ!」
火ぶたが落とされてしまった。
始まると同時に目の前のガタイのいい男は、身じろぎせずに三級火魔法を放ってきた。
火の舌が俺の眼前に迫って来る。
『リードさん。火は水、水は土、土は風、風は火のように魔法を展開すれば、レジスト――魔法を防御できすので覚えておいてください』
その瞬間、走馬燈が頭に流れ、先生の言葉がリピートする。
言葉に従い三級水魔法でレジストする。
レジストしてからあることに気づく。
これ、契約のルール適応されてない……。余裕で害を加えられるな。
こちらの焦燥などお構いなしに、二級風魔法『ストーム』を放ってくる。
あわてて二級土魔法『アースガード』でレジストする。
あ、やばい。対応をしくじった。
かまいたちは土壁を越えてくるかと思ったが、『アースガード』は大きく削れながらもなんとか持った。
これはもしからしたら、こいつのゴリ押しでしのげるんじゃなかろうか。
レジストし終わっても、魔力の供給は立たず『アースガード』を展開したままにする。
だがこれでは防戦一方だ。レジストすることしかできていない。
このままではじり貧だ。『アースガード』でしのいでいる間に何か手を考えねば。
そう思って、『アースガード』に背を預けて考えていると真横を何かが通り過ぎていた。
飛んでいた方を見ると、燃える土塊が地面と平行に飛んでいている。
頼みの『アースガード』を見ると、見事に大穴が開いていた。
大穴から向こうを覗き見ると、地面から土を舞い上げ、燃え滾る隕石のようなものが空中を移動していた。
ヤバい。
こちらが出せる一番硬い盾である『アースガード』を簡単に突破するあれがまたくる。
直撃したら、見るもおぞましいことになるだろう。
どうする?
『アースガード』はあれの突破力の前には紙同然。他の魔法もおそらくレジストは出来ない。
もうどうしょうもない。賭けに出よう。
俺は半分瓦解した『アースガード』の中から飛び出した。
それと同時に三級空魔法『フォース』を発動する。
おそらく、あれは大砲みたいなもので、狙いはつけにくいだろう。
蛇行して、進路を悟られないように、走って行けば当たらないはずだ。当てられたとしても全属性レジストの『フォース』を纏っているのである程度軽減できるはず。
それで、無事奴の近くまで近づいたら、『フォース』を纏ったままタックルして鎮圧だ。
もう俺にとれるのはそれしかない。
隕石を生成している奴に向けて蛇行しながら、接近していく。
こちらの行動に奴は慌てたのか、隕石を射出して外した。
作戦通りだ。このままいけるか?
そう思うと奴の前に竜巻が出現した。
隕石以外にも他にも魔法使えるに決まってますよね……。
俺に避ける手段はない。竜巻の中に吸い込まれ行く。
風の壁にぶち当たり、もうだめだと思ったが、身体には何も起きていなかった。
『フォース』でレジストできたようだ。僥倖だ。
そのままの勢いで竜巻を越え、丸腰の奴に迫った。
奴に向けて勢いを殺さず、腹にタックルを掛ける。
奴の腹はそのまま体から、すっぽ抜けて飛んでいた。
俺はその光景に硬直して、『フォース』を解いた。
マジかよ、タックルで人殺しちまったよ……。
サーと体から血が引いていく感覚に襲われ、すっぱ抜けた腹から目が離せず、凝視する。
すると、腹がむくりと立ち上がった。
腹から女の子の顔が出ている。
腹だと思っていたのは小さな女の子だった。
ということはあそこに立っている腹が抜けた体は張りぼて……。
「わたくしに……こんな屈辱を…!」
そこまで理解が及ぶと、俺の視界は暗転した。




