幕間① え!?こんな俺でも転生できる異世界があるんですか!!
転生する前の前日譚です。
――忙しい時と、暇な時の落差が激しすぎる……。
俺――田中亮介、三十路は天井を眺めながら、そんなことを思った。
いつも忙しなく寝る間を惜しんで働いているというのに、休日は驚くほどすることがない。
正確には家事などやることがあるが天下の休日にそんなことはしたくもないし、常日頃しているので間に合っている。
「アー、なんもすることが思いつかねえ。想像力貧困かよ。もしかして、ワーカーホリックてやつで、仕事以外の事考えられなくなってるのか……」
一人ごちりながら、そう考えると妙にリアリティがあって、背筋が震える。
自覚症状があるからだ。
最近、仕事自体をやるのは嫌なのにやらない日はなんだか、落ち着かないし、気づくと仕事のことを考えていることが多い。
「俺はワーカーホリック?」
ごくりっ……。
余りに残酷な確信に迫り、唾を飲み込む。
「ダメだ。家の中にいても悪い方に物事を考えるだけだ。外に出よう」
俺はとりあえず、すべてをアパートの中にいるせいにして外に出ることにした。
「暑ぅ……」
外に出ると満点笑顔の太陽が、お出迎えしてくれた。
余りの陽気に陰者の俺はその場で修祓され、穴倉にリターンしかける。
が、何とか踏みとどまる。
あそこで陰気臭いことを考えるのはしばらくごめんだ。
アパートの近くの道を歩いていると、顔見知り程度の爺さんが草刈り機を動かしていた。
熱心なものだなと思うと。
突然、胸を裂くような信じられない痛みが走った。
焼けたアスファルトの上に倒れる。
ぼやける視界の中でお爺さんが駆け寄って来るのが見えた。
白い天井。白い床。壁はなく、どこまでも白い世界が広がっている。
気づくと果てのない白い世界の中に立っていた。
「なんだここ?」
意味はないとわかっていながらつぶやく。
『ここは世界の間です』
すると、どこからともなく声が返事を返してきた。
その声はひどく中性的で、男声なのか女声なのかもよくわからなかった。
『田中亮介さん、あなたは本来、死ぬはずではなかったのですが、手違いがあって死んでしまいました。ごめんね、テヘペロ☆』
何だこいつ……。
無性にイライラする。
それにいきなり死にましたでは納得できない。
「俺はなんで死んだんだ?」
『近所のお爺さんが、草刈り機ではじいた釘に心臓を刺され、それが原因で死亡しました』
なるほど。ふざけた原因だが確かに胸に痛みが走って、それから意識が遠退いた覚えがある。
一応原因としては納得できる。
だけど、いまいち死んだ実感はわかない。
これで人生終了というのもなんだかなあ。
「手違いだし、なんとかならないの?」
『今からそれを言おうとしていたんです。勝手に先走らないでください』
どうやら、奴のペースを乱してしまったらしい。
ちょっとキレそうだが、奴が何者かわからないので抑える。
『手違いゆえにあなたにはまだ生きる権利がありますが、死んだことであなたの魂の強度がさがったので元の世界で転生するのはできません』
「そ、そんなことてありかよ」
膝にガックシ来る。
そっちのミスなのに、転生できないなんて理不尽すぎる。
おそらく地球は一番イージーそうな世界だし、地球でダメならどの世界もダメだろ。
俺が絶望していることも知らないだろう声は話を続ける。
『申し訳ありませんが、あんたの魂の強度を戻すことはさすがの私にもできません。なのであなたの強度でも耐えられる世界に転生させてもらうことになます』
――それてつまり転生できるてことか?
「え!?こんな俺でも転生できる異世界があるんですかっ!!」
想像を裏切る言葉に、思わず敬語で応えてしまう。
その言葉を聞いた瞬間に俺の体に力が戻って来た。
何より生きれるというだけでもうれしいし、予備知識として異世界では無双できるらしい。
このまま死ぬよりははるかにましだ。
『そんなにうれしいものですか……。ええ、ありますけど、あまり期待しても幻滅しますよ。転生できる世界は3つだけですから』
「生きれるなら3つだけしか候補がなかろうが構わないですよ」
何だか困ったような響きの声に、下手にでて返事を返す。
『はぁ。そうですか。では、3つの世界がどういう世界か説明しましょう。
一つ目の世界は、女神が人々に試練を与え、それを越えたものだけが生存を許される世界。
二つ目の世界は、魔王が乱立し、迷宮がひしめく世界。
三つ目の世界は、ネクロマンサーたちが、永劫に戦い続ける世界。
あなたはどの世界を選びますか?』
何だかテンションの低い声がどれもめちゃくちゃな世界を選択しろという。
うん。確かに少し期待し過ぎた。まともな世界が一つもない。
一つ目は試練の時点で明らかに地雷。二つ目は魔王が多いのが少し心配。
三つ目は戦いに巻き込まれるのはごめんなのでNG。
消去法で行くと、残るのは二つ目だろう。
仕方ない、これにするか。
「じゃあ、二つ目の世界でお願いします」
『二つ目の世界。本当によろしいですね?』
そう聞かれると不安になるが、応える。
「二つ目の世界で」
『では、あんたの望む世界に―』
そして田中亮介は、リードとして二度目の生を受けた。




