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20 悲願達成



 胸糞の悪い幻想は消えた。

 バラバラになって、光に変わるモンスター。

 胸糞の悪い気持ちで周囲を確認すると、アルテマイヤとトリシュが暴れるダウニーを止めにかかっている。

 二人がかりだが、状況は芳しくない。

 アルテマイヤは風魔法で剣をはじこうとしているが、ダウニーと接触を避けるために威力を弱くているのではじくには至らず、奴の膂力が大きいせいか隙さえできない。

 隙ができないので、前衛のトリシュも足踏みをしている。


 加勢の必要がある。

 そう考え、俺はダウニーの足元を二級火魔法『ボム』で爆発させる。

 奴は地面を爆発させても姿勢を崩さなかったが、一瞬剣の動きが止まった。

 それを見逃さず、アルテマイヤが、風魔法で、剣をはじく。

 そしてトリシュが、丸腰になったダウニーの顎に拳を叩き込んだ。

 ダウニーはやっと倒れ、取り押さえることに成功した。


 床に大の字になって倒れているダウニーを見つめる。

 昨日の突貫工事の稽古では克服するには至らなかったようだ。

 唯一の前衛であるトリシュの手をふさいでもしょうがないので、ダウニーを担ぐ。


「リード。あなたも、やっと役立たずから、荷物運びくらいできるようになったんですね」


 アルテミヤが罵倒のような賞賛を投げかけてくる。

 嬉しいような嬉しくないような。

 こいつはもっと普通に褒められないのか。

 トリシュも何か言ってくれないかと、チラと見たが、眼中にないようで進行を開始してしまった。

 おそらく、出来て普通ということなのだろう。

 トリシュは自分にも厳しいが人にも厳しいかもしれない。



 そこから進み、上の階と同じような編成で配置された罠を越えた先、幻術使いのモンスター三体が現れた。

 奴らは幻術が厄介なだけで足はのろく、攻撃能力はほとんど持っていない。そのため、ダウニーが抜けた俺達でも難なく対処できた。


 下の階に移動する階段が見えた。

 この下はボス部屋の可能性もあるので、ダウニーが欠けたまま下に降りることはできない。

 奴が復活するまではしばし休憩だ。

 他の面子がパンを食ったり、腰を下ろしたりして、小休止を入れ始めたのでおれも地面に腰を下ろした。


「あなたは、いったい何があったんですか?性能面はあいも変わらずですが、何だか陰気さが多少改善されたような気がします」


 アルテマイヤがそう尋ねてきた。感の鋭い奴だ。


「そうか?多少心持を変えたからそう見えるかもしれないな」


 昨日あったことを正直に話すのも長くなるし、自分の失敗が知られるのも恥ずかしいので適当な言葉を述べてあしらう。

 十中八九、素直に話せばアルテマイヤはおそらく馬鹿にすることが分かるからだ。


「あなたのへばりつくような陰気さがそれなりになったのはそれだけではないような気がしますけどねえ」


 アルテマイヤが俺に探るように視線で見つめてくる。

 狩人の目だ。おそらくこうやって周りの人間を落としいれて来たのだろう。

 このままでは、乗せられそうな気がしてならない。

 話をそらさなければ。


「それよりも、攻略の方が大事だろ。中級迷宮のボスは攻略できると思うか?」


 やや強引に話をそらしたのでアルテマイヤがジト目で見てくる。

 これは分が悪いなと思っていると


「それは僕も気になりますね」


 俺に加勢するようなそんな言葉が聞えた。

 見るとダウニーが青い顔で体を起こしている。

 おそらくつい先ほど起きたばかりなのだろう。


「そうですね。単純な敵ならおそらく負けることはないでしょうが、先ほど見たく、搦手を使ってくるとキツイかもしれませんね」


 アルテマイヤは口をへの字にしつつも、依頼主が聞いたので質問に答えた。

 ダウニーはその言葉を聞くと立ち上る。


「なるほど。ボスは搦手なしのものに期待したいですね。では行きましょうか。ここでいつまでも休憩しててもしょうがない」


 ダウニーがやや勢いに欠けた声でそう言った。

 その声を皮切りに攻略を再開した。


 階段を降りていくと、部屋の後方に転移陣があった。

 ここは案の定、ボス部屋だったようだ。


 部屋の中央には、両手に刀を持った軽装の騎士がいた。

 軽装なので、上にいた重装備の騎士の連中よりは気にならないが、やはり、西洋鎧に刀はアンバランスな印象がぬぐえない。


「よく、ここまでたどり着いた。吾輩はここのダンジョンマスター、剣舞のグラニット。

 いざ尋常に勝負」



 ダンジョンマスター――グラニットは名乗りを上げ、開戦の合図をした。

 前衛のダウニーとトリシュが構える。

 いかんせん、グラニットは搦手を交えてはこなそうだが、いかにも速そうだ。

 前衛をかく乱して、こちらに来るかもしれない。

 周りを気にしながら、やることにしよう。


 グラニットはまっすぐ、ダウニーに向けて突撃してきた。

 ダウニーはグラニットの剣を止める。だが、止めたのは右の刃だけだった。

 続く左の刃がダウニーを襲う。

 ダウニーはその刃を後方に下がってよけるが、頬を掠って血を流す。

 トリシュが踏み込んだグラニットに拳をたたきつけようとするが、後ろに後退してよけられた。


 ――二刀流。

 かなり厄介な敵かもしれない。

 二本であるため、一度に切りかかれる手数が多い。

 こっちのかなめであるダウニーは一本のため、手数の点で不利になることはぬぐえない。


 魔法で援護したいのだが、いかんせん早すぎる。

 ある程度予測して当てようとしない限りは無理だ。


 おおよそ、奴はこちらのかなめであるダウニーを狙ってくるだろう。

 ダウニーを壊せば、このパーティは瓦解するの見ればわかるはずだ。

 剣士、格闘家一人づづに、魔導士二人の構成。

 攻撃を防ぐタンク役を担えるのは剣士のみ。

 逆に狙わない手がない。


 グラニットは、予想通りまたダウニーに突撃してきた。

 一度肉薄するときに奴の動きが止まる。

 俺は、『ボム』を奴の左足で発動させた。

 奴の体から、煙が上がる。だが不思議なことに二か所から上がっている。

 おそらく、アルテマイヤも同じ魔法を使ったのだろう。

 目の前の化け物は足を爆発させたというのに、まだ直立してしたままだ。


 ダメージのないのかこいつ!?


 そのまま、肉薄したダウニーに追撃をかけようとする。

 トリシュがグラニットに拳を打ち込む。

 奴は後方によけたと思うと大きくぐらついた。

 見ると奴の足は負傷して、半ばからなくなっていた。

 すかさず、トリシュが顎にアッパーを入れ、めった殴りにする。


「見事……」


 グラニットはそう言い残して、光になった。


「ああ、やっと……やっと、終わった」


 ダウニーはそう言って、膝をついて、倒れる。

 大きく負傷でもしていたのかと心配して駆けよると、ちゃんと息をして大きなけがもなかった。

 疲労か何かで倒れたのだろう。


 ダウニーを担いで転移陣に移動する。


 青い空のもとに俺たちは戻って来た。


 悲願達成だ。


 依頼された仕事はやっと終わった。




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