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幕間⑯ 34年ぶりの再戦




 剣戟を何度もいなし、斬りこみを入れ、魔法を放つ。

 それを何度も続け。

 目の前の獣人――魔王ショットは行動を変えた。


 こちらの目の前で魔王は無防備を晒して止まったのだ。


 その予期せぬ好機に動揺し、こちらの剣を振るう手も止まる。

 魔王の左目から青い光が放たれたと思うと、体が動かなくなった。


「もらった!」


 魔王は大きく剣を振り被る。


『魔人の嘶き(ストレンジ・コール)』起動」


 そこでもしもの時のために鎧に仕込んで置いた魔道具を起動する。

 音の暴力がこちらの鼓膜を潰しにかかると同時に魔王の顔が苦悶に染まり、剣を振るう手がブレる。

 剣は鎧の肩部を削るだけに留まった。


 剣が通り過ぎると体の圧迫感がなくなる。

 魔眼の効果時間が終わったのだろう。

 魔王に向けて『ストリーム』を放ちながら、後退する。


 魔王は舌打ちすると屈んでそれを避ける。


「チッ。埒が明かねえ。テメエの魔法が通るように成るとここまで苦戦するとはな……」


 再度舌打ちをすると、魔王は剣を正眼に構える。

 こちらもそれに合わせて剣を中段に構える。

 何度目かわからないにらみ合いに入る。


 あの魔眼は動きを拘束するという強力なものゆえ、おそらく効果を発揮できるのは日に一度程度。

 もう来ないとは言い切れないが、あれに特別注意を割く必要はないだろう。


 そう荒い方針を決めつつも魔王と睨み合ったまま停滞を続ける。

 実力が拮抗する故、簡単に手をだせない。

 お互いどちらに軍配が上がっても不思議ではないのだ。


 どうしてこの魔王はこうまでして、戦うのだろうか?


 いつまでも決着のつかないこの状況のせいかそんな疑問が湧いて来る。

 昔侵攻されたことも引かかっているのかかもしれない。

 不意を生じさせても嫌なので、頭から疑問を締め出そうとするが、意識したせいかさらに強まった。

 一度吐き出すしかないだろう。


「どうして、そこまで戦うんだ?」

「仕合の途中に質問とはずいぶん余裕みてえじゃねえか」


 魔王はこちらの質問にそう答えるとそう煽るように言った。

 応えるはずもないか……。


「……まあいい。理由もわからずに戦うのも気持ちわりいしな」


 応えないとこちらが断じていると魔王は、質問に答える意をつたえてきた。

 この魔王は絶対にこちらの言葉に耳を貸さない部類だと思っていたのに意外だ。


「俺が戦ってる理由は単純だ。家族と俺が亡ぼしたものを復活させるためだ」


 家族そこまでは理解はできたが、復活という単語から理解できなくなる。


「復活とはどういうことだ。なぜこの戦いの果てにそんなものがある?」

「知らねえよ。ラルフがただ負ければ家族が消えて、勝てば亡ぼしたものを再び復活させれるていっただけだからな」


 魔王は簡潔にそう答えた。

 この魔王は少し単純すぎるような気がする。

 魂の契約を破るような魔王をそのまま信用するなんて思考放棄以外の何物でもない。


「信用できない人物にそういわれて、あなたは簡単に信用したっていうのか?」

「何も考えずに信じられるほど、あいつにいい思い出はねえよ。こうやって見ただけだよ」


 魔王はそういうと右目を黄色く発光させた。


「脳なしだと思ってたのか……。ひでえ野郎だ」


 そしてこちらが思っていることをズバリ言い当てた。

 ……心眼も持っているのか。

 両目とも魔眼などめったに見ることはない。戦士としてはかなり恵まれている部類だろう。


「なるほど。それで見ることで少なくともラルフの中では復活が本当であることを確認したのか」

「まあそれ以外にも奴に強力する理由は在るがな。あいつはたまに気抜いてる時に兄貴みてえな目をしやがる。あれはおそらく、根はいい奴だ。いい奴がクソみてえな悪行をする。これがどういうことかわかるだろ?」


 魔王はこちらに質問を投げかけてきた。


「ラルフ自身、そのことで苦しんでいるというのか?」

「チげえよ。自分を犠牲にして、どこぞの誰かのためにそうしてるてことだよ。もう御託はいいだろう。始めッぞ!」


 魔王はこちらの言葉を否定すると正眼に構えた剣をこちらに突き出して来た。

 その剣を上部にそらし、胴に斬りこむ。

 魔王の胴にせまったこちらの剣はあちらの剣に上からたたき落とされる。

 魔王はそこから流れるように逆袈裟を放つ。

 それを妨害するためにあちらの地面を爆発させて態勢を崩す。

 態勢を崩しても逆袈裟は振りぬかれた。

 こちらの胴鎧の前面を大きく摩耗させる。

 切られても気にせずに態勢を崩した魔王に切り込む。

 魔王の胴を浅く削り取る。


 態勢を崩した状態で後方に体重を傾け、避けていたのだろう。

 そのせいで傷は浅くなった。

 拮抗したバランスが少し崩れた。魔王の傷に対してこちらの鎧の損耗の方が大きい。

 だんだんこちらの手を読まれてきたのかもしれない。


 このままではじり貧かもしれない。

 何とかこちらの優位に持っていきたいと思っていたのにこれはまずい。

 魔道具も携帯用のもので一度しかえないというのに、もうほとんど残ってはいない。

 しかも残りのもので目の前の魔王に有効なものは存在しない。


 このままの状況ではまずい。

 どうにかして打破し、自分の優位に持って行かなければ。

 この魔王に僕が勝っていることは何処だろうか。

 魔法が優位だが、それは相手が歴戦ということもあり、読まれておりあまり意味をなしていない。

 他にはなにかないか。自分が勝っているだろうことは。


 魔王の剣戟に押されながら考える。

 すると視界にダンジョンコアが映った。

 ダンジョンコアをみて自分の深淵のことがフラッシュバックする。


 そこで自分がこの魔王に勝っている部分を見つけた。

 ダンジョンコアに向けて、『メテオ』を放つ。

 深淵が崩壊し、足元が揺らぎ始めた。


「そとにでようが変わんねえよ……」


 魔王はこちらに少し呆れたように言う。

 不利を悟って、逃げようとしていると思われているかもしれない。


 逃げなどするわけがない。こちらが絶対的に有利なフィールドに移動するのだから。

 床が崩壊し、空に投げ出される。


 空。

 この空のフィールドならばこちらが優位だ。


 魔王に向けて斬りこんでいく。


 魔王は踏ん張ろうしているようだが、踏ん張れずに態勢を崩す。

 そこに追撃として斬りこみを入れていく。

 魔王の太ももに大きな切り傷ができる。


「ッ! 空でまともにやるとこんなに勝手がちげえのかよ」


 そういうと魔王は地面に向けて急降下し始めた。

 黙って地面に行かせるはずがない。


 追いすがり斬りこもうとすると逆にこちらに切りかかて来た。

 剣でははじいたため後方に下がるがすぐに風魔法の出力を上げて最接近する。

 そして、魔王に切り込むと空中で回転して彼は完全に態勢を崩した。

 魔王が飛んでいた方に回り込み、練気をすべて剣に集中させて叩きつける。


 魔王の体を真っ二つにすると思ったが、剣は切りつけた魔王の後頭部にはじかれた。

 こちらが切りつける地点を予想して練気で強化したようだ。


 くそと思うと、魔王はだらりと空中で体を脱力させた。

 どうやら後頭部に入った振動で気絶したらしい。


 持ち主の意識がなくなったことで、飛ぶ魔道具の効果が消える。

 そのまま魔王は地面に落下していた。


 とどめを刺すために落下地点に移動する。

 魔王は砂ぼこりの中心であおむけになって倒れていた。


 そこに近付いてゆき、剣を振り被る。

 すると彼が言った『家族』という言葉が思い出された。

 振り被ったまま腕が止まってしまう。


 しまった……。

 この魔王にも家族が居て、クライハのような兄妹がいるということを想像してしまった。

 それだけは絶対にしてはいけないのに。


 剣を振り降ろせなくなったので仕方なく魔王の手から剣を奪って、そこらに放り投げると肩にかついだ。

 自分の不手際に呆れて、ため息が出る。


 他の魔王たちがこちらに来ていないか確認するために空を見上げる。

 先ほど空に居た星の数ほど魔王たちは消えている。


 もうリードたちと戦い終わった後なのだろうか?

 それよりも二人とも生きているのだろうか?

 どういった状況か理解できず、疑問が矢継ぎ早に頭の中で放出される。

 一度魔術師の館に帰還して、確認した方がいいか。

 そこでいなければまだ戦場にいるし、いればもう終わったということだ。


「鎧もボロボロで換える必要もあるし、魔王を拘束する必要があるし。どっちもみち戻るしかないか」


 状況確認のために魔術師の館にむいて、歩を進める。





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