106 石碑
始神の墓の中は一本道になっていた。
「照明がないのに明るいし、それに――」
迷宮も一本道であるから、作りが似通っている。
罠がある可能性がある。
俺は慎重に進むことにする。
「――迷宮に似ている。罠があるかもしれん。慎重にいこう」
「罠? 罠が合っても、俺の練気を破って来るようなものはないだろ。たったと進めばいい。心配なら俺の後ろに張り付いとけばいいだろ。そうすれば罠があったとしても俺を盾にできる」
ホットは慎重な俺を差し置いて、そんなことを言ってずんずん進行していく。
その姿を見ているとちょこちょこ進行していくのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
普通に進行することにする。
奴の後ろに張り付こうかと迷ったが、奴が罠を避けたら意味がないことに気づいてやめた。
ホットの予想通りに行っているのかはわからないが、罠は現れず、突き当りで上の階につながっているだろう縦穴にたどり着いた。
風魔法で浮かんで、上階に辿りつくと、また同じような一本道。
「どうせ進んでも縦穴しかないだろ」
ホットはそうごちると天井を剣で突き、破壊した。
とんでもないことをする奴だ……。
こいつは文明の破壊者か、何かだろうか。
まあ俺も遺跡の大きさ的にかなり歩かされるなと思っていたし、満更でもないので文句は言わないが。
壊した天井の上に上がるとやはりまた何もない一本道だった。
それを確認するとガラガラと後ろから音がした。見てみると先ほどホットが壊した天井(ここから見ると床)が元通りに戻っていた。
自動修復をしたようだ。深淵しかそんな機能を持っていないと思ったが、この遺跡にはそれがあるらしい。
深淵と同じ機能を持っていると思うとなんだかここがえらく不気味なところに思えてきた。
太古の魔王の深淵とかいう訳ではないよな……。
そんな不安に駆られていると、また天井を壊す乾いた音が聞えた。
こんな雑に進行してくる奴がいれば、魔王が居たら出張ってくるか……。
不安を否定し、壊した天井から次の階に移動した。
それから天井を三回ほど壊したら、開けた場所に出た。
そこには中央に大きな石碑があるだけで他にはなにもない。
これがラルフの隠したかったものか……。
まだ掘られた文言は見ていないが、目の前の石碑に国を一つ亡ぼすような何かがあるようには思えない。
「やっとか……」
こちらが困惑していると、ホットがうんざりした顔でその石碑に近づいていく。
石碑の文言が見えてきた。だが昔の文字で書かれており、読めない。
解読できる人間をまず探さなければならないと言おうとホットを見る。すると奴は石碑に見入っていた。
こいつどうやら石碑を解読できるらしい。なんでもできすぎだろこいつ。
そんなことを思いながら、石碑を見ていると頭の中に文字のイメージが勝手に入り込んでくる。
『かつて五柱の神、ここにあり
智慧の神 ソフィア
豊穣の神 ノルアクアス
闘争の神 ハウディン
破壊の神 ――』
「隠しているものを見ようとするなど、人は本当にあさましいものよのう」
老人の声のせいで、五柱の神のうち四柱の途中まででイメージが途切れる。
声のした方を振り向くと、土のマナが大量に飛んでいた。
撃退した土精霊が眼の前にいることを理解した。




