103 分裂の対処
全員の目がホットに集中する。
一同の視線を受けたホットは泰然とした態度で口を開いた。
「お前ら、ラルフが始神に関して過敏な反応を取っていることは知っているだろう?」
ホットがそう尋ねると全員頷いた。
その様子を見て俺は驚かされる。
ラルフが始神に過敏になっていることは、自分だけが知っていると思っていたのに全員が知っていたからだ。
俺にとって奴が始神について何か言ったのは学園の時だけだが、知らないだけで、奴は始神について何か公言していたのかもしれない。
「奴がここを亡ぼそうとしたのは、俺はこの土地に始神に類するものがあるせいじゃないかと推測をつけている」
ホットがそういうと全員考えるような顔になり、思案し始めた。
周りの奴らの様子を見るとホットの推測には疑念があるようだ。
「私はこの土地に生まれてずっといましたが、始神に関するものなど見たことがありません。そんなものがあるのですかこの土地に?」
レッドが周りのものを代表するようにホットにそう尋ねた。
「いや、タレコミだから確証はない。ただここに、始神の墓があるという噂を聞いただけだ。だがこれだけの戦力を配置されていたということはこれで説明がつくだろう」
ホットはあっけからんとして、大した根拠がないことを暴露する。
レッドはその言葉を聞いて眉間にしわを寄せ、難色を示しているが反論はしなかった。
おそらく否定する材料が存在しないのだろう。
レッドはこの土地に住んでいるといっても生活圏は決まっていて、すべて網羅しているわけではない。
噂でもあると言われれば、生活圏以外のどこかにあるということは否定できない。
「まあ、あくまで推測だ。そんなに突っ込んで訊いてくれるな」
ホットはやれやれといった感じで手の平を天井に向ける。
おまえが自信満々で言うせいだろう……と思ったが、言葉を飲み込む。
ラルフの動機についても気になるが、それよりも今は国の方針についての方が大事だ。
「動機については今考えてもどうしようもない。方針について話した方がいいだろう」
全員に向けて進言する。
「それもそうだな。だが、一応始神の墓が近くにあった時のことも考慮しといてくれ。国の場所を移す必要が在るかもしれん」
ホットはこちらに同意を示したが、始神の墓について念を押した。やつの中では始神の墓がここにあることは確定事項なのかもしれない。
「コールド殿、肝に銘じさせていただきます。では国の方針について話させてもらう」
レッドはそういうと一度言葉を切る。
レッドはボルフレディ見てから、ホットを見ると口を開いた。
「まず国の王としてしばらくの間、ボルフレディが必要だと俺は考える」
その発言に俺は困惑した。
周りの人間たちも俺と同じく困惑しているようで、その中でも渦中のボルフレディが一番困惑しているようだ。
去れと言っていたレッドがここに残れと言った上、王として在位しろといった。
前と言っていることが180°違うのだ。だれしも困惑は避けられない。
「だが勘違いするな……。俺は貴様を許したわけではない」
レッドが冷たい声でそういうとボルフレディは困惑をさらに強めたようで、レッドを凝視する。
「俺が王として貴様にここに残れと言ったのはこの国のためだ」
レッドはボルフレディを向き直りそう告げ、続ける。
「国民たちはあまりにも貴様に信頼を寄せすぎている。この状態で貴様をここから追い出せば、分裂が更にひどくなり国が崩壊するのは明白だ。だからこの国の分裂が修復されるまで貴様に王として統治させる必要性がある」
レッドはそう言い切ると視線をボルフレディに固定し、返事を待つように睨みつける。
「ああ、ここに残らせてもらう。元々ここの分裂は俺のせいだ。俺に拒否する権利なんかない。すまん、コールド。お前の旅には就いていけそうにない」
ボルフレディはレッドにこの国で王をやる意を伝えると、ホットに断りを入れた。
レッドはそれを聞いて渋い顔をし、ホットは目じりを下げ、少し残念そうな顔をした。




