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96 部下VS上司

12話まで改稿終わりました。よろしければどうぞ。




 シェーンは風魔法を使って、こちらに近づいてくる。

 挑発したのでその行動は当たり前のことだが、その様はひどく恐ろしい。

 あの黒いオーラがいけないのだろう。

 あれはラルフが出したあの黒い奔流を思い出させる。

 奔流と同じで当たれば、即死する可能性もあるのかもしれない。


 背中に冷や汗がにじんできた。

 体が出し惜しみをしている場合ではないと言うように警鐘を鳴らす。

 俺はそれに従い、風のマナを取り去り、奴の風魔法を崩壊させる。


 シェーンは風魔法の浮力を失い落ちていくかと思うと、再度空を駆けのぼり始めた。


「お前は魔法も無効化するのか。しゃらくさい! 風魔法で飛べぬのなら、空気を蹴って飛ぶまでだ!」


 正真正銘の化け物。空気を蹴る様を見てそう理解した。

 普通空気を蹴る芸当などできるはずがないし、間違っても誰もやろうとは考えない。

 だがシェーンにはそれを実行するだけの自信と力があった。

 思考回路も性能も規格外だ。

 俺に奴を止められるのか?


『止まられるのかじゃなくて、止めるんですよ。止められなかったらあなたの悪い想像が現実のものになりますよ』


 スリートの言うとおりだ。

 ここで止める。それ以外に選択肢はない。

 俺のできる全力で奴を迎え撃つ。


「スリート、アシストを頼む」


『受けたまりました。では早速ですが、三重の特一級魔法を使ってみてください。今は土の精霊のせいで土のマナが少ないので、するとしたら風、火、水ですかね』


 スリートの指示通り、ラルフの黒い奔流を止めるときに使った魔法を発動する。

 前のように頭が破裂しそうなほどの痛みに襲われるようなことはない。


 自分を起点に緑、赤、青がないまぜになったような奔流が生じる。

 奔流はシェーンに着弾し、奴を撃ち落とした。


 落ちた地面は土ぼこりを起こし、奴がどうなっているのかわからない。

 死んだということはないだろうが、シェーンがどうなっているのかわからないからハッキリしたことは言えない。


 土ぼこりに目をやっているとその中に黒い点が生じたのが見えた。

 それを見ると俺の腰は恐怖で自然とすくんだ。空中で腰を落としかけると先ほど頭上があったところに黒いオーラを纏った拳が通り過ぎる。

 奴が跳躍してこちらに来たことが分かった。


『急いで距離を取ってください!』


 スリートの切羽詰まった声が頭の中で響く。

 急いで風魔法で逃げようとするが、胸倉をつかまれた。


「ここで逃がすわけないだろう……。先ほどの大口、死をもって償ってもらう」


 シェーンは左手でこちらの胸倉をつかんだまま、黒いオーラを纏った右手を振り被る。

 俺は一縷の望みをかけて、右手に練気を纏わせ奴の影に覆われた体を殴る。

 びっくともしない。

 

 ダメだ、やられる! そう覚悟し目を瞑ったが、しばらくしても何も起きなかった。

 見上げると奴の拳からは黒いオーラが消えていた。

 両手で胸倉をつかむと、顔の影を解いてシェーンは素顔を晒す。

 晒されたその顔はひどく困惑した表情をしている。


「それはリードの殴り方だ……。なぜ、おまえがリードの所作ができる?」


 奴はそう問いかけてきた。





リードのイラストを描いてもらったので活動報告に置いときます。

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