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95 一対一




 黒い人型――シェーンはこちらに拳を振り被るような形で肉薄してくる。

 奴の拳が狙っているだろう胴体に練気をかける。

 予想通り胸を殴られ、衝撃が体を走る。


 鈍い痛みを堪えて、後方に飛ぶ体を風魔法で自分の制御下に戻す。

 浮上するとともに、シェーンの姿を視界に収める。


「ち! 魔法と練気も使えるのか……。ふざけた奴だ。私の父以外にそんな芸当ができる奴がいるとはな」


 奴は影に覆われた顔をこちらに向けて、忌々し気につぶやく。

 それと同時にシェーンの周りに光球が4つ出現した。光球たちは容赦なくこちらに放たれる。

 奴の苛烈そのものような態度を見て、研修時はまだ優しい方だったのだと確信した。


「私は機嫌が悪い。部下を失った上、コールドの奴に会ったのだ……。これ以上私をイラつかせるな」


 俺とトリシュのことを気に病んでくれていたのか……。

 対峙しているというのに奴のやさしさに触れ、少し気が滅入る。

 だが一時の情にほだされて、レッド達を裏切るわけにはいかない。


 今おそらく、奴らは英雄と魔王とともにバルザックと土精霊の対処に当たっているはずだ。

 ここで俺が崩れれば、シェーンまであちらに行く。

 そうすれば崩壊もしくは最悪、全滅もありえる。


 俺がこいつを何とか抑えねばならない。

 一対一での戦闘はこの体では初めてになる。自分でもどれだけいけるかはわからないが、力の差が在ろうと必ず奴はここで抑える。

 そのためにもまず奴のヘイトを、集めなけらばならない。


 マナを操って、こちらに迫る四つの光球を止め、圧縮して握りつぶす。

 奴の攻撃を無力化し、挑発する絶好の機会ができた。


「その程度か……。俺はそれではやれないぞ」


 俺の挑発を聞くとシェーンはまっすぐにこちらに顔を向け、右手に黒いオーラを纏った。

 奴の心情を表すようにオーラは炎のように揺れる。


「ほお、余程死にたいようだな、貴様!」


 シェーンは怒声を飛ばし、こちらの挑発に乗った。





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