093 妖精の儀
世界会議は黒い湖の対応に3日、中2日休んで、妖精の儀の調整に3日かかった。
妖精が慣れ親しむかはその人次第でハズレは僕特製の武器だ。
それでも各国は軍備強化に熱がこもり中々に熱くドロドロした会議になった。
結論。
黒い湖対策は各国が軍の人員を派遣。
冒険者の功績は登録している国のもの。
駐屯地は世界の中心の周囲に40ヵ所ほど妖精の住み家を作るから使う。
これで戦えるでしょう。
世界防衛予算が設立されそこから運営資金は捻出。
その予算は国単位での募金制で、年1回収支を公表。
募金額が国力の表れになるそうで不平等の中の平等を唱うならと公表になった。
妖精の儀は国の規模が大小関わらず順番に2日。
出来れば3日以内に近場に来る。
妖精の儀は塔で行う。
これは僕が不平等は嫌いだといったから各国の順番制。
どの国でも2~3年に1回はチャンスがあるよね。
妖精の儀の流れは我が家の塔に入って石碑に触れる。
ここで武具のブレスレットが付いたらお帰りになる。
付かなかったら塔の奥に進める。
妖精の所まで冒険して辿り着けば妖精が付き添う。
選別用の石碑は今から作るがそこは問題ない。
初期の武具の強さはハズレでもモンスターランク3を討伐できる強さは備わっている。
配下製は配下のランクだ。
冒険させるのは我が家の活用と迎えに来てくれると言う演出のため。
我が家はダンジョンなんだよね、人間が来ないダンジョンは寂しいよ。
装備する人間本人の存在をチマチマ吸って育つ仕様。
修復も一緒で存在を吸って治るから一生ものだ。
人間が強くないと弱い武具のままだよ。
最後に戦争の中止。
世界規模の敵がいるのだから争うなと。
変なところで世界平和が樹立されたよ。
政争は知らん。
「お疲れ様でした。最後までよく付き合いましたね」
本当にね。
エルフウォーリアの色恋事が無ければ初日で帰る予定だったんだけどね。
「私の天使ちゃんも恋に落ちちゃうのかしら?」
いや、金髪も例外じゃないぞ。
もちろん猫ちゃんもね。
「ご主人様は私を捨てられるのですか?」
いや、猫ちゃん一筋。
「なら、一生を共にしますね♪」
「お姉様はブレないですね。私かぁ。想像がつかないわ。当分いいわね」
まぁ可能性だ。
あの黒い湖は数百年単位で消化する代物だからな。
どこかで刺激を欲するんじゃないかな。
「いつか人間に混じって旅するのも良いですね。配置での移動は味気無いですから」
「そうね。旅はいいわ。いつかしたいわね」
いつかか。
今するんじゃ無いのね。
僕も一緒の考えだけどね。
さて、妖精の儀とやらの仕込みをするか。
手伝ってね。
「「はい」」
ダンジョンや塔の内装は変わらない。
壁を伝って我が家の地下5階まで降りたら塔だ。
そこの塔の1階に石碑を作るだけ。
高さ1m位の石柱。
平たくなった石柱の天辺に手を置けば判定されるついでに適正も読む。
判定基準は配下が惚れているか否か。
で、ハズレを用意するのが大変なんだよ。
僕と猫ちゃんと金髪でそれぞれがハズレのブレスレットを作っていく。
存在をちょこっと削って作るブレスレットは持ち主の意思に反映して形状を変える万能武具だ。
スペックはランク3モンスターとも渡り合えると思うが存在を削られるという未知の消耗に慣れるまで時間がかかるだろう。
僕が言っている存在とは魂の強度かな、僕もよく分からない。
僕達が苦戦しているのは品質の統一。
猫ちゃんは器用だ。
これでいこうと決めたサンプルにほぼ忠実に作っている。
しかし丁寧な作業で時間がかかるのが難点。
金髪は逆。
作るのは早いんだよ、流石魔法特化とも言える作業効率。
品質のブレに目を瞑ればあっという間に出来そうだ。
これとこれはやり直しね。
僕は両方だ。
決して不器用だとか魔法の扱いに慣れてないとかではない。
爪の先に彫刻を彫るような小さい作業なんだよ。
強くなりすぎて人間に合わすのが難しい。
愚痴りながらも3人で数を作っていく。
石柱で適正を読むので、猫ちゃんは前衛特化型に、金髪は後衛特化型に、僕は残り。
僕のノルマが半端ない。
予想では6割りちょいが僕のブレスレットを装備することになる。
地道な作業は延々と続く。
日は経ち、妖精の儀を受ける最初の国の若者達が集まっている。
明日が初日だ。
ちなみに今のところ100%がハズレだ。
案外と配下達は面食いだ。
いや、美形と言うのではなくて内面的な面食いだ。
配下達は結構乗り気で、最近は世界をダンジョン視点で観察するのが流行っている。
あの王子は当たりだったと騒いでいるよ。
ゴブリンやゴーストが立派な女の子になったなぁ。
「ご主人様は育ての親になるんですね」
結婚してないし1000に近い大家族だな。
「私と結婚しますか? 尽くしますよ♪」
しようかな。
同姓結婚になるね。
僕の元の身体の一部でも復活してたらなぁ。
「今のご主人様の力だったら出来るんじゃない?」
出来そうだけどしない。
この体もいとおしいから弄りたくないね。
それに普通に子供を授かれる体とは思えないよ。
「ちょっとだけ存在が異質ですよね。どうしたらご主人様との子供を授かれるのでしょうか?」
「ご主人様は女のままよ。お姉様、戻ってきて」
まぁ僕達に寿命というものが存在しないと思うからゆっくりと考えればいいよ。
「へー。不死とは思っていたけど不老なの?」
常に最適に変質してるから不老と言うより生まれ変わってるのかな。
ダンジョンが滅びたら死ぬと思うよ。
そのダンジョンは僕で僕が常に最適になってるから、配下も常に最適になるんだよ。
「望めば成長もするわね。大きくなりたいわ」
本人が望めばそうなるようにしてるよ。
で、やっぱり全員ハズレだったが、普通の武具より強いからな。
浮かれているや。
何日か経った日にエンジェルメリーが旅立った。
塔の最上階で待っていたところに選ばれた人間は立ち入ったのだが、相手は女の子だった。
「私を選んでくれてありがとう」
などと泣いて抱きしめていた。
塔を一緒に出て同郷に祝福されている。
性別は関係ないんだね。
「うぅ。天使ちゃんを、天使ちゃんをよろしくねー!」
と泣きながら捨て台詞を吐いて走り去っていく金髪が居たが僕は気にしない。
妖精の上位、金髪が急に来て声をかけに出たので場は騒然としていたが気にしない。
まあこんな感じで妖精の儀は進んでいった。