092 世界会議での告白
世界の中心に行ってから数十日経った。
今日は妖精の聖地と言われている配下の住み家に作った宮殿で世界会議が行われる。
問題の黒い湖の処理の件だ。
この会議、ほぼトップが顔を揃えるので地上部では世界会議以外でも白熱している。
遠い国はそれなりの重臣を地上部の街に置いているらしくトップの代理として参加だ。
流石に妖精の通り道があっても馬車の移動には限度があるよね。
僕も参加。
なんか最後に入ってきてほしいと言われて順番待ち。
僕は世界の覇者にでもなったのだろうか?
代理参加の国が入り、よく分からない序列で国のトップの人間が入っている。
席順も決まっているようで面倒臭い、付き添いは席の後ろ。
やがて順番が来て僕は席に案内される。
上座と言うか玉座?
建物を作った時の要望ではあったが僕の席だったのか。
目立つよなぁ。
「これより世界会議を執り行う」
司会進行は屑の王様。
僕の助手っぽい扱いになってるけど良いの?
「今回の議題は…」
と、屑の王様が中心に黒い湖の対策が話し合われる。
ある程度の交渉を事前に進めていたようで進行は芝居じみているが「戦力出すぞー」と露骨に僕にアピールするのは止めてくれ。
僕に胡麻を摺っても何も出ないぞ。
『ご主人様、今、宜しいでしょうか?』
猫ちゃんの念話か。
会議は暇だろうと置いてきたんだったな。
どうしたの?
『それが…エルフウォーリアちゃんの一人が行きたいと言っているのです』
うん?
暇だよ、ゴマスリの応酬だよ。
世界の危機を政治利用してる黒い話し合いだよ。
『えっと、いいの? いっちゃうよ?』
おーい。
エルフウォーリアよ。
直接言っても怒らないぞー。
『恥ずかしいそうです。一言で言えば付き添いの王子に一目惚れです』
うん?
マジかー。
遂に色気付いたか。
僕は嬉しいのか寂しいのか分からないよ。
『それで会いたいそうです』
エルフウォーリアよ。
どうしたいんだ?
うん、怒らないよ。
一緒に居たい。
誰にも優しいところを見て好きになったと。
そうか、ちょっと待ってな。
エルフウォーリアは強いからな。
人間に付いていくには、エルフウォーリアも、その王子も、覚悟がいるんだ。
先ずは王子に真意を聞こうな。
会議が白熱している中、僕は軽く手をあげる。
一瞬にして静寂する。
極端だな。
「そこの王子。今の議題に王子自身は何をする?」
「はっ! 軍を率いて先陣を切る覚悟です!」
「そう。ここの妖精達はどう思う?」
「小さき体に一騎当千の強さ。強さに驕りなく純粋に主人への忠誠を尽くす様は尊敬に値します」
「正直に言うとその妖精の一人はお前に着いていきたいって。僕以外の側に居たいと言ってるんだ。正直、僕も困惑してる。会って?」
周囲がざわめく。
まあね一騎当千の強さは否定できないんだよね。
ランク6の強さに装備まで強い、人間が一人で抱える戦力にはちょっとだけ大きいんだよね。
しかも、僕は過保護だ。
もれなく僕がバックにつくと思うだろう。
その辺が問題でもあるんだよね。
「誠に栄誉な申し出ですが失礼ながら辞退します。立場上、自分は妖精様を政治利用する事を否定できません。勝手な言い分になりますがご理解を頂きたいと思います」
僕に跪き言い切った。
エルフウォーリアよ、この王子が死ぬまで帰ってくることを許さない。
尽くせるか?
そうか。
「いい。好きに使って。今をもってエルフウォーリアの一人は王子と共に行動。僕の庇護から外れて王子が主。エルフウォーリア、来て」
王子の前に突然現れた青髪に緑色の瞳の5才児。
小麦色の肌に尖った耳の剣士だ。
跪いて頭を下げている王子の頭に抱きつく。
王子は優しくエルフウォーリアの肩に手を添え体を離す。
「僕は弱いんだ。君を使い、君を頼ってしまう。今からでも主人の元に帰ってほしい」
エルフウォーリアは笑っている。
うん、娘が旅立つのか、寂しいな。
王子は苦い顔をしたあとに微笑む。
「僕は弱いんだ。君が誇れる男に今からなるから、少しだけ時間をくれないか?」
笑って頷くエルフウォーリア。
そっか、言語での意思疏通が出来ないな。
失敗。
どうやろう?
僕の覚醒で配下の存在を吸っていたよな。
それ出来るかなっと出来そうだ。
2人の前に配置で移動。
エルフウォーリアよ、存在の3割を使うぞ。
王子の右腕にブレスレットを填める、僕の魔剣をベースにした武具だ。
「それで意志疎通をしたらいい。そのブレスレットはエルフウォーリアの一部。共に成長して」
「はっ! 生涯を賭けて共に精進することを誓います!」
ブレスレットは望む形になる成長する武具だ。
エルフウォーリアよ、後でゆっくりと教えてやれ。
今は会議中だから王子の横で大人しく待ってな。
会議が終わったら自由だ。
王子と好きにしたら良い。
さて、席に配置で移動。
「会議を続けて」
「お主よ、それじゃ駄目だ。他の者にも機会はないのか?」
言われれば他の配下も運命の人間が居るかもしれないな。
ついでに人間の戦力増強にも協力するか。
「流石に全人類に機会をあげるのは無理。成人して3年以内に塔に挑んで。妖精に見初められし者には妖精は着いていくよ。妖精に見初められなかった者にはその王子のより劣化するが成長を共にする武具をあげる。これで良い?」
「感謝する。して準備は必要か?」
「一気には捌けないから人数制限のルールは任せるけど、僕はどんな理由があろうと差別は嫌い。条件は成人して3年まで。来るものは拒まない。浮浪者でも王子でも奴隷でも。こっちの準備に30日は欲しい。以上かな」
「分かった。新たに議題に挙げよう」
「じゃ、続けて」
会議は明日に持ち越しになった。
元々1日じゃ終わらないよね。
妖精の儀と名をつけられ、ルール作りは追加で黒い湖の後でするそうだ。
長いよ。