089 ランク10へ
さて、下準備。
僕が僕を改造する。
隔離空間に収納したままだけど材料は僕の元の体。
コアさんが時々ちゃんと修復を試みていたけど未だにミンチです。
人形には拘らないよ、僕の因子になれば良いだけ。
今の僕、ダンジョンマスターの体に近づける。
先ずは魔力の質を改造。
方法は簡単、魔力で圧力をかけて変質させる。
ダンジョンマスターである僕の純粋な魔力と、ダンジョンに取り込んで変質したダンジョンにある魔力を注ぐ。
あぁ、ミンチがペーストに…
元の体の魔力の質を多少は残して一応変質。
うん、この体、人間の体にはもう戻れないな、戻る気はないけどね。
問題だ。
ダンジョンマスターの魔力とちょっと変質した人間の魔力じゃ桁が違う。
ペーストくらいの変質じゃ駄目だな、濃度を上げよう。
魂の無い僕の元の体(ペースト状)は配下にはできない。
ここで、魔剣・金髪で技能を使用する。
永続的な精神支配、魂の無い体に通じるか…
んー、ん?
よし! 微々たる手応えあり!
一応僕の体で僕の魂は離れてはいるが存在する。
たから魂の欠片くらいあると思って試してみたら、案外いけた!
擬似的に精神支配状態、配下っぽいと言えるんじゃないかな?
ここまで来たら出来ることはする!
配下っぽいから出来るはず!
覚醒!
うわ!?
ペーストが蒸発しそうだ!
最適化の圧縮を流用、押さえ込めー。
…押さえすぎた。
僕の元の体が球体になった。
質は…原型はありそう…かな?
うーん、球体に親近感を感じる。
球体で小さくなってるけど僕の元の体だ!
ダンジョンマスタークラスには程遠い力だが凝縮された。
これ以上の改造は無理だろう。
準備完了としよう。
「ご主人様、本番前に休んでください」
え?
そんなに疲れてはないと思うけど。
「ご主人様は10日も玉座で動かずにあれこれしてたのよ。皆、心配するわよ」
おおう。
集中しすぎて気が付かなかった。
でも完成したよ。
「珠…ですか? 綺麗な色です。…貰っても良いですか?」
いや、話の流れで分かってよ。
僕の元の体だよ。
今から使う重要なものだよ。
「知ってました。でも…残念です。ご主人様と思うとどうしても欲しいと思いました」
「お姉さまも病気ですね。私も天使ちゃんが欲しいです」
猫ちゃーん、僕はここにいるよー。
今の僕で満足してねー。
金髪は分身で我慢しとけ!
「ひどい! まぁご主人様と一緒に寝ないなら分身天使ちゃんを抱き枕にする自信はある!」
「ご主人様の抱き枕…良いですね。されるのも良いですが、こちらから抱き枕にと抱きついたことはないですね。金髪ちゃん!」
「良いですよ、お姉さま。協力します」
抱きっ!!
うん? 両手に花? 連行?
両手に抱きつかれると動けないよ。
「「寝ましょう」」
決戦前夜だし、休むか。
…抱きつかれるのも悪くない。
が、動けないな。
金髪は腕に抱き付く程度。
猫ちゃんはがっつりと頭を抱き込むとは。
…猫ちゃんの胸ってやっぱり柔らかいね。
あぁ、思ってた以上に疲れて…た。
おやすみ。
熟睡したようで気分は良い。
しかし一晩以上寝ていた気がするな。
「あれから3日目の朝ですよ。随分と寝坊です」
えー。
猫ちゃん起こしてくれなかったの?
「金髪ちゃんは昼は様子を見てくれていましたよ。私はずっと一緒に寝ていました」
変わったことは無いよね。
「そうですね。皆、気合いは十分ですよ」
そうか。
じゃ、始めようか。
コアさんもいいよね?
『了解。貯蔵魔力の流れは調整してあります。配下が管理可能な環境です』
ふむ、見ればダミーコアがそれぞれに配られている。
準備は万端なんだね。
行こうか。
『了解』
塔の最上階に設置されたベッドに横になる。
玉座には猫ちゃん、金髪は僕の側に玉座を模した椅子に座っている。
制御の中心は猫ちゃんで補佐がエンシェントエルフ。
魔力制御の中心は金髪で補佐がエンジェルドミニオン。
全ての配下もそれぞれ役割分担され配置についている。
さて、ランク10になろうか。
覚悟は十分にしたよね。
胸には僕の元の体である玉を握って祈るような姿勢で構える。
これからもとろしく、コアさん。
『否定。優先順位はマスターの意思です。肯定。そうあることを望んでいます』
頑固め。
やがて魔力が膨れ上がっていくのを感じつつ意識を手放す。
無理しないで欲しいけど、皆は頑張っちゃうな。
よろしく。