078 屑の王様を見送った帰りに驚異に目を付けられた
屑の王様が妖精の通り道の端っこに着いた。
ちょうど昼休憩をしてるのでお邪魔する。
事前に半日くらいで着く広場が終点と言っておいた。
入口の昇降床の説明をしなきゃいけないからね。
「長旅お疲れさま? 言うにはちょっと早いか。感想ある?」
「ふむ。光る樹が大木になったのは良いな」
あれから1km毎に犯罪奴隷ごっこしながら植えたからね。
「それから大樹を通過すると風が吹いてくれるのは良いな。気分がかなり違うぞ」
おぉ、高評価。
あれは犯罪奴隷ごっこの悪戯だったんだけどね。
トラップの暴風を、風を弱くする代わりに長時間吹く設定に変更したんだ。
大樹を通り過ぎると、大樹の上の天井から道の両方向に風が吹く。
金髪が「イヤらしい風ですね」と喜んでた。
猫ちゃんなんて顔を染めてたけど、風に為すがままだったよ。
良い光景だった。
「人が通るようになればそれぞれの思うことがあるだろうが、外の街道とは、危険も天候も悪路も気にしないで良い道だ」
概ね問題は無しだね。
さて、昼食も終わったようだし、昇降床の説明をしよう。
「この色の違う床に乗って、誰かが中央の魔方陣で操作。念じれば上昇が出来る。地上では下降。上昇と下降はそれぞれ20分は休ませないと動かない」
「早速試すか。おい、操作しろ」
馬車やお供が全員乗って、お供の1人が操作に向かう。
起動すると対の…この場合は地上の生命体はゆっくりと弾き出される。
起動に支障がなくなると穴が開いて昇降床が上がっていく。
地上は魔方陣があるだけで、魔方陣に乗れば昇降床が地面に浮き出てくる。
操作は上昇と同じで念じれば動く。
理解できないけど、穴が閉じたら元の地表の状態に戻る。
「ふむ。これは便利だ。重い荷物を積んでいても坂で躓く心配がない。特に貴様の鉄は重いからな」
そう、妖精の通り道の端っこに着いたから、見本に鉄の粉末を乗せれるだけ乗せた。
荷運び用ではないから、そこまで積んでない。
下級のアイテム袋に入れたけど、あれは重さ軽減が甘いからね。
「街はあっち。街道はそこ。もう迷わないね」
「…分かった。確かに我が領地じゃ。行者が見覚えあるといっておる。本当に繋がっていたな。いや疑って…流石にあの距離じゃ、疑心暗鬼になったわ」
「それでも進んできた。信用は獲得できた?」
「貴様を疑うほど、もう愚かではない。殺すならもっと簡単だ。「結果は外で見てる」と言っておっただろう。その言葉を信じるぞ。わしの足掻きを見ておれ」
そこまで考えていったわけじゃないけどね。
鉱山で会ったのも偶然だし、まぁ、見てても良いかな。
「うん、見てる。ついでにミスリルやら鉄を売ってね。お金は預けとく。使うことあまり無いから」
「ふむ。見返りは?」
「見返り…かぁ。妖精の通り道があるし鉄は取りに来て。それに関する事は一切しないから文官だっけ? 計算する人が居ると良いかもね。あと、ご飯はどうにかしてね。…一応、ご飯の調達はこっちでも考えとく」
「見返りではないな。まぁ良い。準備が整えば人材は送ろう」
「よろしく。あと、休憩所の上に光る大樹を1本生やしておくよ。入口が欲しかったら言って。あぁ、国境ってどうなんだろう?」
山の頂上とかに生えても意味無いかも。
まぁ好きに扱って。
「良い目印だ。必要の有無はこちらで精査するから任せろ。では行く」
「またね」
ふぅ、やっと追い出せた。
である、また人間が来るだろうな。
人間が自由にして良い空間をちゃんと隔離しよう。
猫ちゃん、金髪、植樹しながら帰るよ。
今回は普通だよ、休憩所の地上に一本だし。
安心して。
「…はい。残念です」
「お姉さま? 普通が一番。普通は良いですよ」
まぁ、環境把握で共鳴して索敵して。
人間の街や村が近いと、屑の王様は便利だろうからね。
「はい。張り切って索敵します。金髪ちゃん、全力でするよ!」
「うっ! 分かった。索敵する度に綺麗にして。今のお姉さまの感覚が流れてくると多分…絶対に汚れる。…うぅ、すっごいのがきそうだよぅ」
ちゃんと真面目な金髪で、360度に全力の30匹分身メリーを飛ばすんだよね。
猫ちゃんも全力の気配察知は半径3kmにまで向上してる。
その分、共有する感覚が大きくなり、お互いに通い合う魔力の流れも増大する。
「「ふわぁぁぁぁ!! ひやぁぁぁぁ!!!!」」
と、なる。
金髪、強くなったな。
大きな水溜まりだが、顔もヨダレも凄いことになってるが、気を失ってないぞ。
「いい…からぁ…早くぅ…きれいに…してよぅ」
あと10回あるぞ!
ほれ、最適化に回復だ。
猫ちゃんもする?
「ふぇ? あっ…いえ…だいひょうふ…ですぅ。まりゃまりゃ…イケますぅ」
…報告はこまめに聞こう。
聞ける内に聞いておいた方が良いか…猫ちゃんは回復無しで最後までもつかな?
猫ちゃん、あと10回、がんばれ!
「ひゃい。んっ、ちゅぎ…イキまひょう」
合計で12回ほど、
「「ふわぁぁぁぁ!! ひやぁぁぁぁ!!!!」」
と、喘ぎ声が響いた。
「お姉さま。ちゃんと1回毎に状態回復してくださいよ。段々と…最後は…ご主人様、服を汚してごめんなさい。気絶しちゃった」
いいよ。
最後には出るものも無かったし、そこまで汚れてなかったよ。
で、猫ちゃん、回復いらないの?
「うふふ。余韻って…楽しむ…んっ…為に…あるんですよ。ああん…金髪ちゃんの…とっても…良かったの。あんっ、今日は…温泉は…イケない…ですね。見せ…られな…いぃ」
で、真面目に。
あれ、来るかな?
「山に居た奴ですね。正直来てほしくない。でも来ると思う。最高範囲の先っちょだけど索敵に引っ掛かっただけで見つかった。あそこで2回を索敵したけど、見付けてから近づいてくる早さはとても早かったです」
驚異がいると分かって、同じ場所2度索敵したんだ。
詳しく知りたかったからね。
猫ちゃん、強制的に回復。
「余韻が…残念です。…ふぅ。あれは総力でもギリギリですね。攻めより受けた方がいいでしょう。こちらのダンジョンの地の利を活かすべきです」
原因は山の中腹、妖精の通り道は少し離れてたみたいだが…
知らない敵のダンジョン。
そして、あれはライトニングカイザーを喰ったな。
あの時の激戦を勝ち残ったようだ。
ダンジョン外にいるのは謎で、自由に動いているのも謎だが…
シルバーエイプ、モンスターランク10以上は確定の強敵だ。