073 屑の王様、視察する
さて、視察です。
屑の王様に鉱山の村を見てもらいます。
言っても、半日で終わるな。
「わし等はどうしたら良い? 見せてくれると言うが何を見せるのだ?」
「安全だけどお供も来るの? 歩いても行けるけど遅くなるんじゃない?」
「暇させるのもいかんな。すまんが、速度は合わせてくれ。わしも歩く。馬車…馬は草原の草を食べさせても良いか? 晩に勝手に食っててしまったが…」
コアさん、影響は?
『ありません。草も魔力で生えます。時間が経っているので実体になっています。魔力を多分に含んでいるので栄養豊富です』
なるほど。
あ、水がいるね。
樹の側に小池をえいっ。
「大丈夫。草と水があれば大丈夫かな? 妖精の住み家から出れないから好きに走らせて良いよ」
「助かる」
「じゃ、行こう」
我が家はこのダンジョンに繋がっていないのでドーナツ状だ。
ぐるりと回るが1面2km、夜営地からだと作業場まで4kmちょっとはあるな。
1時間ちょっと歩いて到着。
「ここで加工してる。砕く、選別する、屑をレンガにしてる」
「突っ込みが追い付かないが、2点。全て魔道具か? 屑鉱石をレンガにしてどうする?」
本来の目的の魔力消費は説明要らないな。
欲しいのはレンガで、鉄や貴金属は副産物だからね。
人間の欲するものと、僕の目的が違うだけだよ。
「欲しいのはレンガ、村を作る建材。ミスリルは副産物、僕等は要らない物だよ」
「ミスリルが魔道具の素材だろう? 必要ないのか?」
妖精設定を公開しよう。
「妖精は人間よりモンスターに近い。魔力で生きてる。ミスリルよりモンスター素材の方が相性が良い。ここではミスリルよりゴブリン鉄の方が価値が高い。妖精の住み家以外だとこの魔道具は動かない。ここまで質問は?」
「ふむ。根本的に人間と常識が違うのだな。あの劣化鉄がここではミスリルに勝るのか」
「簡単じゃない。妖精の協力で膨大な魔力で加工し直すの。説明は単純だけど過程が人間には真似できない」
という設定。
「目的は人間生活の模倣。妖精も楽しいものは楽しいの。特に人間の僕の真似が好き。その為の環境が鉱山の村」
「ほう。その為にこの様な事を」
「じゃ、人間の真似をするための作業を見よう」
ロードとメリーが頑張ってる外壁作りの見学。
着手したばかりだからまだ少しだけ、でも規模は大きいから見応えあるかな?
最初はランク8側の外壁だ。
「まだ着手したばかりのようだが、立派で細かいレンガが綺麗だな。しかも早い。妖精の力か」
「そう。この娘達は真面目で、仕事を楽しみとしてしている。とても嬉しい」
別に飽きたらしなくて良いと言っている。
魔力消費の為に苦行はさせたくないからね。
でも、日々楽しんでいる。
「あそこの一角はなんだ?」
反対を指す。
我が家だね。
あそこだけ完成してるからね。
「あそこが中心の大切な妖精の住み家。入れないよ」
ん? 取り巻きがレンガに興味を持った。
で、屑の王様に報告…何?
「レンガは低級の魔道具になっているな。これだけでも売れるぞ」
「お金に興味はない。レンガは圧縮の行程で魔力が含まれるから強度が付与されてる。まだいっぱい使うから売らないよ」
「余った頃で良い。良ければそのまま作ってくれ」
「考えとく」
作業場に戻り、ダンジョン改め妖精の住み家から鉱山に向かう。
道中ではウォーリア達がせっせと運んだり、鉱山に…
一緒が良いらしい、一緒に行こう。
「仲がいいな。愛されておるようだ」
「仲間だしね。運命共同体?」
1時間弱の道のりをゆっくり進む。
歩幅がウォーリアの方が狭いから追い付く。
そのままどんどん合流して幼女まみれだ。
入口をちょっと改装。
普通の階段から緩やかな坂にした。
人間が来たら馬車だろう、でも地上を歩かせるか、その時にまた考えよう。
「なんじゃこれは。坑道がないぞ。手当たり次第の鉱石を掘っておるのか?」
階段上に掘り進めている鉱山の岩肌を見ての感想。
目的が違うからね。
「さっきも言った。目的が違う。ミスリルは副産物。逆にミスリルや鉄があるとレンガが作り辛い」
「そうだったな。価値観が違うのだった。ミスリル鉱山がある場所じゃなくても良かったんじゃないか?」
まぁね。
我が家がここにあって、鉱山がたまたまミスリルを含んでるだけだ。
別にどんな岩山でもよかったけど場所選べないしね。
「妖精の住み家はあそこが中心。一番近いのがここ。ミスリルは関係無い」
「そうか。有意義な視察だった。わしの常識は通じないだろう。今日の午後ともう1日は自由に視察しても良いのか?」
うーん。
帰るのは早い方がいいよね。
ダミーコアのランク2は1つ予備があるな。
「帰りは馬車だよね? 徒歩のお供もいるから真っ直ぐ帰っても時間かかるね。全部繋げるのは明日の昼からになるけど、途中までなら作れるよ。帰りを急ぐ?」
「急ぐと言えば急ぐ。だが、食料も気になるな。近くの町で買わないといけない。直ぐには無理だ」
「食料はあるよ。分けてあげる。じゃ、夜営したところに戻ろう」
我が家から見て鉱山は東、屑の王様の国は西、夜営した妖精の住み家…ダンジョンでいいや…から繋げば良いな。
我が家を背にした西面の中央にランク2のコアを押し込む。
50m幅で80kmの直線の石畳をイメージしてとりあえず仮組。
「出鱈目だな。真っ直ぐの道が出来た…ダンジョンと特徴が似ているが…妖精の住み家だったな」
「妖精は死んだ生き物の魂を凝縮して力を使うことも出来る」
屑の王様は気付いたのかな?
「…そうか。大切に使わせてもらおう」
「これ食料。妖精の住み家は僕はすぐに移動できる。城に着くまで毎朝顔出すから足りなかったら言って。追加するから。直ぐ出る?」
「ふむ。ここまで用意されたら準備出来次第、出発しよう」
「半日のところに夜営できるように草原にしておくね。あぁ、途中でも休憩するか」
出来立てダンジョンを改装。
50m幅あるから、中央10mを草原に、5km毎に小さな泉を設置。
馬に優しくしてあげよう。
先をちょっと短くして、20km地点に400m四方の草原を設置。
左右に程好い大きさの泉を各3ヵ所設置。
これで夜営できるでしょう。
「準備万端。馬にも優しい道の完成。手直しするかもしれないけどね」
「…今更何も言うまい。信じて進もう。世話になった」
しばらくして、準備を終えた屑の王様一行は帰っていった。