072 多分、話し合いで解決した
「静かになったし、話し合おう」
…あれ?
誰も切り出さない。
来た目的はミスリルだっけ?
「ミスリルいるの?」
「「欲しい!」」
うん、敵国同士で仲がいいな。
「屑の王様。この場合の権利はどこ? 一応、僕は屑の王様の冒険者だし国民になるのかな?」
「あぁ、一応な。手続きはどうか知らんが、うちの国民がうちの国土で採掘しているな」
元々、どこの所属とか気にしてないしね。
なら正当化しよう。
「手続きって税を払えば良いの?」
「細かいのは商業ギルドだが、採掘は国を挙げた事業だ。国が許可しないといけないな」
「許可、ちょうだい」
「わかった。細かいことは時間がかかる。だが、王の権限で許可をしておく」
これで正式に国の許可がある採掘だ。
文句は無い…
「「ふざけるな!」」
…仲の良い敵国の代表達からあったけど、受理されたよ。
口約束程度だけどね。
「ふざけないように許可もらった。もう、ふざけてない。お互いに国に帰って、屑の王様が採掘を始めたって言えば良いよ」
そういえば、上納金っているのかな?
「屑の王様、これあげる。上納金? あと、採掘して出たやつ」
アイテム袋にたっぷりのお金とミスリル粉末の小袋をあげる。
お金は単位が高くて使わない硬貨。
ミスリルはまぁ一応は王様だし結果報告?
「むっ!? この額は…上納金にしては多いな。税としても受け取っておこう。ミスリルは鉱山の価値を図るものとして預かろう」
「いや、ミスリルはこれで全部じゃないよ。それはあげる」
あと10袋はある。
岩山の表面でもこの量だし、いっぱい掘れるよ。
使わないしね。
「こちらにも寄越せ」
「それは我が国で活用されるものだ」
要望が横暴だ。
「対価は? 計算面倒だから屑の王様が受付ね」
「また勝手なことを言っておる。しかし、受けよう。我が国でミスリルを取り扱う。先の援助の話と共に交渉を行う故に、こちらから出向こう」
出向くってのは下手の立ち位置じゃないかな?
交渉不利な上に、人手が足りないのに留守はよくないな。
「屑の王様の国で売ったら良いんじゃないの? ミスリルを掘ったら持っていくよ。ちゃんと城で出迎えて受け取ってよ。屑の王様が僕の受付なんだから留守しないでね」
「道中は遠いぞ。どちらかの国を経由して来る場所じゃ。取りに来させる」
道か。
えーっと、あっちか、このくらい離れてると徒歩11日位かな?
450km位と思うけど、どう?
『肯定。呼称「屑の王様の国」の側にあるダミーダンジョンはおおよその距離は合っています。ダミーコアランク2を作りますか?』
流石コアさん、話が分かるね。
計算…50m幅で80kmの直線の石畳、休憩所を40km、6個あれば足りるが…
えっとね、何があるか分からないから10個作っておいて。
『了解』
「道を作るよ」
「「「は?」」」
分かるよ。
人間じゃ不可能だからね。
さて、うちの娘は本日をもって妖精とします。
「妖精の力を使って、地下に道を作るよ。片鱗は見たでしょ? 瞬殺する力に、あの壁の建造も妖精の力だよ」
「「「妖精?」」」
よくハモるね。
「うちの娘達だよ。モンスターとでも思った? 僕は妖精使いだよ。ここに定住するのは妖精の為かな?」
「妖精は空想の産物だ! 戯れ言を抜かすな」
他も同意してる。
まぁ、空想の産物でも良いんだよ。
人間じゃ出来ないことをするんだから。
「信じなくても良いよ。2日後に道は作る。屑の王様はその道で国に帰る。代表の2人はお互いの国に帰ってミスリルは買うしかないですよと伝える。これで良いね」
「「ふざ…」」
この2人、お仲間死んでるのを忘れてないか?
エンペラーとノーライフが首元に刃を向ける。
黙る2人。
そういえば、エンペラーってロングメイスだよね。
斬擊はどうやったら出来たんだろう?
まぁ良いや。
「帰りは独りだけど気を付けて帰ってね。寂しくても僕に刃を向けた自分を恨んでね」
エンペラーとノーライフが、代表2人を突っついて追い出す。
あ、屑の王様は優しいな。
護衛を2人ずつつけてあげてる。
「わしは2日ほど待てば良いのか?」
「だね。視察したら良いよ。家がないからこっちで寝てね」
ランク8の作業場の逆、ランク2のダミーダンジョンの上に誘導。緩やかな坂の入り口を作り、馬車ごと降りる。
だだっ広い草原に野宿してもらう予定。
「夜は暗くなるから…ここで良いかな、えいっ。この樹は夜でも葉がほんのり光るから綺麗だよ。全員降りたね。入り口塞ぐよ。獣すら入ってこないから安心だよ」
「…ダンジョンじゃないのか?」
「妖精の住み家だよ。広すぎるから余ってるけどね。朝に迎えに来るよ」
強引だが良いだろう。
なんか疲れた。
帰って休む。
「おはよう」
「あぁ、おはよう。昨日、わし等を置いて消えなかったか?」
面倒だから配置で移動したんだっけ?
「妖精の住み家は、妖精と妖精使いは自由自在に移動可能。特に問題はないよ」
「…そうか」
あ、思考を放棄した。
まぁ良いや。
視察してもらおう。