067 自己犠牲な愛が重い
「ご主人様。お願いがあります!」
金髪、何?
「私を殺してください!」
猫ちゃん、金髪が、僕を、壊そうとする。
猫ちゃんには、不発だった、洗脳の、時かな?
金髪、僕の、前で、死なない、教育。
「ご主人様。金髪ちゃんは要点が欠けているだけです。ちゃんと理由を聞いて判断しましょう。金髪ちゃん。ご主人様は大切なものを失うのが怖いの。生き返るとしても許容できないの。理由をちゃんと言わないとね」
「はい。罰とお願いです」
罰のお願いじゃなく、罰とお願い?
「お願いは、ご主人様の右腕のブレスレットが羨ましいのです。常に、大切に、肌身離さない猫ちゃんが羨ましいのです」
これ、呪われてる。
外せないだけだよ。
外す気は無いんだけどね。
「それが羨ましいのです。罰は責めて欲しいのです。ご主人様には許されたけど、私が私を許せないのです。だから、罰とお願いです」
…。
んー。
猫ちゃんは、事故だったけど、故意に殺すのはなぁ。
「金髪ちゃん、お願いの方なら私がなんとか出来るかもしれないよ? どう?」
?
「…はい。でも…お姉さまは無事でいられますか?」
「ちょっと私もお願い事が出来たの。金髪ちゃん、よろしくね」
「はい。分かりました。お願いします」
2人とも、意味が分からないよ?
ざくっ!
えっ?
「ご主人様。申し訳ございません。金髪ちゃんを殺してしまいました。有効活用してあげてください」
猫! お前はぁ!!!
「はい。覚悟は出来ております」
『呼称「金髪」の蘇生を開始します。肉体は使用しませんので、時間がかかることをご了承下さい』
コアさんまで…
金髪の死体に左手を添え、最適化。
薄い金色の飾りも何もないブレスレットが左手に。
猫、金髪が生き返るまで、大聖堂に居るぞ。
来い!
「はい」
8日間、猫ちゃんの慟哭だけを聞いて過ごした。
大聖堂で裸で両手を吊るし、魔剣・猫ちゃん、新しく左手に装備した魔剣・金髪を振るう。
両方とも片刃の直刀、白と淡い金色の剣線が猫に吸い込まれ…
「うぐぅ! がっ!」
色気も何もない声が響く。
切り刻まない、峰で殴打を繰り返す。
何度も、何度も、何度も…
慟哭が聞こえなくなったら、少し休む。
猫の息が落ち着いたら、猫を回復して殴る。
何度も、何度も、何度も…
金髪の蘇生が終わった。
裸の金髪、その側に横たわる血濡れの猫。
「ご主人様、装備を戴いても良いですか?」
特に疑問を感じず、ファントムメリーを呼び最適化。
元の装備を取り戻す金髪。
「ありがとうございます。お姉さま、装備は出来ますか?」
力なく頷き、権限を与えてる最適化で装備した。
何故?
「殺してもらいありがとうございます。私も一緒に罪を背負います」
どしゅ!
圧縮された闇の槍が猫の胸を貫く。
そして、金髪が装備を解き、奴隷セットのみになる。
「ご主人様。お姉さまは魔剣の更新を望まれていました。どうぞお使いください」
金髪、お前もか!!!
『呼称「猫ちゃん」の蘇生を開始します。肉体は使用しませんので、時間がかかることをご了承下さい』
コアさんまで…過保護でも限度があるだろうが!
右手を猫の死体に添え、最適化する。
金髪、楽になれると思うなよ!
「はい。よろしくお願いいたします」
猫が復活するまで、金髪の慟哭は続いた。
何度も、何度も、何度も…
猫ちゃんも金髪も生き返った。
でも、3日経っても心が癒えない。
仲間同士で殺し合うなんて、見せられたら心癒えないよね?
「そうですね、ご主人様」
だよね。
金髪もそう思うだろ?
「はい。本当に」
だから、何も手につかず、引きこもっても僕は悪くない。
『ああああああああああ…』
もう暫くは寝て過ごそう、ね。
「分かりましたよ、ご主人様」
「はい…はい。はい? 3日も手足を鎖で縛って、首の鎖はご主人様に繋がってる。逃げようがないじゃないですか」
外したら殺し合う?
「もうしないですよ。大丈夫です。落ち着くまで寝て過ごしましょうね」
「お姉さまも大概ですよね。ご主人様、もうあんなことしませんから、外してください。反省は別の形でも出来ますよ。天使ちゃん達が寂しがってるのではないですか?」
金髪が居なくなる?
猫ちゃんも居なくなる?
「大丈夫です。2人ともずっと一緒ですよ。証拠があるでしょ? 首の鎖は繋がっていなくても、そのブレスレットは何時でも私達を縛っています。ご主人様からは逃げないという証なのですから」
「私も逃げないですよ。ただ、この身動きできない状況がもう辛いんですよ。体を動かしたいです」
『ああああああああああ…』
もう少し、人肌を、大切な人を感じていたいの。
「そうですね。存分に癒えるまでどうぞ」
「うぅ、私が悪いんだし付き合います。裸に鎖って抱き心地良いのですか?」
ちょっと悪い。
でも逃がさない。
安心する。
もう少し落ち着いたら、鎖は解く。
でも一緒。
「そうですね。鎖が解けたらお風呂には入りましょうね。温泉も良いですね。配下さんも心配してますから顔出しましょう」
「良いですね。天使と温泉。ご主人様が落ち着くまで待てますよ。解いても逃げません」
『ああああああああああ…』
うん。
もう少しおやすみ。
鎖は首以外は解いた。
配下と温泉。
うん、心配かけてごめんね。
もう大丈夫だよ。
だから、温泉は広く使おうね。
芋洗い状態で温泉なのか幼女風呂なのか分からないや。
ほんとにごめんね。
「ちょっとこれは…あ、金髪ちゃん!?」
「あぁ、天国はここでした。はぁう」
温泉が鼻血で汚れたから、皆、上がろうか。
『ああああああああああ…』