066 滅びに進む国
一夜明けた昼に城下町を覗きに行く。
町は騒然…呆然…よく分からない空気だ。
海から離れた陸寄りの城から1km位の範囲が、ゴーストタウンになったのだから。
城が比較的市民街と離れ多少は無事、貴族がほぼ全滅、こんな結果だろう。
その状況すら把握できていないだろう住民も多いだろう。
唯一分かっているのは、昨日の昼過ぎの天使の昇天だけだ。
遠くからでも見えたようで、噂が流れてる。
「昨日の今日では思ったほど混乱してませんね。時間の問題だとは思われますが」
「天使…ものすごい噂だ。ごめんなさい」
いいよ。
それより謁見に行こう。
王がどうなってるか分かるかも。
「「意地悪ですね」」
あっちが悪い。
「お、お前ら。今来たのか? こんな時に…」
あ、武具屋で門番してた人の1人だ。
巻き込まれなかったんだね。
良識ある人は残って良いよ。
「これ、招待状。昨日の天使? はお城からですか?」
回収していたんだ。
これないと、城に入れないしね。
「分からんが、誰も居ない…あ、言ってはいけなかった。他言無用で…まあ直に知れるだろう。王との謁見か…」
「もし…もしも…僕のせいだったら…ダンジョンのコアを預けなければ…」
「何か心当たりがあるのか?」
「とても禍々しいコアでしたので、物理的に壊しただけでは駄目だったのかもしれません」
適当、コアって城にあったのかな?
『ありました。飾ってあったようです』
なら…この兵士さんはどんな反応かな?
「強い者が居ると心強い。城の状況確認でも何か手掛かりが…ちょっと待ってろ」
駆けていく兵士さん。
あ、ダンジョンにいた代表っぽい人だ。
「お前らよく来れたな。街で噂くらい耳にしただろう。手柄をとったバカな国だぞ。天罰は…酷いものだったようだ。そうだった、謁見だな。王に直接会いに行こう。手練れが来たと、頭下げろって言ってやる」
ん? 王に進言できる立場なのかな?
まぁ良いや。
「お願いします」
代表っぽい人が話を通して会えることになった。
結構、楽に会えたな。
まぁ、先制で釘刺そう。
「入っていいぞ」
入室、一番に一言。
「黙れ!」
「おい、仮にも王だぞ。その口は…」
「下がっておれ。身内抜きで謝罪しよう」
「…了解しました。失礼します」
代表っぽい人が出てった。
「これはお前の仕業か?」
「さぁ。で、裸の王はどんな気分?」
「この国は終わるだろう。民はまだいるが纏める組織が無い。何とかなったとしても、それはもう別の国だ。その時にはわしは王ではないだろう」
「数の暴力。失っても猛威を振るうね。ダンジョン討伐者にお礼ちょうだい」
「お前の仕業じゃろ? もう何もない。何が欲しい?」
「こんな規模の事は出来ないよ。たまたま何かの天変地異に襲われたんじゃない? あと、ダンジョンの呪いとか? 招待状に討伐のお礼が貰えるって書いてあるよ。用意してないの?」
「惚けるなら上手にしてくれ。もう敵対する気も起きん。これで良いか? 国は無くなるだろうから約束しても意味が無いな」
「最後まで頑張ってね。あ、戦争って何処でやってるの?」
「ん? 知らんのか? うちの友好国の隣国とその南にある国じゃ。国境に鉱山が見つかって衝突しておる。ミスリルは貴重じゃからの。これで良いか?」
「いいよ。じゃあね」
「もう会うことはないな。わしの死を遠くで笑うと良い」
帰ろっと。
人の少ない城を静かに出る。
門番すら居ないくらいに人がいない。
さっきは運良く立っていたな。
何故だろう?
食事処でご飯を食べる。
海産物を味わっておこう。
「美味しいですね。海にダンジョン作ったらお魚捕れますかね?」
その為だけに水没ダンジョンは作らないよ。
運営できないし。
「食事は幸せですね。食べなくて良いのに食べる贅沢、幸せだよー」
金髪はやっぱり食事は嬉しいようだな。
欲求はちゃんとあって、枯れることはない。
金髪から分かった事だ、人でいられる情報だ。
「哲学はいいのでは? 美味しいのは幸せ。で、良いじゃないですか」
「ご主人様、単純な方がいい時ありますよ」
だな。
旨い。
それでいいな。
「「はい」」
久々の我が家を見つめる。
うん、中じゃ色々としてたけど、外は調べてないや。
推測すると、あんまり遠くに転生の転移はしない。
なら、あの屑の王の言ってた戦争は僕が潰した戦争だろう。
近くにミスリルがあるのか。
ミスリルって、高価なのは知ってるけど良い物?
『魔力と親和性の高い金属です。推測。人間の魔道具は多少でもミスリルが使われていると思います』
規格外の冒険者が持っていた武器を出す。
ふむ、確かに魔力の通りは良い。
僕の作ったのと同等? でも、なにか違う。
『人間とモンスターとの魔力の質の差ではないでしょうか? マスターはダンジョンマスター、モンスターを統べる者です。モンスター寄りの魔力の質なのではと推測します』
お手製が一番って事かな。
しっかし、隔離空間の金属量が半端無いな。
なにかに使えないかな?
『隔離空間には余裕があります。気にしなくても良いと思われます』
そう?
いつか面白いことに使おう。
じゃ、明日からダンジョン周りを探検しよう。