037 他所様のダンジョン
本日2回目の投稿です。
『告。呼称「他所様のダンジョン」の範囲内になります。侵食攻撃を行いますか?』
今、街道を徒歩半日ちょい進んで、他所様のダンジョン方向の道に曲がろうとした辺りだ。
話では曲がったら10分位らしい。
広さは我がダンジョンと同規模か?
で、侵食攻撃って何?
『範囲外にダミーダンジョンを作り、呼称「他所様のダンジョン」方向に拡張を試み、浸透するように侵食します。複数階層ある場合は地下1階を全て侵食したら次の階へと侵食します』
侵食速度も気になるね。
あと、利点と結果は?
『呼称「他所様のダンジョン」の管理権限を得ることが出来ます。しかし、管理権限の取得は完全に侵食しないと無理です。侵食した範囲内であれば、侵食中であっても転生や配下の魂の回収でき蘇生可能です。侵食速度は攻撃するダミーダンジョンに比例します』
簡単にまとめると、
ダミーダンジョンが増える。
命の危険を回避できる。
ってところかな。
安全にダンジョンに潜れるなら良いことだよね。
元々、他所様のダンジョン側にダミーダンジョンを作ろうと考えてた。
歩くの面倒。
他所様のダンジョンの規模が分からないから、コアさんに範囲を教えてもらいつつ一回り。
綺麗な円だった。
街道側は夜営地が小さな村になってたので、街道の反対に6ヵ所作った。
この辺りで日が暮れたので今日は終了。
普通に夕食を食べて、普通にお風呂入って、普通に寝た。
猫ちゃんと一緒に。
翌朝、夜営地にお邪魔する。
情報収集だ。
「10階層らしいぞ。3階まではランク2のモンスターだから人が多いな。それ以降は、強いのが混ざってくる。用心しろよ」
と、何人目かの声かけで漸くちゃんとした会話が出来た。
結構殺伐としてる。
低階層で獲物の取り合いだろうと、さっきの情報から推測する。
ランク2までならと、コアさんも猫ちゃんも了解してくれたので突入。
んー、狩りにならないな。
人が多すぎる。
ダンジョン以外の狩り場の方が効率良いんじゃないか?
このダンジョン、地下1~3階は障害物のない草原だった。
中央に直通で螺旋階段が3階まで続いてるから、確認は楽だった。
ただただ広い。
モンスターランク1~2なんだけど、まず危険はないだろう。
だって見える範囲に人がいて、助けを叫べば届く距離。
このダンジョン、何がしたいんだろう?
僕のダンジョンじゃ採用しない。
聞けるなら、何故こうなった? と、聞きたいよ。
出て、もう一度夜営地を見渡す。
露店が何件かあるが、冒険者が入ってく小屋があった。
早速向かう。
「ダンジョン専用カードを持たないと儲けにならないよ。ほら、冒険者カードの方を出しな。発行するから」
この国が氾濫を押さえるために補助金を出してるそうだ。
このダンジョン専用カードはダンジョン内でのみ討伐が記録されるらしい。
で、冒険者は補助金目当てで狩りをしてるんだと、ギルドの出張所のおばちゃんが言ってた。
んー、思ってたのと違うな。
我が家の配下の武具の様に、お宝目当てじゃないんだな。
他所様は、我が家とは違う、分かった。
侵食が進んでいるが、侵食されたからといって他所様のダンジョンのモンスターが配下になるわけではない。
つまりは、他所様のダンジョンは端から見たら変化無し。
変化に気付いてるのは僕等と、居るか分からない他所様のダンジョンマスター。
ゆっくり攻略しよう。
ダミーダンジョンの地上部は森だったので範囲全てモンスター成分のある樹にして、侵食用の魔力はそこから補給。
って事で、侵食中のダミーダンジョンから我が家へ。
戦いに行ったのに、昼には帰ってくるって、不完全燃焼だ。
昼飯を食ってのんびり…
不完全燃焼で、弄って欲しそうな猫ちゃんが出来上がってた。
配下との模擬戦を促すも、そんな気分じゃない様子。
なら、僕と一緒に、僕の練習に付き合ってもらおう。
猫ちゃん直伝のご奉仕マッサージを、僕が猫ちゃんに施す。
ちゃんとどこが良く出来てて、どこが悪いかを、猫ちゃんに口頭で教えてもらう。
猫ちゃんが気に入ったマッサージを教えてくれたので、念入りに、じっくりと、執拗に、猫ちゃんが気に入ったマッサージの練習。
マッサージ中には、ちゃんと、しっかり、大きな声で、出来映えと感想を言ってもらう。
素直な感想と、ちゃんと出来ていると教えてもらえて、成長の実感を味わった僕。
顔を真っ赤にして倒れてるけど、満足な結果だったようで、良い顔の猫ちゃん。
お互い満足のいく練習だった。
今日も良く寝れそうだ。
翌朝、倍速で町に帰り、その足で冒険者ギルドに行く。
受付の痩せたおじさんが対応してくれる。
「どうでした? ダンジョンは勝手が違うから最初は戸惑うと思いますが、安定収入はありますよ」
「はい。腰を落ち着けてダンジョンには取り組もうと思いますので、例の物件を見たいと思います」
「賃貸も購入も可能ですので、気に入ったら検討してください。申し訳ないのですが、受付から離れられないので、これ鍵です。場所はこの通りをあちらに行った所で、まだ武具屋の看板が残ってますから分かりやすいですよ。好きに見てください」
「ありがとうございます。猫ちゃん、行こ」
小ぢんまりしてるが良い店だ。
裏には庭があり素振りなら問題ないだろう。
ダンジョンの侵食が進むまでは、武器を作って冒険者へ貢献しよう。
中級への評価点になると思うし…なるよね?
戻って、購入の旨と逆依頼の中級への評価になるかを聞く。
購入はすんなりと通ったが、一応、一年賃貸でそれ以降は購入となった。
賃貸契約書を書きながら話は進める。
「良い武器なら攻略に間接的に貢献していると見なします。大丈夫です。ちなみにどのような武器を?」
以前作った下級ゴブリン鉄(強化ゴブリン鉄1:普通のゴブリン鉄3)の片手剣を見せる。
「シンプルな剣ですね…あ、魔道具なのですか? ちなみに値段は?」
逆依頼の書類作成と同時進行で色々説明していく。
今回は3日で3人、振り込みはギルド経由、9時に受け渡しと次の人の受付。
中級に必要な信頼度の目安は10回だそうで、30日はかかる予定。
ダンジョンの侵食は時間がかかるのでゆっくりと構える。
以前トラブルが発生したこの逆依頼、短気をおこさなきゃ良いだけだ。
ストレス溜まったら、猫ちゃんで癒すし、ダミーダンジョンも増えて焦ってない。
逆依頼も出し、見本にしてほしいと片手剣を預けて、空き家に戻る。
石造りの資材置き場倉庫にダミーダンジョンを設置。
これで30ヵ所目。
さて、のんびりと他所様のダンジョンを攻略しましょうかね。
『ダンジョンランクが6に上がりました』
次の投稿は明日の06:00です。