022 白猫な少女
本日1回目の投稿です。
2回目の投稿は18:00予定です。
よろしくお願いいたします。
「貴女の命と魂を頂きます。最後です。貴女をください!」
「…はい…この命と魂をあなた様に捧げます」
コアさん、この娘をダンジョンに入れてモンスター合成と病気の治療をするよ。
『了解』
「おいで」
「…はい」
ボロ屋敷の地下の部屋は入り口が厳重に隠されていた。
過去形なのは壊して開けたから。
台所にある貯蔵庫の奥、死角になる場所に小さく開いている。
僕も少女にも言葉は無く、地下に降りる。
地下にしては広い空間の中央にダンジョンの入り口は開いている。
商人ギルドも見付けられなかったのだろう、書類や隠し財産が眠ってる。
一部はダンジョンの入り口が開いた時に落ちたようで、ダンジョン内で散乱してた。
ダンジョンランクが5になっても入り口は広がっていない。
もう広くならないのか、偶数ランクで広がるのか。
広くなってから考えよう。
螺旋階段を無言で進む2人。
やがて、ダンジョン地下1階に降り立つ。
降りながら地下2階への近道は作っておいた。
歩きで5分もしないうちに地下2階への階段に辿り着く。
大聖堂を突っ切り祭壇にある階段から玉座の間へ降りる。
配下達には会わせていない。
驚かす気はないから、少し遠慮してもらった。
玉座に昇る階段の前で止まる。
「ここで貴女の命と魂を弄らせてもらう」
最適化でシンプルな寝台を作り、毛皮で敷布団と枕を作って敷く。
「横になって」
「…はい。…よろしくお願いします」
この場所が普通じゃないと解っただろうに物怖じしないんだね。
彼女が横になったのを確認して、僕も玉座に座る。
マスターコアは彼女の胸の上、ペンダントはそのまま着けてもらってる。
「楽にしてて良いからね。では始める」
『了解。ダンジョン、配下、共に魔力供給は緊急時以外、維持のみの消費にします。マスターはダミーコアを通じての補助。ほぼすべての機能と魔力をモンスター合成に充てます。モンスター合成を始めます』
「んっ! …」
頑張ってね。
僕も精一杯頑張るからね。
『魔石の定着…異常無し。再構成後の身体…異常無し。魂の定着…異常無し。所要時間158時間。マスター、問題なく終了しました。休まれなくて良いですか?』
朝か。
ダンジョンマスターの体はやっぱり人と違うんだな。
一睡もせずに最後まで手伝うことが出来た。
「いや、この娘が起きるまで待つよ」
『了解。ダンジョンを通常稼働に戻します』
コアさんもお疲れ様。
起きたら、もう一度この少女と向き合おう。
「おはよう」
「おはようございます。あれ? 体がとっても軽いです」
思ったより早く起きたね。
コアさんを信じてない訳じゃ無いけど、雰囲気も変わってないし、大丈夫かな?
「約束通り、先ずは、貴女の命とも言える肉体は貰ったよ。正確には作り替えた。病気はその時に完治させたよ」
「はい。別人に生まれ変わったと言える…いや、本当に別の体になったのですね」
「解る?」
「はい。今までにない体だとは理解できます。説明は…難しいです」
元の肉体の見た目だけど、中身はモンスターだからね。
ライトニングカイザーの未成体の肉体が混じってるし、モンスターの心臓とも言える魔石が体内にある。
違和感は感じるよね。
「次に魂を貰う。受け入れて」
「!? はい。承りました」
配下契約完了。
これでダンジョンに縛られる存在になった。
「心までは奪わない約束だから、命令はしないよ。好きにしていい。そのままダンジョンから出れば勝手に魂は、配下契約は自然と解除されるよ」
「いえ、魂は差し上げます。心ですが…あなた様、いえ、マスターと共に居ることを願います」
んー。
最初は瞳に惚れた、容姿は小汚なかったが何故か惹かれた、心に触れあってみても惚れてる。
僕、恋に落ちてるね。
「…我慢ならん。もういい? …いいよね!? いらっしゃいませー、猫ちゃん! 今日から僕と一緒だよー」
「…あれ? ちょっと!? なぜ抱きつくの? えっ? こっちが素なの?」
「いや、僕は普通だよ。猫ちゃんが悪いんだよ。僕の猫ちゃーん」
あぁ、いい。
抱き心地もいい。
不健康だった体も治療済みで、とっても柔らかい。
「はぁはぁ。すんすん。あぁ、いい香りー。抱き心地も最高だ。もう離さないよー。うぐっ」
「いい加減離れなさい! 威厳はどこ行ったの? こんな壊れてたっけ?」
『否定。正常じゃありません』
コアさん失礼です。
普通ですー。
「あ、マスターコアさん。お礼が遅くなりました。ありがとうございます。ついでにぃ、マスターもぉ、ありがとうぅございます!」
あぁ、引き剥がされてしまった。
出会ってからずっとこの時が来るのを我慢してたのに。
まぁ、時間はいくらでもあるね。
以上が我がダンジョンでした。
案内しながら説明してたら夜になってた。
「はぁ、迷宮なのに一本道なんですね。ゴブリンさんも強そうだし、よく解りませんが、人間が攻略できるものなのですか?」
「まぁ、実際に攻略されたからね。アイツ等は異常でした。で、何で離れるのさぁ。いいじゃん」
「お風呂はのんびり入るもんだって言ってたでしょ! 抱きついてたら落ち着かないじゃないですか」
只今入浴中。
裸のお付き合いですよ!
猫ちゃんの裸体、ご馳走さまです!
「今更ですが、何故に猫ちゃんなんですか?」
「合成素材がとっても強い猫だったからだよ。あとは僕が受けた最初の印象。捨てられた猫みたいだった」
「はぁ、まあいいです。これからもよろしくお願いします」
「はい! よろしくします!」
何故睨むよ、猫ちゃんや。
まぁ実際、ライトニングカイザーの影響は多少ある。
金色の髪はとても薄まりほぼ白髪だ。
それに、コアさんの分析で解ってるんだけど、猫の獣人化が出来るんだよ。
今はまだ無理だけどね。
やっぱり猫ちゃんだね。
さぁ、上がったら一緒に寝るんだよ。
「睡眠必要ないのでは?」
「人間じゃ無くなってるけど、人間を辞めてはないよ。睡眠は大切です」
「部屋余ってますよね? 寝室1つ、ベッドも1つ。今回はお邪魔しますが、用意してくれますよね?」
「…」
猫ちゃん睨んでも可愛いよ。
だから、冷たい目で見ないでー。
目覚めそう!
でも寝る。
一緒に。
おやすみなさい。
「おやすみなさい、マスター」