08 ステータス
ようやく異世界転移にあったと自覚しした主人公
意気揚々とステータスを確認するが、果たしてその結果は。
「なぁブラン。これからどうするんだ。」
「特にない。」
「じゃあ俺と一緒に街まで「行く!」...そ、そうか。」
話し終える前にブランが食い気味で答える。
「でもそんなにすぐ決めていいのか?俺がどんな男かも分からないだろ。もし変な男だったらどうするんだよ。」
「大丈夫。セーヤは良い匂いがするから。」
「良い匂い?俺が?」
自分の匂いを嗅いでみるが、何日も風呂に入っていないため汗臭い。
「あ、うーんとそういう事じゃなくて。私のスキル『感覚強化』と『危険察知』のおかげだよ。スキルを使ってから匂いをかぐと、良い人は良い匂いがするし、危ない人は嫌な臭いがするの。」
「『スキル』ね。もはや疑いようもなくやっぱりそうだよな。コレはあれだろ。異世界転移とかいうやつだよな。」
獣人族、魔族、妖精族といった人間ではない種族。
知らない生き物、たぶん最初に戦った奴のような生き物が魔物なのだろう。
聞いたことや見たこともない文字。
おまけにスキルがあるときたもんだ。
「いやね、薄々勘づいてはいましたよ。でもさ、認めたくないだろう。急に異世界転移するとか普通は考えないじゃんかよ。」
「ねえセーヤ。さっきから言ってるイセカイテンイってなに?転移魔法かなにか?」
「魔法ね。魔法もあるのかこの世界は。」
「ん?何言ってるのセーヤが持ってるランタンだって魔道具でしょ?」
「え、これ魔道具なの?どうやって使うかブラン知ってる?」
「知ってるも何も魔力を注ぐだけだけど...。」
さも当然の如くそう言ってランタンに手を触れると明かりがつく。
「おースゲー。電気や火があるわけでもないのにホントに明かりがついた。ブランは魔法が使えるんだ。」
「私もそこまで子供じゃないんだからこれぐらいはできるもん!」
どうやら怒らせてしまったようだ。
この世界ではランタンに明かりをつけるぐらいはよほどの子供じゃない限り誰でも普通にできるようだ。
「ゴメンな。子ども扱いしたわけじゃないんだけど。それよりスキルだよスキル!スキルってどうやったらわかるんだ?」
「普通にステータスを見ればわかるでしょ、ほら!」
手の平を上にして半透明なウインドウが出てきた。
ブランはまだ怒っているようだ。
「そんなに怒ってるなら膝の上から離れ「嫌!」...るの嫌なのね。質問ばっかりで悪いんだけど、そのステータスはどうやったら見れるの?」
「普通に出ろって感じでイメージするだけだけど...ねえ本当に大丈夫?私のことを心配してくれるのは嬉しいんだけどセーヤの方が重症なのかな?頭でも打ったの?」
「あ、いや大丈夫大丈夫。」
起こっていいたブランだが、あまりの俺の無知ぶりに心配しているようだ。
当然だがこの世界のことを俺は全く知らない。
例え10歳の少女でさえ知っているこの世の常識さえもだ。
「なぁブラン街につくまで色々と教えてくれないか。ホントに小さい子供が知っているような常識でも何でもいいから。」
「うん別にいいけど、ホントに大丈夫?」
「心配してくれてありがとう。もう1回聞くけどホントに俺と一緒に街に「行くよ!」...ありがとう。でも、御覧のとおり一般常識も分かってるか怪しいからブランに迷惑がかかると「大丈夫!」...うん、頼りにしてる。」
「うん!」
元気に返事をしてくれるブランの頭をなでる。
頼ってくれたのが良かったのか、嬉しそうにニコニコと笑うブランはとても可愛かった。
「街に向かう前に俺のステータスでも確認しますかね。やっぱ異世界転移と言えばお決まりのチートステータスでしょ。」
期待に胸を膨らませながら、ステータウインドウがでるようなイメージをする。
ブランが出したものと同じものが現れた。
名 前:セーヤ
年 齢:24歳
種 族:人族
職 業:なし
レベル:5
H P:59/59
M P:15/15
腕 力:32
耐久力:25
魔 力:17
精神力:26
敏捷性:28
スキル:強欲(Lv1)
回復力向上Ⅱ(Lv6)
称 号:異世界からの来訪者、大罪を背負う者、魔物殺し、サバイバル初心者、奴隷の主
「数値は微妙。スキルの『強欲』とか絶対やばいやつだよコレ。それに称号も色々と突っ込みたいんだが。」
「能力の数値はそうでもないけど、『回復力向上Ⅱ』のスキルがあるよ!それもスキルレベルが6も!レベルが5なのにありえないよ!それに称号が5つもある!『魔物殺し』の称号があるっていう事は魔物と戦って勝ったってことでしょ?セーヤって凄いんだね!」
数値が低く落ち込んでいる俺をブランが慰めてくれる。
誰でも何かしらのスキルをもって生まれるらしいが、『回復力向上Ⅱ(レベル6)』なんて普通は持っていないらしい。
その内容は怪我の治りやHPやMPの回復が早いというだけなのだが。
でも、俺が落ち込んでいる原因の一つにはブランのステータスも関係している。
俺のステータスを確認するときに比較としてブランのステータスも見せて貰ったのだ。
さっきは数値まできちんと確認していなかったからな。
名 前:ブラン
年 齢:10歳
種 族:犬人族
職 業:なし
レベル:1
H P:14/35
M P:11/23
腕 力:15
耐久力:21
魔 力:13
精神力: 9
敏捷性:25
スキル:身体能力向上(LV5)
感覚強化(Lv3)
危険察知(Lv3)
称 号:不幸な少女、セーヤの奴隷
ちなみに『身体能力向上』のスキルは発動すると10分間だけ全ての能力数値にレベル×10の数値だけプラス補正がかかるらしい。
犬人族などの獣人族は生まれながらにいてこのスキルを持っているらしい。
『感覚強化』と『危険察知』は俺で言う『回復力向上Ⅱ』のようにブランが生まれながらに持っているスキルのようだ。
でも、これも獣人族には珍しくなく、10人に1人ぐらいで持っているみたいだ。
ブランのいた村にも2、3人はいたみたいだ。
「はぁ~、コレってブランのほうがステータス的には強いよな。なぁ、ブランが俺の奴隷になっているんだけどなんでか分かる?」
「獣人族は人族より身体能力が高いからしょうがないよ。奴隷のことは分かんない。」
「まぁ、分からんことはしょうがない。気を取り直して街に向かおうか。」
「うん!」
『異世界転移で最強無双』どころか10歳の少女にも劣るステータスに落ち込むが、気を取り直して街に向かうことにする。
だがこの後すぐに俺はもっと落ち込むことになるのであった。
想像してほしい。
10歳の少女に一般常識を教わる24歳の男の姿を。
スキルの詳細は作中で説明をすることにします。
スキル『強欲』と称号『大罪を背負う者』がこの物語の主軸にかかわります(多分)。