12 新たなスキル
主人公は巨乳好きでした。
「大丈夫ですか?」
巨乳受付嬢が前かがみになって俺の様子を見る。
激しい頭痛にたまらず机に突っ伏しそうになったからだ。
あの、お姉さん迫力ある谷間が俺の視界いっぱいに広がってますけどいいんですか。
「だ、大丈夫です。旅の疲れでも出たんでしょうか、急に頭痛が。もう治ったので問題ないです。」
「本当ですか?無理をしてはいけませんよ。冒険者になるつもりなら体調には気を付けないとなりませんからね。それでは皆さん、鑑定結果を申し上げてもよろしいでしょうか。」
巨乳受付嬢は早く言いたくてしょうがないようだ。
目の前にいるこの場にいる全員が静かに頷く。
反論がないことを確認すると、大きく深呼吸をしてから勢いよく話し出した。
「聞いててください、ギルド長!!これ凄いんですよ!見たこともない素材で作られています!この服も!ハンカチも!タオルも!!こちらの箱に入ってるのは食べ物、お菓子みたいなんですが高級な砂糖がふんだんに作られています!貴族のお茶会ではなく、王室に出しても問題ないくらいです!!こちらの本と地図はとても古いというくらいしか価値がありませんが、一部の学者には喜ばれそうです。あーでも何といっても、やっぱりこのお菓子!!ギルド長一つだけでいいので食べてもいいですか?いいですよね?我慢できません!!」
俺たちが呆気にとられていると、巨乳受付嬢はお菓子の箱を今にも開けだしそうだ。
それを『ギルド長』と呼ばれた年配の職員が慌てて止めに入る。
「ってか、あの人ギルド長さんだったんだね。」
「そうだな。」
巨乳受付嬢が落ち着くまで待つしかなった。
「コホン。先程は大変失礼いたしました。」
何事もなかったように話を始める。
「で、買い取るとしたら値段はいくらになりそうなんだい?」
「値段ですって!!そんなの私に付けられる訳ないじゃないですか!だからギルド長に無理を言って付いてきて貰ったんじゃないですか。見たことない服と荷物を持った人、奴隷の首輪をしてる犬人族の子供、鑑定でステータスを見たときに分かった『レベル5』なのにスキルや称号が『解析不能』という事。これだけ普通じゃないことがあるのに、その人が売却したいって申し出る見たことないものが、私の手に負える訳ないじゃないですか!!」
「す、すまない、ミラ。だが『鑑定』のスキルレベルでミラ以上の者は今日はいなかったんだよ。」
「そんなこと、分かってますけど...。」
巨乳受付嬢もといミラさんは少し涙ぐんでしまう。
「あの~。ミラさんでしたよね。なんかすいません。良ければ他にもお菓子持ってるんで、差し上げますから泣き止んでください。」
「うん、ありがとう。...!!!!!!これ美味しい!飴玉よね?甘さが段違いだわ!」
「そんなに驚くほどか。俺も貰ってもいいか?」
ブランも欲しそうだったので、ブランとギルド長にも差し出す。
ブランはローランドに着くまでにも何度か食べたがそこまで驚いていなかったと思うが、ギルド長はミラさん同様に凄く驚いているようだった。
「こんなに上品な甘さの飴があるなんて...。コレは君が作ったものなのか?」
「いえ、違います。店でこうにゅ、いえなんでもありません。どこで入手したのかはお教えすることができません。その覚えていませんので。」
「そうか、確か気が付いたらローランドから数日徒歩で離れた村の近くにいたのだったな。一般常識も怪しいほど記憶も曖昧のようだったのだから、覚えていなくても不思議ではないか...。」
「それで、その売却の件なのですが。」
「そうだな、ミラは1つ金貨1枚までの品物であれば鑑定できるのだが、ミラが分からないという事はそれ以上という事になる。明日また来てくれれば、鑑定のスキルがミラより高い職員がいるのだがどうだろうか。」
「分かりました。それならそこにあるお菓子1箱金貨1枚でどうでしょう。その変わりギルドカードの発行手数料はそちら持ちという事で。残りはまた明日売却することにします。」
「いいのか?明日まで待てばもっと高く買い取ることになるかもしれないんだぞ。ギルドカードの発行手数料なんて2人で銀貨たったの6枚だぞ。」
「では、私がこのギルドに来た際はミラさんに対応してもらう事も条件に入れていいでしょうか。」
「私ですか!?」
「はい。可愛い方が対応してくれた方が、依頼も頑張れるってもんですよ。」
ミラさんは顔を赤くしてしまった。
普段、言われ慣れていないような反応だ。
こんなに可愛くて胸が大きいのに、誰もミラさんに言わないのだろうか。
「フフッ、本当に変わってるなお前は。そういえばまだ自己紹介をしていなかったな。俺はローランドのギルド長、ギラルド・ローレンスだ。」
「よろしくお願いします。俺はセーヤです。」
「ブランです!」
俺はギルド長のギラルドさんと握手を交わし、ギルドカード発行の手続きに向かった。
「えー、ではこのギルドカードに血を一滴垂らしてください。」
部屋から受付に戻り、ミラさんの案内に従い発行の手続きを進める。
どうやら、ギルドカードは魔道具らしくカードの上から血を一滴垂らすだけで出来上がるらしい。
そばにあった針で指先を軽く刺し血を垂らす。
ぼんやりと青白く光ったかと思えばカードに文字が現れた。
「セーヤ君は文字の読み書きはできる?」
「いや、俺もブランもできません。」
「そうなんだ、じゃあ私が代筆で書くことになるけど良いかしら。カード借りるわね。」
俺たちは頷きカードを手渡す。
冒険者ギルド用の書類を作成しているようだ。
書類を書き終わったらその上にギルドカードをかざした。
無職だったギルドカードは、血を垂らした時のように青白く光り銅色になった。
「はい。これで作成は終了です。ステータスを見てみて職業が冒険者になっているはずよ。」
俺とブランは言われるがままにステータスを見てみる。
名 前:セーヤ
年 齢:24歳
種 族:人族
職 業:冒険者 ブロンズ
レベル:5
H P:59/59
M P:15/15
腕 力:32
耐久力:25
魔 力:17
精神力:26
敏捷性:28
スキル:強欲(Lv2)
回復力向上Ⅲ(Lv10)
鑑定Ⅲ(Lv10)
隷属契約Ⅲ(Lv10)
称 号:異世界からの来訪者、大罪を背負う者、魔物殺し、サバイバル初心者、奴隷の主、
幼女に愛される者、巨乳好き
「は?」
訳が分からなかった。
レベルも上がってないのにいきなり『回復力向上Ⅱ(Lv6)』が『回復力向上Ⅲ(Lv10)』になっている。
おまけに、『鑑定Ⅲ(Lv10)』『隷属契約Ⅲ(Lv10)』も追加されている。
そして何より『強欲』のスキルレベルもあがったいた。
「どうしたの、職業変わってなかった?」
ミラさんは自分が何か失敗したのかと不安そうだ。
「いえ大丈夫です。質問なんですけど、スキルってどうやったら増えるんですか?」
「そうねぇ、普通は覚えたいスキルの勉強したり修行したりするけど、魔物とかと戦ってレベルか上がると覚えることもあるわね。」
「その覚えるスキルなんですけど、例えば『鑑定』だったら『鑑定Ⅲ』とかをいきなり覚えたりしますか?」
「そんなわけないじゃない。レベルが上がって『鑑定』を覚えても最初はただの『鑑定』。スキルを沢山使っていくうちに『鑑定(Lv10)』になって、その次が『鑑定Ⅱ(Lv1)』。最高は『鑑定Ⅲ(Lv10)』までだから、それまでいく頃にはおじいちゃんになってるわよ。もっとも凄い才能がある人しか『鑑定Ⅲ(Lv10)』なんてならないけどね。」
どう考えても異常だった。
本当に鑑定が使えるのだろうか。
試しにミラさんを鑑定してみる。
名 前:ミラ・ハウゼン
年 齢:25歳
種 族:人族
職 業:冒険者ギルド職員
レベル:12
H P:198/250
M P:211/320
腕 力:157
耐久力:167
魔 力:253
精神力:245
敏捷性:212
スキル:鑑定(LV8)
危険察知(Lv5)
称 号:皆の人気者、巨乳の女性、冒険者に慕われる者、巨乳受付嬢
全部ばっちり確認できた。
(称号の『巨乳の女性』ってなんだよ。)
称号『巨乳の女性』
旨のサイズがEカップ以上の女性が得る称号。
小さいステータスウインドウが出てきた。
(ミラさんってEカップ以上なのかどのくらいなんだ。)
ミラ・ハウゼン
人族の25歳。女性。
身長は162cm、体重は49kg。
スリーサイズは、B89・W58・H87のFカップ。
現在は冒険者ギルド(ローランド支部)の人気受付嬢として働いている。
最近の悩みは冒険者の間で「巨乳受付嬢」といわれだしたと思ったら、ステータスの称号にも表示されてしまったことだ。
なんか見てはいけない情報まで見てしまった気がする。
(これが、鑑定の力なのか。自重しよう...。でも、ホントに使えちまったよ。)
予想外の事に驚きつつもミラさんの個人情報を盗み見てしまったことに罪悪感を感じる。
「ミラさん、すいません。誰にも言いませんから!」
「え?いきなりどうしたの。よく分からないけど怒ってないから大丈夫だよ。」
ミラさんはいきなり謝られて何を言われているのかわからない様子だった。
今後は主人公が色んなスキルを手に入れていくことになります。
ブランは主人公の邪魔をしないように隣で大人しくしてあまり会話に入ろうとしていませんが
構ってほしそうにチラチラ様子を見ていたという設定にしています。
可愛い。
※ 誤字脱字を一部修正(10/16)