10 人族至上主義
サブタイトルからは想像もできませんが
幼女2人と水浴びします。
「ただいまー。」
「「「おかえりなさーい。」」」
ガルネドさんが家につくと一斉に迎えに出て来た。
事前に聞いてたとおり奥さんと娘さんが2人。
奥さんは茶髪で長い髪をしており、身長は160センチくらいの美人だ。
2人の娘はガルネドさんをと同じく金髪だが、目や鼻筋は奥さんを幼くしたような見た目だ。
美人な母親に似て良かったと思う。
別にガルネドさんも不細工ではなく、俺なんかよりイケメンだ。
ホント、羨ましい限りだよ。
石造りの家はお世辞にも広くはないが、周りの家も同じような作りのようなのでこれが一般的な家なんだろう。
「あら、あなたお客さんを連れてくるなんて珍しいのね。」
「それが聞いてくれよテファ。今週の俺は検問の当番だっただろう。もう直ぐ今日の勤務が終わりそうだと思った時にこいつ等が来たんだよ。全く常識がないやつらでさ、おかしな奴だと思ってたんだ。その後、仕事も終わって家路についていたら広場でまたこいつらに会ったんだ。話してみたら今夜の宿も取れないくらい金がないってんだよ。一晩だけ泊めてやりたいんだが、いいかい?」
「『いいかい?』ってここまで連れてきて、今更だめだから帰れって言えるわけないじゃないの。まったく、あなたって人は困ってる人を見ると放っておけないんだから。少しは私のことも考えてよ。」
「でも、テファだってそんなところが良いって言ってくれて結婚してくれたじゃないか。」
「それは、その、そうなんだけど。急に晩御飯の量を増やすことになったって、あなた料理してくれないでしょ?家事って大変なのよ。」
「そのー、ご迷惑なら無理にとは言わないので。」
「あら、迷惑なんてとんでもない。いいのよ一晩なんて言わずに好きなだけ泊まって貰っても。長旅だったんでしょう?裏で水浴びでもして汚れを落として来てね。その間に晩御飯作ってしまうから。」
「あ、はい。ご迷惑おかけしますがお言葉に甘えさせてもらいます。ほらブランもありがとうって。」
「うん!テファさん、ありがと!」
俺達は案内されるがままに裏庭に行った。
だが、そこには水道はおろか井戸すらなかった。
「なあブラン。」
「なーに。」
「水浴びって言ってたけど、水なんてどこにあるんだ?」
「うーん、どこだろう。」
「あ、お兄ちゃん達。タオル持ってきたよ~。」
困っていると、ガルネドさんの下の娘がタオルを持ってきてくれた。
「まだ水浴びしてなかったんだね。お母さん料理得意だから直ぐ晩御飯出来ちゃうよ。」
「うん、タオルありがとう。あ、そういえば自己紹介してなかったよね。俺の名前はセーヤ、こっちはブランよろしくね。」
「アイルの名前はアイル!よろしくね。」
「ねえアイル質問があるんだけいいかな?」
「うん、いいよー!」
「水ってどこにあるの?」
「水?お兄ちゃん達知らないのー?アイルが教えてあげるね。えっとーここにある魔道具に魔力を籠めると水が出るんだよー。ほら!」
アイルが『どうだ!』と言わんばかりに水瓶のような物に魔力を籠めて水を出す。
こっちを見て『すごいでしょ誉めて』と言わんばかりに胸を張っている。
素直に感心したので誉めてやる。
「アイルは凄いね!色々知っていて頼りになるね。」
そう言って頭を軽くなでる。
アイルは満足ように微笑んでいる。
「わ、私だって。魔道具だってわかればそれくらいできるもん。」
対抗しているのかブランも水瓶に魔力を籠めて水を出す。
ランタンの時もそうだったが、この世界の日用品は魔力を籠めて使うのだろう。
(この世界の人間じゃない俺も魔力を籠めることはできるのだろうか。)
そんなことを考えていると、ブランも誉めてほしそうに俺を見ているのに気が付く。
(まだまだ子供だな。)
「さっさと水浴びをすませ戻ろうな。」
ブランの頭を撫でながらそう話しかける。
「うん!」
「アイルも一緒に水浴びするー!」
ブランが俺に返事をすると同時に、アイルが言い出した。
俺が答えるのより早く服を脱ぎだしてしまった。
本人が気にしている様子もないし、ブランも気も少し嬉しそうだ。
年が近い子供同士で水浴びするのが楽しいのかもしれない。
ふと弟や妹が小さいときに友達が家に来て、庭で水遊びしていたことを思い出す。
最初にブランとアイルが出した水が桶に残ていたので、俺はそれとタオルをつかって体を拭くことにした。
2人は互いに水瓶から水を出し、水を掛けあっている。
(俺はチャチャっと済ませて、2人があまり長くならない程度に様子を見ておくか。)
暫くその様子を見守ることにした。
「まだ、水浴びしてるの~。もう晩御飯ができるわよ~。」
裏庭でブランとアイルの髪をタオルを使って変わりばんこに拭いているときテファさんの声が聞こえた。
「「「はーい。」」」
3人同時に返事をして家の中に戻った。
「あら戻ってくるのが遅いと思ったら、アイルも水浴びしていたの?」
「うん!お兄ちゃんに頭拭いてもらっちゃった。お父さんより上手だった。」
「そう、良かったわねアイル。セーヤさんもアイルの面倒見てくれてありがとうね。迷惑じゃなかったかしら。」
「いえ、迷惑だなんて。ブランも楽しそうでしたし、な、ブラン。」
「「うん!」」
ブランとアイルが同時に返事をする。
よっぽど楽しかったのだろうか。
「よし!それじゃあ晩御飯にしようか、席について。」
ガルネドさんの上の娘アリスも加わり6人で食卓を囲み食べ始める。
たわいもない会話をしながらの食事話終わった。
食事中の会話でブランはアリスとも仲良くなっていた。
ブランは姉妹の部屋で一緒に寝ようと誘われていたので、「行っておいで」と俺が言うと楽しそうに話しながら姉妹の部屋に駆けていった。
「さて、子供もいなくなったし、そろそろ事情を話してもらえるのかしら?」
「そうだな。俺はお前のことを悪いやつだとは思っていないが、その身なりといいお前はどこから来たんだ。」
ライサー夫妻の質問に俺は正直に答える事にした。
だが、異世界から来たことは伏せ、異世界転移もの定番の言い訳である「遠い東の小さな島国」から来た事にした。
ブランについても俺が知ってる範囲で状況を話した。
「そう、話は分かったわ。」
「信じて貰えますか?」
「この街ローランドの領主様なんだが、その、言いにくいが『人族至上主義』のお考えなんだ。領主様は街中には滅多に来ないから、奴隷であれば特段人族以外が街に入ることを取り締まったりはしないんだが、人族以外が普通にこの街では暮らしていないんだよ。」
「それを考えると、ブランちゃんの村が襲われたっていうのもあり得るかなって思うわよね。領主様の屋敷に奴隷が運び込まれたって噂も聞いたことがあるわ。」
『人族至上主義』。
その言葉のとおり、人族が色んな種族の中で一番優れているという考え方である。
ガルネドさんがいうには、人族の貴族や王族の大半はこの考え方らしい。
このローランドはそうでもないが、一般市民の中にもその考えを持っている人族は少ないみたいだ。
昔は種族間の交流もなかったためこのような考えになったようだが、この数百年で段々種族間の交流も増えてきているため、その考え方を改める者もいるようだ。
その根幹となっているのは、ある男が冒険者ギルドを800年前に創設したことらしい。
その男は人族だとか魔族だとか獣人族だとか、莫大な資産を持った資産家だとか貧しい奴隷の子供だったとか地方によって様々だ。
当時の記録は不思議なほどにほとんど残っていなく、男の詳細は不明だが『身分や出自、種族によって差別がされる事ない。完全実力主義の組織』を目指して創設したようだ。
ガルネドさんとテファさんも昔は冒険者だったので人族以外の種族の人と旅や狩りをした経験がある。
人族でも才能には優劣があるように、他の種族でも人族の自分より優れている者は沢山いるのだ。
色々あって冒険者の時にテファさんと会い結婚、子供もできたので、現在は安定している兵士に就職したのだという。
この2人は隙あれば惚気てくるし、イチャイチャしだす。
仲がいいのは結構だが少しは勘弁してもらいたい。
差別なんて全く縁のない場所から来た俺としては、何とも胸糞悪い考え方に苛立ちが抑えきれなかった。
差別に縁がない主人公ですが
過去の経験から子供にひどい扱いをするのは許せないのです。
また、子供と接する機会も多かったので面倒見は良い方です。
性格的に子供に好かれるようなのですが、主人公はロリコンではないです。