09 ガルネド・ライサー
街につきました。
しかし主人公は甲斐性なしでした。
「あ、街が見えてきたよ!意外と近かったね。」
街に向かって進むこと半日、もう日が傾いてきた時、壁が見えてきた。
ブランが楽しそうに飛び跳ねながら俺に報告する。
「そうだな、この地図も当てにならないな。」
「早く行こうよ!」
俺たちは少し足早になって入り口を目指すことにした。
「検問があるよ。確か大きな街には入るのにお金を払うって聞いたことがあるんだけど、セーヤはお金ある?」
この世界のお金は紙幣ではなく全て硬貨のようだ。
上から順に白金貨、金貨、銀貨、鉄貨、銅貨の5種類。
硬化同士の価値は
白金貨1枚=金貨100枚
金貨1枚=銀貨100枚
銀貨1枚=鉄貨10枚
鉄貨1枚=銅貨10枚
のようだ。
俺の手持ちは最初によった村で手に入れた鉄貨30枚と銅貨60枚。
相場がいくらか分からないので、足りるかどうかわからない。
とりあえず検問の列に並ぶことにした。
「次の者達!前へ!」
検問にる兵士のような恰好をした人の前に俺たちは進む。
「ずいぶんと汚れているな。何かあったのか。」
「そうなんですよ。遭難してしまって大変だったんです。」
「その割には余裕そうだな。隣の者は奴隷か?全くこんな小さな女の犬人族を奴隷にするとは、お前も変わり者だな。それともそういう趣味なのか?」
「いや、そうではな「うん!可愛いってナデナデしてくれます!」」
ブランが俺の答えをかき消すように嬉しそうに答える。
「そっか嬢ちゃん大事にしてもらってんだな。良かったな。」
「うん!」
「とりあえず身分の確認のためにステータスを見せてくれ。」
俺たちはステータスウインドウを見せる。
「おいおい、ステータスを全部見せるやつがあるか。名前と年齢、職業だけでいいんだよ。」
「そうなんですか。こういうの初めてなので分からなくって。任意の項目だけ見せることもできるんですか?」
「できるに決まってるだろ。おかしな奴だな。」
「しっかし、お前はレベルもステータス低っいな。それにいい年して無職はないだろ。奴隷持ってるのにも関わらず無職とはどういう事なんだか。服も見たことないような格好してるし。ホントどこから来たんだよ。」
「やっぱり低いんですね。普通はどのくらいあるんですか。」
「そうだな、参考までに俺のステータスを見るか。訓練してるから一般人よりは少し高いと思うけどな。」
そう言って兵士の人は自分のステータスを一部だけ見せてくれた。
名 前:ガルネド・ライサー
年 齢:28歳
種 族:人族
職 業:兵士
レベル:19
H P:545/568
M P:215/230
腕 力:185
耐久力:229
魔 力:154
精神力:166
敏捷性:173
確かに俺よりも何倍も高いステータスだ。
「兵士や冒険者じゃない一般人はもう少しレベルが低いけど、それでもお前くらいの年の男なら最低でも10はあるんじゃないか?」
「はぁ~。そうなんですね。ステータス見せてくれてありがとうございます。でも見せちゃってよかったんですか。」
「その程度のステータスの奴に見られてもどうってことないしな。」
「うぐっ!それでも、ありがとうございました。」
「おう!それじゃあ街へ入るには一般人1人銀貨3枚だ。」
マズい金がない!
手持ちの金に銀貨はない。
銀貨1枚=鉄貨10枚だから、鉄貨が30枚では1人しか街に入れない。
「おい、どうしたんだ。まさか銀貨3枚も持ってないのか?日が暮れたら門を閉めるから、さっさとしないと街に入れなくなるぞ。」
「銀貨3枚?6枚じゃなくて?」
「お前1人で銀貨3枚だ。まさか奴隷の分を言ってるのか?奴隷に税がかかるわけないだろう。」
何を当たり前のことを言ってるんだと呆れられてしまった。
どうやら奴隷には税金がかからないのは常識らしい。
俺はガルネドさんに鉄貨30枚を払ってブランと2人で街に入った。
「街には入れてよかったね!」
「そうだな、とりあえず今日はもう遅いから何処か寝られる場所を探さないと。でも、金があと銅貨60枚しかないが足りるかどうか不安だ。」
ひとまず宿屋を探して街をぶらつくことになった。
~~2時間後~~
辺りがすっかり暗くなった頃、俺たちはまだ街をぶらついていた。
理由はただ一つ、銅貨60枚、つまり鉄貨6枚で泊まれる場所が見つからなかったのだ。
どこの宿屋も1人1泊銀貨2枚はかかるのが普通のようだ。
「ゴメンな、ブラン。こんな甲斐性ないやつで。」
「ううん。しょうがないよ、気にしないで。」
街の噴水広場にあったベンチに腰掛けながら、どうしたものか考える。
さすがに街中で野宿をするわけにはいかないだろう。
見回りの兵士もいたようだし、この街にはホームレスのような人がいる様子もない。
野宿なんかしたら、城壁の外に放り出されるかもしれない。
ブランはこんな時でもニコニコと楽しそうにしている。
何が楽しいんだか分からないが、何となく頭を撫ででやる。
ブランは足をパタパタさせて気持ちよさそうに鼻歌を歌いだす。
「気にしてなかったけど、この街って何て名前なんだろうな。ブラン知ってるか。」
「んーん、知らないよ。」
「何だお前たちそんなことも知らないで、何しにこの街に来たんだ。」
俺とブランが座っている後ろから急に声をかけられた。
振り返るとそこには金髪でがっしりとした体格の男性がいた。
声から察するに門にいた兵士のガルネドさんのようだ。
仕事が終わった帰りだろうか、先ほどまで来ていた防具はもう着ていなかったため、一瞬誰か分からなかった。
「こんな所で何してんだ。休むなら宿に入ってさっさと寝た方がいいぞ。」
「いやー、お恥ずかしながらお金がなくて宿も取れなくて困ってたんですよ。」
「宿代も持ってないのに街に入るなんて、お前もう少し計画性をもって行動しろよ。野宿なんかしたら壁の外につまみ出されるぞ。金になりそうなものは何か持ってなかったのか?もしあるなら雑貨屋か冒険者ギルドに行って売れば良かったじゃねーか。」
「あーそんな方法があるんですね。思いもつきませんでしたよ。」
「おいおい、大丈夫か。これまでどうやって生きてきたんだよ。」
「あはは。とにかく行ってみますね、雑貨屋と冒険者ギルドどちっが此処から近いですか?」
「近いのは雑貨屋だが、こんな時間じゃもう店じまいだろうよ。」
「そ、そんな、どうしよう。ガルネドさん他にいい方法はありませんか?」
「うーん、そうだな。...じゃあ俺の家に来るか?母ちゃんがいいっていうか分からないけど。」
「お母さんと一緒に暮らしてるの?」
話にはいっくる機会を窺っていたブランが訪ねる。
「いや、母ちゃんは俺の奥さんのことさ。そういえば嬢ちゃんは10歳だったな。俺にも12歳と8歳の娘がいるんだぞ。」
「えー!!12歳の娘って結婚したのいつですか!ガルネドさん28歳でしたよね!?」
あまりの衝撃発言にたまらず俺が突っ込む。
「えーと娘ができる少し前だから15歳くらいかな。少し早いがそんなに驚くことか?16、17にはたいてい結婚してるだろ。」
「そ、そういうものですか...。」
改めて異世界の常識に驚く。
最近なんて30歳になっても結婚どころか彼女もいない人だって普通にいる時代で、一生、結婚しない人もいるみたいなのに。
「ははーん。もしかしてお前、その年で結婚どころか彼女もいないんだな。まーまー、落ち込むな。いつかいい相手が見つかるって。ハハハハハッ。」
「セーヤには私がいるからいいんだもん!」
「そっか良かったな。あと何年かしたらお前も幸せ者だな。ハハハハハッ。じゃあ付いてきな。ウチに案内するからさ。」
なんだか精神的に傷つけられた気もするが、他に当てもなかったためガルネドさんの厚意に甘えることにした。
しばらくぶりに屋根のあるところで眠ることができそうだ。
銅貨1枚=10円 くらいで考えています。
金貨1枚=10万円、白金貨1枚=1000万円になるかと思います。
厳密ではないので、実際の値段とあっていなくてもご愛敬ということでお願いします。
もしかしたら今後設定を見直すかもしれません。