第零章『青年』
ここは日本。とある県のとある市のとある街。
どちらかというと田舎よりののどかな風景の中、大きな坂の頂上で謎の闇が
うずを巻いていた。その闇がうっすら消えていったと思うと…………
その場に一人の青年が姿を表した。
「ほう…………ここが人間の居る世界なのか……」
そう言いながら何やら新鮮そうにあたりを見渡す。
そして坂をゆっくり下りはじめる。歩いている数人の人間の顔を横目で流しつつ、これからの事を考える。
さて、人間界に来たものの……何をすればいいのかわからない。
特に理由もなしに来たわけだからやることが無い……そう悩みながら歩いていると、
3人の男が青年に向かって向こうから歩いて来ていたのに気がついた。
「よう譲ちゃん。近くにいいカフェがあるんだが……一緒にお茶しねぇか?」
3人の男の内1人が喋りかけてきた。スキンヘッドで腕に複数のタトゥー。
見た目からしてだいぶイカつい。明らかに典型的なヤクザの容姿をしている。
そしてどうやら男達には青年が女の子に見えているらしい。確かに、
一目見ただけでは男と分かりづらいほどのきれいな顔立ちを青年はしている。
青年は『丁度いい暇つぶしができた』と思い、
少し声のトーンを上げて、「そうなんですか~? ぜひそのカフェに行ってみたいです~!」と
おどけてみせた。男達は『こいつ、罠に引っかかったな』と少しニヤついていたが、青年は気にせず続ける。
「その前に、私についてきてもらってもよろしいでしょうか? 皆さんに見て頂きたいものがあるんです」
「俺達は別に構わねぇぜ。んで、どこに行くんだ?」
「うふふ、こちらです……」
そう言って人通りの少ない道に青年は男達を誘導した。
「おい譲ちゃん。ここで見てもらいたいって……もしかして…………」
なぜだか興奮している男達。そんな男達を内心嘲笑いながらも、青年は優しく微笑む。
「見てもらいたいもの……それは…………」
「…………そ、それは……?
______……っ!?」
青年は一瞬で男達の背後に周り、それぞれの首を死なない程度に殴った。
気絶して倒れた1人の男の首筋を指でそっとなぞると、優しくその男の頭を持ち上げ、唇を首筋に合わせる。
そして青年は_________その首筋に歯を突き刺し血を吸い上げ始めた。
見る見るうちに、男から血の気が引いていく。完全に死体と化す前に
その男の体を数メートル遠くに投げ捨て、青年は次々と気絶した男達の血を吸い上げる。
3人の血を吸い終わると、青年は赤い光に身を包んだ。
光が霧のように朧に消えていくとなんと、『青年の姿』は、『少女の姿』へと変わっていた。
そう、この青年は、『体の性転換が可能』という不思議な力を持った『吸血鬼』だったのだ。




