憶測と約束
高月はアリバイがあると供述していた。
刑事の人間は事実確認の為に躍起になって動いているが、
人は、やっていない事に関して、やったと言われると否定する際に、段を踏んで声が大きくなる。
高月には、その兆候が大きく見え、声の反応からしても嘘偽り無く、犯人では無いことが俺の中では確信付けられていた。
けれども、証拠が無い状態で、高月を被疑者ではないと断定することは出来ず、俺の能力はあくまでも助言に程度にしか採用される事はなく、いつも振り出しに戻ることが多い。
高月が犯人じゃない事は、里中さんには伝えたが、警視である手前、アリバイが立証されるまでは被疑者として見ることしかできない。
俺は俺で好きに行動してくれ、と言われた。
そのため、一度頭の中を整理したいと思い、既に帰路に就いている。
だがまあ今日の現場を見ただけで粗方当たるべき人間はわかった。
犯人は医学的知識を持ち、頭がキレる、そして高月と顔見知りか、それ以上の人間であること。
極めつけは、プライドが高く自己啓示欲もかなり高い。
3ヶ月続けて犯行を遂行し、遺体の収納、寸分の狂いも無い打撲痕。
そして、三度目の犯行で無関係な人間の名刺。
私は、優秀なのだ、捕まえられるなら私を捕まえてみろ。
と言った挑戦状の類いであることは間違いなく感じ取れる。
明日、用が済んだら、高月の関係者で医学知識を学んだ人間を当たるのが賢明だな。
あとそうだ、不知火には明日、中村さんとの約束の件を伝えておかなきゃな。
不知火を帰らせる際に、携帯番号を一応、交換しておいた。
母親が殺害と言うかたちでこの世を去ったのであれば、昔馴染みの俺にも何かしらの火の粉は降りかかってくる。
それ以前に、不知火に関しては、娘であり目撃者でもある、何も無いわけがなく、なにか起きてからじゃ遅いのだ。
そんなこんなもしてるうち、事務所兼自宅に着き、俺は不知火に明日の事を伝えるべく、電話をかけた。
『も、もしもし?!律斗さんどうしました?!』
なんで俺からの電話でこんな焦ってるんだ?
「明日、会ってもらいたい人が居るんだが、学校終わりに事務所に寄ってもらっていいか?」
『わかりました!あ、それと荷物多くなるので朝早くから行きますね!忙しいのでそれじゃあ!』
母親そっくりで一方的だな。
朝早くと言っていたが、放課後は忙しかったのだろうか、申し訳ないことをした。
不知火をキャリーケースの件に同行させようと思ってる。
初の現場にしては荷が重いかもしれないが経験は美徳だと聞いたことがある。
それに今回の事件は、なにかが引っ掛かっている、嫌な予感とまでは行かないが、なにかあるはずだ。
一緒に行動して損はない。
そうして、帰宅した俺は、考えを纏めるべく、書斎へと身を移した。
遅くなりました。すみません。
次は早く書き上げます