悪夢
「私を!!弟子にしてくださいッ!!」
事務所のドアを蹴破り、俺の目の前に現れた女は突然、頭のおかしい事を叫んだ……。
..........
ピッピッピピッピピッピピピピー!!!。
頭の上で爆音が鳴り響く。
朝が弱く、こうでもしないとずっと寝てられるから目覚ましを掛けて起きているが、毎日毎日毎日煩すぎて起きるのも嫌になる。
科学は常に進歩しているのだから、鼓膜に優しい目覚ましを作れない物なのだろうか…。
私の耳の為にもどうか作ってくれないだろうか、と心で呟き寝室を後にする。
私は探偵として事務所を構えているが、依頼は会員制にしているから微々たる物だ。会員制にした理由は探偵を何でも屋だと勘違いし依頼してくる輩が増えたから苦肉の策で会員制にした。まあ会員制と言っても合言葉さえ唱えてくれれば請け負う。
故に仕事が少なく、今日とて暇だ。
だからと言って漸く整った生活リズムを崩すような真似もしたくないので、取り敢えず顔を洗い朝食の支度を始めるとしよう。
おっとその前にニュースでもつけようか。
『~を暴走し歩行者2名をトラックで撥ね飛ばし重症を負わせたため業務上過失致死の容疑で現行犯逮捕されました。』
物騒にも程があるな。
鉄の塊が30㌔以上出して人に突っ込んでくるんだ。恐怖でしかない。
そう思うと鳥肌が立つ。
そんな中1つのニュースが耳に止まった。
『昨日の正午頃、土手の方から変な臭いがする、と通行人から通報があり、駆けつけた警察官が確認を取ったところ、キャリーケースには、白骨化した遺体が入っており、警視庁は殺人の容疑で捜査を進めるとのことです。』
朝食の支度が終わりココアを飲み考えに移る。
ここ数ヶ月キャリーケースに死体が~ってよく耳にするが流行ってるのだろうか?
同一犯の可能性もあるだろうが、北から南の沖縄までキャリーケースによる死体遺棄は起きているので、同一犯と睨むのは難しいだろうな。
だがまあ、今回の遺棄は家から遠くないし少し顔を出しとくか。
ピンポーンと呼び鈴が鳴る。
こんな時間から依頼か?
インターホンの前に立ち、話を聞くことにした。
「はい。どちら様で。」
「不知火と申します。少しお時間よろしいですか?」
合言葉を言わないとなると依頼じゃない...?そうなると宗教か??
「何言ったご用件で?」
「母からお世話をした後輩が探偵をしていると聞いて来ました。私を弟子にしてください!!」
は?お世話?母.....?1人だけだが、とてつもなく嫌な顔が頭に浮かんできた。
確かにお世話になったが、殆どがありがた迷惑だ。
寧ろ俺がお世話した位じゃないのか?
「失礼ですが、お母さんの名は?」
「明奈です。不知火明奈です!」
案の徐だ.....力でねじ伏せる馬鹿力女の娘だ...正直関わりたくない。知らないで通そう。
「すみませんがわかりません人違いです。」
「え、そんなはずありません!待ってくださ」ガチャ
知りませんし待ちません。
悪夢でしかないので関わりません!!!
椅子に腰掛けようとしたその時、玄関の方から大きな物音がした。
おいおいおいおいおいおい??!
はあ?!嘘だろ?!!!頼むから夢の中であってくれ…