246話(第2部5話『デスパレート・バトルズ』2)
ふと気づくとドラゴンが瀕死だった「アバババババババーーー!」「ヒャハハハハハーッ!どうだ俺の毒接着剤は!」「ギゲゲゲゲゲゲ呼吸ができない上に毒!」勝ち誇る魔王アディーシブ!
「プーカァァ! とどめを刺せーーーっ!」「ジオオオオオオオオーーーッ」叫びを上げ半獣の魔王がドラゴンに突進! 大口を開き無数の牙で噛み付いた! 「ギャーッ!」牙は竜特有の甲殻を貫き肉を食いちぎった!
「ゾンバゾゾゾバババアバーッ!?」魔王プーカが苦しみだす! 「馬鹿野郎! 毒ごと食う奴があるか! この駄犬が!」この瞬間、ドラゴンの目が鋭く光る!「今だーッ!」接着剤がちぎれ自由になった腕一本で、プーカの足を掴む!「ガガワーッ!?」「ウオーッ!」魔王プーカを投擲!
「グワーーッ?」プーカと衝突しアディーシブが吹っ飛ぶ!「ガッ! はっ! 邪魔だ!」アディーシブは自身の粘液に張り付いたプーカを剥がし、無造作に放る「小癪な真似を! だが無駄な足掻き! 黙って毒と窒息で死……馬鹿なーっ!」アディーシブの眼の前に、ドラゴンの姿が!
「イィィィィィィヤァァァ!」ドラゴンの渾身の右ストレートがアディーシブの顔面を撃ち抜いた!「ウゲーーーーッ!」アディーシブはきりもみ回転して吹き飛ぶ!「舐めるなよカトンボが! オオオーッ!」アディーシブは腕から粘着液を噴射! 液は地面に張り付くと瞬時に凝固! ゴムめいた弾力を利用しアディーシブは高速復帰!
「ウララララ!」更にその勢いのまま空中ドロップキックをドラゴンに叩き込む!「グゥゥゥゥ!!」ドラゴンはその攻撃を真っ向から受け止める!「……捉えたぞ!」ドラゴンは攻撃を受けながらもアディーシブの足をホールド!「それがどうかしたかーッ! 捕縛は俺様の専売特許よォーーーッ!」アディーシブの足から粘液がほとばしる!
「口から火炎ブレス!」ドラゴンの口から炎が吹き出した!「オオオオオオオオッッ!?」アディーシブは反射的に背後に跳ぶ!「……ッ、接着剤が!?」ドラゴンに張り付いた接着剤は熱で剥がれてしまった!「接着剤は! 熱に弱い! わかったか!」「くそっ! さっきもこれで脱出したのか!」アディーシブは憎しみで唸る!
「だ!が! 対策してないと思ったかーーーーッ!」「何!?」アディーシブは大きく息を吸い……全身に力を溜める!「粘着地獄! イィィィィィ!」その全身から、膨大な接着剤の津波が発生! 「うおお!?」ドラゴンを接着剤が飲み込む!全身ドーム状に半透明の接着剤が包み込んだ!
「ハハハハーッ!いかな炎といえど酸化反応に過ぎない!よって密閉状態で火を使えば窒息し、熱もこもって熱いしつまり俺様の価値よ!ハハハハハハ!」アディーシブは閉じ込められた塊を殴る!殴る!
「勝ち誇るのはまだ早いぞ!」「なにっアババーッ!?」背後からアディーシブは殴られた!「馬鹿な!嘘だ!お前は、ここに!」「間一髪で脱皮して逃げたのだ」「なっ」驚愕するアディーシブ!
「とどめだ! オオオーッ!」ドラゴンはアディーシブに右ストレート!左ストレート!右ストレート!左ストレート!「あばっあばっあばっ!」アディーシブは逃げられない!「助け、おい、プーカ!ぼーっとしてねぇで、助けアバーッ!」
「ギンゴガガギゲ!」その声を聞き魔王プーカ、上半身人間で下半身が馬の魔王は変形を始めた……その姿は黒い影のように溶け、そして新たなシルエットを形成する!「何を」ドラゴンは攻撃しながらその姿を注視する
黒い翼……鋭い鉤爪……!!「ギ!ゴ!ギ!ガ!ゲ!」魔王プーカは……巨大なカラスへと変貌した!「いいぞ!この爬虫類野郎を食い殺せーーーーーっ!」
「ゲーッ!」大鴉はその翼を広げ飛翔! 空に舞い上がる! 翼をはためかせ、黒い鳥は遠くへ飛行する………西へ……
そして姿が見えなくなった
「……」「逃げたぞ」「プーカアアアアアアアア!!」
「ドラゴンキック!」「やられたァァァァァァァ!!」魔王アディーシブは吹き飛び、壁に激突し爆死!
「苦しい戦いだった……」ドラゴンは一人立ち尽くす「買い物は……くっべとべとだ……買い直さねば……」その時ドラゴンははっとした「そういえば……これだけの戦いなのに電車マンがここに来ないのはおかしい……まさか!」ピンチの電車マン……
3.
バサバサ……一羽のカラスが男の肩に乗る「どうした?プッカー」「ゲゲゲガゴーグ……」「ほう、アディーシブが……敵もそれなりか」鳥と会話するその者は、黒い軍服を纏う壮年の男だ
「だが問題はない」男は眼下の光景を無表情に眺め、言った「主要目的は果たした」
そこはもともとは宿屋だった場所……屋根も壁も無残に破壊され、地面には一本の電車が突き刺さっている「ガ……」電車は唸り声を上げる……そう、それはただの電車ではなく電車マンだった……負けたのだ
「プーカ、これを持ってろ」黒衣の男は無造作になにかを放り投げた「ゾババガ!」プーカは瞬時に馬に変身し、投げられたものを抱えた「う……」投げられたのは傷つき、魔術的拘束具で固定された謎の少女である
「謎の少女を離せ……」電車マンは男を睨み、手を伸ばす……「だめだ」黒衣の男は光のない目で敗者を見下ろし、電車マンに指を指す……ゾゾゾゾゾ! 男の背後の空間が歪み、重苦しい瘴気がにじみ出る……「……!」電車マンは憎しみに満ちた目でそれを睨む……
無から現れたそれは、それは……戦艦、その大砲である「撃ち方」黒衣の男……魔王アドミラルは無情にその手を振り下ろした「始め」KABOOOOOOOOM!!! けたたましい爆音が空気を押し出す! 一瞬で周囲が土煙に覆われる! 「ギビッ!?」魔王プーカも怯えた表情を見せた
「……なるほど」魔王アドミラルは腕を一振りし、その衝撃波で煙が一気に吹き飛ぶ!「アディーシブを倒した実力、相応のようだな」そこには巨大な穴だけが空いており、電車マンの姿は消えてきた……そして!
「間一髪だったな!」「ドラゴン……! はは、ナイスタイミング……」ドラゴンが電車マンを救い出していた!
「この短時間で追いついたか」「タクシーを使ったのだ」「侮れん知性だ……」軍服の魔王は言葉とは裏腹に遊膳と立っている「噂には聞いていた、あのウィザードを倒したというアホどもの一人の話は……そしてその上で」
「ミッションになんの問題はないと想定している」「!」ドラゴンが身構えたその瞬間! その視界が黒に染まった……魔王アドミラルが迫っていた!「エイ」アドミラルの手刀がドラゴンを切り裂く!「グワ」「ヤア」叫びを上げる間もなく第二撃!鳩尾にパイルバンカーじみた突きが叩き込まれる!「あばッ」「トウ」鳩尾を突かれくの字に体を曲げたドラゴンの頭部に容赦ない打撃!
「撃ち方始め」アドミラルの背後で砲門が開き、大質量カノン砲が発射された!「アバーーーーッ!」KABOOOOOOOOM!砲弾はドラゴンに直撃すると無慈悲な大爆発を起こした!「ヤラレターッ!」ドラゴンは視認できなくなるまで遠くまで吹き飛び、爆散した!
「……」衝撃波で意識を失い、地面に転がっている電車マンをアドミラルは無表情に確認し、踵を返した「帰還するぞ、プーカ」「グル……」魔王プーカは、自身が数分前に怯えた敵を歯牙にもかけないこの魔王に恐怖していた……しかし、その時「グ?」
「ドラ……ゴン……」プーカは微かな声に気づく「電車……マン」その声は、少女の声……「あ……ああ……」
「あああああアアアアアアAAAAAARGHHHHHHHHHHH!!!!」拘束具がはじけ飛ぶ! 絶叫は家屋を、道路を、戦艦を震わせる!
「緊急事態」アドミラルは軍服コートを脱ぎ捨て、目の前で巨大化する少女を……化物に向かい合った「俺自身が破壊できぬ強度の拘束具だったのだがな」アドミラルは目を細め、その傍らではプーカがガクガクと震えていた
「ARRRRRRRRRRRRGHHHHHHHH!!!!」巨大怪獣が襲いかかってきた!