240話(第2部4話『レイド・ア・イントリーグ』3)
「キエーッ!」「ギャーッ!」
巨大料亭内、戦闘中! 魔王タッツェルブルムの猛攻にダルスは苦戦していた!
「くっ魔法コマンド:メタルクラッシャー!」
ダルスの魔法! その手の先の空間に巨大鉄球が出現し、タッツェルブルムに向け発射される!
「悪手を!」
ギギギギギ! タッツェルブルムは瞬間、横に身を反らし、鉄の爪で鉄球の方向を逸らす! 散る火花!
「今だぜ!」
「チィッ!」
巨大鉄球の背後からダルスが進み出る! 死角だ!
鉄球に注意を引きつけた二重攻撃だ!
「この距離なら!」
ダルスは敵の顔面を掴む!
「魔法コマンド:ボンバー!」
kabooooom!! 至近距離爆破!
「グオーーーッ!」
タッツェルブルムの叫び!
「どうだぜ……あっまだ立ってる!」
そう、爆煙が晴れると……魔王タッツェルブルムは焼き焦げながらも倒れず、そしてダルスを睨んでいるではないか!
「ハァァァ……意外に、やる! だがその程度、凡百の魔術師と変わらん! 俺には勝てん!」
「くっ今の俺ではきついぜ……! 魔力も切れそうだし……ここは一旦ひくぜ」
ダルスは素早く踵を返し、後方に駆けた!
「逃がすものかよ! 否、逃げ場所などはじめからあるまいて!」
タッツェルブルムは砲弾めいた速度で追う! しかしダルスも負けてはいない……彼もまた半魔王で半神の異形なのだ!
そして彼らの走る先には、もう一つの戦闘が起きている!
「アア……ハ、ハハ、見てくださいよ、ヒヒ……これ、すごいでしょう、良いでしょう? あなたも嬉しいんでしょう?」
「あ、ああ……」
恐怖するククロメイデス!
魔王コンシートはガス状に分裂し……無数の黒い虫となったのだ! そして、黒い昆虫――その一つ一つに人間の顔がある――は、佐藤に集る蟻めいてククに襲いかかっていた!
「うわあああ!」
ブゥン!ブゥン! ククは光の剣を出たら目に振り回した!
「ぐう、う、アア、ハハハ」
虫は切られ、散りながらも数は減らず、笑う!
「なぜ死なない!」
「む、虫、群体……一匹や二万匹殺されたところで、ハ、ヒヒ、問題ない、から……!」
「くそ! くそ!」
光の刃で何割かの虫を殺しても、少しずつククの体にダメージを与える!
一撃必殺の神器とはいえ、数の暴力には相性が悪いのだ!
「う、うぐ、あ! まず、い」
「し、死ぬよ、ヒヒ、もうすぐ……喰われて、虫の体になって、死アバーッ!?」
突如虫の群れが吹き飛んだ!
「え!?」
「あ、クク! ちょっとお願い!」
ダルスだ! 昆虫の群れに逃げる勢いのままキック攻撃をかましたのだ!
「させるものか!」
「うおっと!」
魔王タッツェルブルムの斬撃をかがんで回避! そしてダルスは虫を散らしながらククの元に一気に駆けた!
「クク! 光の剣でうしろのやつと戦って! たぶんそっちの方が早い!」
「わ、わからないけどわかった!」
ククは利口であり、瞬時に状況判断した!
「なめるなよ、人間!」
タッツェルブルムは怒りに目を燃やす! 焼き焦げた身を顧みず、全力でククに飛びかかる!
「! 速い!」
ククは緊急回避するが、敵のスピードに驚いた!
「避けるなぁぁ!」
怒りの咆哮! タッツェルブルムはさらにスピードを上げ、ククに切り裂き攻撃!
斬撃からの衝撃波は、直撃を避けてもククの身を切り裂いた!
「ちょこまかと! ネズミが!」
「これは確かに、強い! 前の神主とは段違いに、だけど!」
ククは必死に避けつつも、理解する! 自分自身の速さと、一撃必殺の勝機を!
「ひ、フフハ……何を、するんだい……? 痛い痛い怖い怖い、あなたは悪い子……」
ゾゾゾゾゾ! 黒い虫の群れは再び人形のシルエットを形成し、魔王コンシートが姿を表した
「こわい!」
ダルスは怖がった
「でもお前の相手は俺だぜ!」
「邪魔をする、アアア……うまくいかないね、ナンデ? だから、苦しんで、殺しましょう、食べましょう」
「ちょうこわい」
ダルスは怖がった
黒い爆発! 魔王コンシートは漆黒の大群へと姿を変えたのだ!
「ヒヒ、アアア、ハハハハ………僕達私達が、死ねぇぇぇ……」
「こっちも強そうだぜ! どうしよう!」
虫の大群が迫る!
「こうしよう! 魔法コマンド:パンデミック!」
灰色の魔法陣が宙に描かれ、そこから極彩色の液体が噴出した!
「アアーッ!?」毒液に接触した昆虫は悲鳴を上げ地面に落ち、痙攣し消滅する!
「しかし、ヒヒヒ、あなた馬鹿、です……ぼ、たくさんいる虫が私で、だから死なな……え?」
虫達は連鎖的に死んでいく! 空中を埋める黒い奔流は、かき消されるように消えていく!
「ナ、な、なんで……みんな、俺、まとめて……」
「パンデミックは病気にする魔法だぜ! たくさんいるし、同じ種類だからどんどん感染していくという算段だぜ!」
「そ、そういうことだったとは……」
霧が晴れるように、魔王コンシートの群れが消え去り、その声も微弱になっていった
「こんなところで……ヒ、アア、死ぬわけか……面白くないね……」
そして魔王コンシートは完全に消滅した
「楽勝だぜ! でも魔力なくなっちゃった……」
ダルスはいまだ続く戦況と、仁王立ちしてこちらを睨みつけるリョウ暴力カーディナルを見た
「どうしようかなぁ……」
どうする……