234話(第2部3話『フリークス・レイジ』2)
そして翌朝……
「さあ、出ろ!」
「ウワーッ!」
暗黒商人テイマーが叫び、武装トラックの荷台が滑り台めいて傾き中の亜人やモンスターがゴロゴロと排出された!
「グワーッ!」「オオーッ!」
ドラゴンと電車マンも転がり落ちる!
ボロ布を来た少女も無抵抗に地に伏した
その部屋は監獄のような、灰色の壁に囲まれたドーム空間であった
吊るされたフックや、用途不明の工業機械が規則正しく設置され、なんらかのケミカル臭が漂っていた
ドラゴンたちは鉄格子で仕切られた部屋に叩きつけられた
「ハハハ! 家畜どもめ……ハッ! あなたは!」
看守スタッフは無残な捕虜を見て笑うが、予想外に驚いた
「ルイ食料カーディナル様……! おいでになっておりましたか! これは失礼を!」
そこには、一辺2メートルの立方体めいた巨体の男!
「フォフォフォ! 気にするでない!」
でっぷり太った男……ルイ食料カーディナルは、じっとりとした目線を捕虜たちに向ける
「今回も期待以上の成果である! でかしたぞ!」
「ははーありがたき幸せ!」
「チッ茶番を!」
「……まさかカーディナルとは……期せずして目的に近づいたか」
ドラゴンは冷静に敵を見据える
「しかしカーディナルは私達を集め、何をするつもりだ……?」
「んんー……やはり亜人は良いのう! 至高の食材だ! それでは、早速だが選別に移るとするかな」
「ハッ! かしこまりました……おらぁ! 家畜ども! 立って並べぃ!」
看守が叫び、スイッチを押すと拘束リングから電流!
「ギャギャギャギャーッ!」
「畜生! 逃げられねぇのか!?」
強制的に拘束リングに刻まれた番号順に並ばされた電車マンが悪態をついた
「ぐ……、なんとかこの卑劣な輪っかさえ外せれば……!」
ドラゴンも苦しい表情だ
「どうでしょうルイ様、貴方様の審美眼にかなうモノはございますでしょうか?」
「うーむ……とりあえず……腹が減ったな」
「は……いつものでございますね」
看守とカーディナルはにやりと笑った……
「17番」
ルイが言った
「何!」
17番の拘束リングがつけられた囚人……亜人……竜めいたモンスターが驚いた
「何をするってんだよ!」
「フォフォフォ! 生きの良い、新鮮だの!」
「それでは……! 解放ボタンポチっと」
看守が装置を押すと、17番の竜人が消え、リングがカランと落ちた!
「なっ瞬間移動か!」
竜人がカーディナルの前にワープしたのだ!
「ヒャハハハ! てめえアホめえ! 俺を自由にしたことを後悔しやがれ! この魔王ワイアーム様への侮辱、100倍にして返してやる! 死ねーッ!」
魔王ワイアームはすかさずカーディナルに攻撃を行う……巨大な爪を振りかざした!
しかし!
「な……!」
その腕は振り下ろされることはなく……肉が弾け、地面に落ちた
「ぐ、グオオオーーーッ!?」
「良い仕事だ、ドラゴンスレイヤーさん」
カーディナルは脂肪を蓄えて顔を歪ませ、不快な笑みを作った
「……」
それは、突如現れた重装甲を纏うシルエット……明らかに常人ではない!
「フォフォフォ、さすがは魔王! ハンムラビに高い金を出した対費用効果はばっちりであるな!」
「……」
その男……魔王ドラゴンスレイヤーは、石像じみて無言である
「魔王だと!」
「ここにも魔王がいたか……! ドラゴンスレイヤーとはな」
鉄格子の影から、ドラゴンと電車マンは焦燥を浮かべ、その惨劇を見守るしかなかった
「では食事としようか……フォフォフォ、役得!」
「食……事だと……! 貴様……! 人間の分際で……この魔王に……!」
魔王ワイアームは憎しみの目をカーディナルに向け、そして魔王ドラゴンスレイヤーを睨んだ
「貴様! 貴様も魔王なのでは無いのか! なぜ人間に味方をグワーッ!」
鮮血! 魔王ワイアームに刃!
「私は魔王ブッチャーです」
部屋の奥からさらなる魔王が現れ、ワイアームを切り刻んだのだ……!
「調理!」
「うわーっ! ぎゃーっ! アババババーッ!?」
魔王ブッチャー、黒いコック服を着た魔王はルーチンワークじみて哀れな竜人を切り刻む!
「お、俺は、ギャーッ! せっかくウィザードから、逃げ延びバババアバー! た、助けゴボボボボーッ!」
「フォフォフォフォフォフォ! 実演調理は楽しいの! 見事な職人技じゃ!」
「さようで」
そして魔王ワイアームは完全に調理され……魔王のステーキになってしまった……
「オマチドウ!」
ブッチャーは料理をルイ食料カーディナルに差し出した!
「いただきます!」
ルイ食料カーディナルは料理を吸った!
「ごちそうさま!」
食事が終わった!
「では満足したので、あとは適当にしといてくれ」
「は!」
ルイは看守に淡々と命令をする
「割当は培養用食材が6割、美食家の方へのギフトで3割、のこりで強そうなのはリョウ暴力カーディナルに送っておいてくれ」
「了解いたしました!」
「いかれてやがる……!」
「あの者、成敗せねばならん!」
「くっ今に見てろよ……!」
食事の恐怖……